040 甘いものは大抵の人は嫌いじゃないけど…
今回は異世界物でよくありがちな内政ものの話の続きですけど、負の側面(?)も描かれますのでお気を付けください。
今後も面白ければ暇が出来た時でよいので、ブックマーク登録や感想にポイント付与の方もよろしくお願いします。
○2023年4月18日夜 日本国 鹿児島県南部 海士臣島 ループ橋付近集落 カールソン家宅○
「…いや、まーさー…まさかこうして集めた子達でさー…文明復興開始後での歴史上初の戦争が始まるなんて…その時はまだ思ってなかったけど…」
「…え!?」
神皇とか初代皇帝時代とか今では呼ばれているすごく前の前世の頃の自分とそれを取り囲む屈託ない様子の子供たちを見てのミカエルのその言葉に、共に和やかな感じに戻りつつあったダニエルはギョッとした。
「ちょっと待って、何か見た感じでは上手くいってそうに見えるけど…?」
「あー、母さん、その説明をするためにもー、こうして保護して育てた子供たちの中である重要な人物の子がいるからその子を教えるね」
ミカエルが己の両眼より壁に光を当てて映し出しているその映像を操作すると、次に映し出されたのは金髪に青い瞳をした美しい幼女だった。
「この子は何だ?」
「この子は当時ケツァエルと言ってー、どうやら白人系ネフィリムの一人だったらしいけど時空間異常現象の煽りで元々住んでいた星から一人だけ流されてきた子なんだよ」
「質問、ネフィリムとはどういう種族だ?」
「あー、ネフィリムというのはー…」
そのケツァエルという美しい少女とその出身種族について問われたので、ミカエルは一旦動画を止めてその説明に入った。
ネフィリムとは神訂暦世界銀河が誕生した時のショックで、融合する以前の地球時代の唯一神教で信仰されていた神に仕えていた天使たちが、受肉して肉体を得たおかげで元々いた霊的な世界には会話などは出来ても物理的に帰ることがほぼが出来なくなり、仕方なく現実世界側に定住する道を選んだ者達の子孫である種族らしい。
その出自のために背中から生えている概ね白い翼が特徴的で、個体にもよるが人間よりも高い身体能力に魔術能力、特に総合的な飛翔能力は神訂暦世界に住まう種族ではトップクラスで、人間と違って一部条件を除けば寿命がなくて成人前後以降の老化もないので、文明が未熟であった惑星などでは神様として崇拝されるということも珍しくはなかったという。
「…それでーこのケツァエルって子がねー本当にハイスペックな良い子でさー。サトウキビや米といった現地の気候に応じて僕が宇宙船に積まれてたものの中から選んだ作物だけじゃなくってー、現地の植物からも吟味していってうまく組み合わせる輪作なども考えていってくれたんだー。そうした作物を上手く育てるための魔術式やそれを生かした道具なども上手く開発してくれたんだよねー。何せこの道具とかで用いている魔術式が今でも向こうでは動力機の大半を占める魔力変換炉や、魔力をため込んで好きな時に使えるようになる貯魔缶とかで、改良を重ねながらも使われているし」
そうした種族の説明を終えて、ミカエルがケツァエルの説明を再開すると動画もそうなって彼女の活躍を写していく。
『皆ー! 機織りや石臼も順調に動いてるー!?』
『大丈夫だー! ケツァエルが考え出してくれた風力式や水力式の魔力変換炉で魔力はたくさんあるからー!』
そこでは現在で言う風車や水車が発光するする魔術式文様に包まれた状態で稼働している姿と、それを背景に朗らかな顔で周りに明るい大声をかけて周囲から気勢よく返事を返されている10代前半くらいのケツァエルの姿があり、それからでもカールソン夫妻から彼女は周囲から慕われて且つ頼れるリーダーなのが理解できた。
「…あれ? 何か周囲の悦んでいる子達の中で…一人だけ少し暗そうな顔をしている子が…?」
だが、その動画の中でマリアが気づいたその黒髪で端正な顔立ちだが何処か陰のある様子を見せているある少年の存在に気付く。
