039 内政チートは転生系の醍醐味の一つだけど…
今回は、主人公世界におけるこうした異世界転生系ラノベでの醍醐味の一つが中心になります。
○2023年4月18日夜 日本国 鹿児島県南部 海士臣島 ループ橋付近集落 カールソン家宅○
「…いやあ、学業再開して早々と酷いことが起きたなぁ…。まあ、今回のはまだましな方だったけど…」
「ミカエル、お前さんの今の学校ではあんな出来の悪いファンタジー系RPGみたいなイベントがしょっちゅう起きてるのか?」
異常巨大化サトウキビ怪獣キビランテとの激闘やその後始末を終えた日の夜、ミハイルは髪の色を金色にしてミカエル・カールソンとして地球での我が家に戻り、遅めの夕食を父からの突っ込みを挟みながら口にしていた。
今晩はミカエルの異世界での立ち位置ミハイルとしての養父であるルルイエ・クトゥルーは仕事で家を留守にしていたので、こちらに戻ってきたのである。
「いやー、まさか私達もよく使ってる黒砂糖の原料であるサトウキビでそんなことが起こるなんてねぇ…、ほら、お口直しよ」
話を聞いて驚きつつもいつも通りなのんびりとした調子を崩さないマリアはさらに乗せた状態で、おかしの一種であるふなやきを卓上に出した。
ふなやきはここ海士臣島に古くから伝わる伝統的なお菓子の一種で、餅粉や粉末状にした黒砂糖などの材料を用いてクレープ状にして焼いたものを巻いて食べるお菓子だ。
「…あー、おいしー…あ、そういえばさー…初代皇帝時代とか神皇期と呼ばれてた時期…向こうの異世界銀河系での文明復興時代でー、復活させた作物の一種であるサトウキビから製造した黒砂糖を用いたお菓子で最初のものがこのふなやきみたいな感じだったなー」
「そういえばミカエル、お前は向こうでの文明復興とかいかにもラノベでの内政チートみたいなことをしてたから、今では一応秘密だけど超が付くすごいお偉いさんだよな。何かその始まりになったその時代で面白い話とかないか?」
そのふなやきを美味しそうにほおばりつつも、カールソン家は神訂暦世界銀河系と繋がる前にはよくあった、カールソン父子を中心とする異世界系ネタ話タイムに入った。
「…あー、そうだねー。お父さんも向こうでは人気のある売れっ子作家だしね。近頃はその夢だと思ってた頃のネタ話はしてなかったから…。じゃーこれからは映像付きで話そうか」
「ん? 映像? 悪いけど私たちの所にはお前がミハイルとしている世界での魔術式のテレビやプレイヤーみたいなものはー…!?」
だが、異世界開通前にはなかった要素として、ミカエルは己が両眼からあろうことか光を放ってそれを家の中の壁に当て、それでテレビ画面のように映像を映し出した。
「大丈夫、昔に習った光系情報魔法の一種でこのように記憶をもとにして映像を映し出せるようになってるから。そこまで難しい魔術じゃないし」
「お前の感じはともかくこっちから見たら本当に何でもありにあったな息子よ!?」
(今では元から人間じゃないけど)現在進行形で人間離れしていく様子を見せるミカエルに突っ込みつつ、ダニエルはすぐに気を取り直して昔のような感じで、彼の初代皇帝時代における内政チートパートの一部を視聴し始めた。
「…当時の僕はさー、向こう側の祖国の今での首都になってるー…地球で言うところのメキシコ中央辺りの星域の友人惑星の一つに、分け与えられた宇宙船の一隻で降り立ったんだ。当時の僕ら真祖が本格的に活動を再開したのはー、複数の世界が融合したショックで大勢府とが死んで文明が破壊された状態でー、どの種族もあちこちの星へばらばらに引き裂かれてたからほとんどが原始時代みたいな生活を送っていた頃だったんだ…」
「あー、ここまで昔にさかのぼる感じの話はラノベにもそうそうないな…」
ミハイルが写し出した空中魔法画面上には、日本の縄文時代で言う竪穴式住居や洞窟などを住処にしている、赤道辺りで暮らしていそうな半裸の先住民達の姿があった。