「…あー、この子はケツァエルを保護した次の年に保護したテスカって少年なんだ。近くの村で生贄の儀式として拘束され、生きたまま黒曜石のナイフで胸部を切り裂かれて、心臓を抉りだされそうになったところを、近場の村人たちを説得するも通じなかったからボコボコにして救出して…」
「説明だけで充分にあれだから動画付きにまでするのは止めろー!!」
その少年テスカに対するミカエルの説明に応じて、動画がテスカの身がメキシコあたりの世界遺産にありそうな石製の儀式用祭壇に縛り付けられ、その胸へ黒曜石のナイフの刃先が触れようとした瞬間にダニエルが画面上に飛び出して阻止したが、その背後には人こそ見えないが血が勢いよく迸って祭壇とその周辺の石畳を赤く染めていくかなり過激な場面が見えた。
「でもケツァエルさんと共に一緒にいるって点からして、このテスカ君って助かったんだろうけど…どうやって助かったの? 宇宙船の中にあるすごい科学技術や魔法に基づく医学で直したの?」
「いや、まだ霊体…要するに魂は肉体と切り離されてなかったけど、もう傷からして宇宙船の中にある医療機器や魔法では助かりそうになかったから…」
その場面をマリアの少し顰めた表情にも押されてミカエルが早めると、次に宇宙船内部の無機質的だが白く清潔な部屋と、そこの手術台に置かれたテスカ、それに難しそうな顔で医療機器や魔術を用いて治療を試みる、髪色や体格は違うが顔つきなどは今と似ている当時のミカエルの姿が写し出された。
『くそ! 人工心臓細胞を移植してもここで即席複製したものじゃ治せないか! だったら…』
だが、当時の使える医療技術でも無理そうだと判断したミカエルが次にとった手段は、あろうことかその瀕死のテスカ少年の上で自身の手首をもう片方の手を変化させて作り出した短剣で切り裂き、その迸る血を振りかける事だった。
「うわ!? どういうつもりなんだミカエル?」
「お父さん? 僕の今の出身種族とその蔑称は忘れてないでしょ」
「それって、たしかー自称は星守りだけど、その生態や特徴で長らく呼ばれていた名の大半は吸血鬼…あ」
『…ガアアアアアアアァアア!!』
その急すぎて公開阻止出来なかったスプラッターな光景にダニエルが声を荒げるが、そこでミカエルにジト目を向けられて今の彼の素性にも触れられると思い出し、その直後に胸の傷が急速にふさがっていくも狂ったような声を上げるテスカの姿が映し出された。
「…この子テスカが、こうして当時の僕が意図的に始めて生み出した…真祖以外の星守りになったんだ…」
そうして声音が落ち込んで複雑そうな表情になったミカエルが次に映像を進ませると、星守りになったばかりの俗に言われる吸血鬼そのままな狂ってそうに見えて金切り声を上げ続ける状態で牢に繋がれているテスカの姿があった。
『…ァアアアア! ァアアアア!!』
「当時は僕も初めて同胞を生み出したばかりで知らないことが多くてさー。テスカはこうしてからはしばらくはこのままで危なかったから、怖がる他の子達が怪我しないように拘束するしかなかったんだ。ケツァエルが気づいて彼をどうにか平静な状態に戻すまではね」
『この子、喉が凄く乾いている様子だわ…。でも…水や果物をどれだけ与えてもこのままだしどうしたら…あ…つう…』
その周囲の大半が恐れや警戒を抱く中でも、ケツァエルは深い情と思索を覚えさせる表情でテスカの前にて彼の空腹と喉を少しでも癒そうと、果物の皮を石製ナイフでそぎ落としていた所だったが、そこで彼女は手元を狂わせて指を傷つけて血を滴らせてしまったことが変化の始まりとなった。
『ギ…!? ギ…ギ…チュ…チュルルルル…』
それを見たテスカは戸惑うようにおとなしくなり、ケツァルが零した彼女の血を指で掬い取って舐め始め、それに比例して急速に大人しくなり始めた。
『! あ、今の君が必要なのはこれだったんだ…。じゃあ。とりあえず…落ち着きそうになるまでこれを飲んでみる…?』
『キ! キウウゥウルルルルゥゥゥゥ…』
代わりに血の味が濃しくなり始めたようになったテスカを見て、ケツァルがその傷ついて指がしたたり落ちている傷を近づけると、テスカはまるで母牛の乳房に吸い付いて父を飲む子牛のように吸い付いて、凶暴そうな声の代わりに血を静かにだが深く飲み始めていく音が鳴っていく。