「そこで、その星に降り立ったお前さんはこの人たちに文明とかを教えていったのか?」
「まー、それで間違いないんだけどいきなりねーこうした言葉がまだ十分に通じない人達に直接教えに行くってのは気が引けちゃったんだよねー。実際、そうなる前の最初に交易人とかを装って挨拶も兼ねて尋ねに行ったときはこんな感じに襲われちゃったし」
『『『『『キエエエエエエエエエエエエエ!!!!』』』』』
「わ、昔に見たことのあるカニバリズム原住民が登場する映画みたい」
マリアがのほほんとした調子で見ているその画面上に、石製の矢じりや穂先を持ちた弓矢や槍を振りかざして木製の盾を構える原住民たちが襲い掛かる大群が映し出された。
「まあ、さすがに驚いたけど戦闘力とかはこっちが全然上だったから死人こそ出さなかったけどすぐボコボコにしたけど」
「知ってた」
だが、ミカエルが画面を数秒進ませると顔が真っ赤な瘤や青痣だらけになった原住民たちが膝をついて土下座する光景が映り、今の息子の人外な強さとそれ以上に昔は強かったことを教えられていたダニエルはこの場面では驚かなかった。
「でもねえ、こればっかしてたらいつまでも当時の周りの人達に生活で役立つ道具の作り方や知恵を教えられないでしょう?」
「そうだよねえ、魔術念話で直に脳内会話をして教えたり、魔術を手品代わりに見せて権威を見せて従わせるという方法があったけど…それだとさー現地の人達の自主性とかを養えなくなる可能性もあるし…」
「やっぱり、よくある異世界開発系ラノベみたいに役立つ道具や農作物を紹介して、その作り方や育て方を少しずつ教えたりしたのか?」
「まあ、概ねそれなんだけどね。どうやって当時の人々に教えるかって問題が出てきちゃったからさー。中には教えに行っても現地の権力者や宗教関係者とかが嫌って邪魔したり、追い払ったりしてきたこともあったから…」
当時での文明復興作業の難しさを肩えるミカエルに反応して、画面が当時の彼からの贈り物を無造作に捨てたり払いのけたりする権力者達の姿から、やがて彼が乗っていたという宇宙船内部の大きな部屋を改造した子供部屋らしき光景に切り替わり、そこでまだ物心がついてない赤ん坊たちの姿と、当時の彼が現地の泥や植物などを用いて作成した育児用魔術人形がその子達を大切に世話している場面が映し出された。
「ああ、まずは偏見や先入観がない子供達から誘って色々と役立つ知識を教えに行ったのね」
「うん、主にまだ物心がついてない状態のうちに、元々いたところからこっそり連れ去ってきたりしてね」
「それは誘拐だろうがー!!」
そのSFファンタジー風味が混じる穏やかな育児場面にマリアは朗らかな微笑みを見せるが、そこでミカエルがその映し出された子供たちを集めてきた方法をしれっと明かすとダニエルが当然突っ込んだ。
「い、いやー便宜上誘拐って言葉を使ったけどさー。この時代って不衛生で疫病がはやりやすくてねー。自分たちでは治せないってわかったら広がるのが怖かったり、生贄としてささげたり、他にも食糧不足の時は食べることしかできない子供を捨てるとかが結構あったんだよ。今こうしてこの画面に映っているように当時の僕が集めた子供たちはそうされてきたところを保護して宇宙船内で育てていた子供たちなんだ」
「そ、そうか…驚かせるような言い方をしないでくれまったく…」
苦笑いで仰け反ったミカエルだが、当時の貧困や医療状況も絡めて画面上に映し出されている子供達の集まった理由を説明してダニエルを幾分か落ち着かせた。
「…いや、まーさー…まさかこうして集めた子達でさー…文明復興開始後での歴史上初の戦争が始まるなんて…その時はまだ思ってなかったけど…」
「…え!?」
だが、そのダニエルの安堵はすぐに息子が続けたそのまた苦笑いを添えたその言葉によって、不安の色へ塗り替え直された。
次回は、主人公が大昔にやった異世界転生系内政チートで起きた悲劇(?)の一つが明かされる予定です。