『…ああ、ようやく…のどの渇きが…あ、あんたは…?』
しばらく血を舐め続けた後、それから指先の傷より唇を離したテスカの口からまともな人間の言葉が発された。
「…この時も僕もまた自分の体や種族についてはわからないことが多くてさー。僕たち真祖と違ってそれから血を分け与えられてなった他の星守りの生態については知らないことが多くて、このテスカが村に来てから色々と調べて分かるようになってきたんだ…」
そのテスカの説明も交えて、ミカエルは彼が加わって以降の集落の発展や変化についても語っていった。
星守りとなってからのテスカの活躍はよく、農業用施設の拡充に改良、農作物の改良など力仕事や頭脳作業のどちらでも活躍しているのが映像に映し出されていた。
「あ、見て貴方ー、昔にアルバイトで働いたことのある海士臣市立博物館にあった砂糖車がこんな何千年も前のあなたがいたっていう時代にもあったのねー」
「おおー、サツマイモやナスみたいにこっちでもよく見かける野菜も多いが…やっぱり一番目立つのがサトウキビ畑だなー。特にサトウキビ畑で働くケツァエルさんとテスカ君ってなかなかに良い感じじゃないかー」
「…あーうん、だからこそ…このケツァエルとテスカ…そしてこのサトウキビ畑の三つが…この神訂暦開始後で歴史上初の戦争に繋がったんだよね…」
「「え…!?」」
その道具や畑で目まぐるしい変化が起こる数年の月日をまとめた田園風景と、その中で仲良くなってい徐々に相手へ向ける視線や顔色に友人へ向けるもの以上の何かを感じさせていくケツァエルとテスカに、カールソン夫妻は朗らかな様子を見せるがそれはミカエルが重そうな表情で言い放ったその内容で不穏な色が浮かぶ。
「…この二人が進めてくれたサトウキビ畑や砂糖づくりでねぇ、集落は大きく発展していったんだ…。それで周辺からの集落の移住者や交易なども増えていったんだ。だが、それが災いの元にもなって、集落の子供達…特にケツァエルとテスカを悲劇が襲ったんだ」
「…! まさか…その富を巡って…向こう側の世界で初めての戦争を他から仕掛けられて二人が…!?」
「いやいや、まだそこまではいかないから…それに憶えている限りだけど二人はそんな悲惨な最期をしてないよ…」
「何か微妙に不安を却って煽るフレーズが混じってるけどそれじゃあどうなったの?」
「いやねえ、儲けにもなるし何よりも皆が地球で言うメキシコ辺りの人々なのもあってか、すごい甘党な人が多くてサトウキビ栽培をたくさんやったんだ…。だけど、その結果…村の子供たち、とくにケツァエルとテスカを酷い悲劇が襲ったんだ…」
「「……………」」
ミカエルが壁に映し出されたサトウキビ畑やそこで働く子供に青少年少女達の動画を中心に早送りを始めると、カールソン夫妻は固唾を飲んだ表情でその答えを見ようとする。
そして、ミカエルがその悲劇の時の映像を見ると、カールソン夫妻は自分たちの予想していた悲劇的な予想の斜め上を行く光景を目にしてしまう。
「砂糖をたくさん用いた料理をたくさん食べ続けたことで、村の子供たち、とくにこの二人がひっどい虫歯になってしまったんだ」
そこには泣きながら辛そうな表情で口を大開して見せる子供たち、とくにその最前列にてほとんどすべての葉が黒くなってしまって涙目の苦笑いを浮かべるケツァエルとテスカの二人の姿が映し出されていた。
「まあ、子供ならではの光景よねぇ」
「…すまん、思っていたのよりもましなんだろうがこれがどうして向こうの世界史上初の戦争にどうつながるのかよくわからん…」
それにマリアは憂いを帯びていた表情から少し困った風にしつつも穏やかな苦笑へ変わったのに対し、ダニエルは微妙且つ理解が追い付かない表情を浮かべるほかなかった。
今回もしまらないギャグで終わってしまって申し訳ありません…。
ちなみに、作中に登場した砂糖車がどのようなものか知りたい方は、ネットで“Wikipedia 砂糖車”で検索すればわかりますので調べてみてください。後々にこれが今現在している内政チート(?)話で大きな存在になる予定ですので。




