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登校途中に繋がった異世界からやんごとなき方として戻ってきてしまった話  作者: kaioosima
第三章 学校に戻っても良い意味で戻れるとは限らない
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028 異文化交流は違和感と親近感どっちもあるし…

今回より、やっと主人公達の学業生活が描かれます…(但し、平穏且つ長く続くかどうかはまだわかりません…)。

 ○2023年4月18日朝 日本国 鹿児島県南部 海士臣(あまとみ)島 海士臣市 異空間混在化地帯 臣島(とみしま)高等学校 正門前○


「…結局、この怪奇現象が入り混じりまくってる方が現実だった…」


 十日以上たっても現実が幻想(ファンタジー)と混ざり合ったまま進行している状況を、学校に近づいても減る気配のない警察や自衛隊にマスコミなどの姿で、美優紀は悲しくも受け入れるほかなかった。

 幸か不幸か、ここ1週間以上の間に日本政府がアメリカ政府や異世界側の助力を得てこの地における各治安機関や防衛戦力などを増強して治安改善と安定化に尽力し、どうにか現地の公的機関及びにそのために必要な物資の出入りをいつも通りに出来る体制は整った。

 そのおかげで、入学式はまだ遅れてはいるがどうにか入学予定だった生徒の多くはどうにか入学でき、クラス編入と授業再開を行えるようになったのだ。


「あ! 美優紀も無事だったの!」

「燐華も大丈夫そうね! 電話では元気そうだったけどいつも無理してる時は隠してばっかりだったし…」

「ええ、沙紀も見てのとおりね!」


 そんな憂鬱だった美優紀の気分も、本日になってようやく通えるようになった高校の正門前で友人達と再会出来て幾分か和らいだ。


「あ、そう言えばミカエル君と宗一の方はどうしたの?」

「う…いやーー…それはー…っ!?」


 そこでまだ姿を見せない友人達に付いて聞かれて美優紀は返事に窮するが、彼女達の背後に見える臣島高校の背後に広がる、この島の変化の象徴に近づきつつある彼らに気付いた。


「な、何でもない! 何でもないわよ! おほほほ…(あ、あいつ…幾ら髪の色はあっちの方に戻ったからってよくあんなのんきに…!?)」


 不審がられる友人達に誤魔化しの笑いを続ける美優紀の目には、臣島高校の背後の山々が伸びる山地が異世界と一部の空間が融合している姿と、それに混じる向こう側の学園に髪色と制服以外はこちら側のままであるミハイルことミカエルの姿があった。






 ○日本国 鹿児島県南部 海士臣(あまとみ)島 海士臣市 異空間混在化地帯 日本・異世界仮共同管理区域内 ジブラルタル学院○


「…あーー、良かったーアメリカのあの人の症状があくまで一過性のもので翌日には戻って凄く冴えたままで…おかげでそれをバックに上手くつけた日本のお偉いさん達と僕等がいた世界の話し合いはとりあえず初期の混乱の折り合いは付けられて、どうにか学校が再開になって…」

「先生、魔法による秘匿があるとはいえ朝からこんな人が行き交う大通りでそのような話は軽率に…」


 その美優紀が気付いて見上げている異世界側の範囲内に混じることになった山を走る道路を、ミカエル改めミハイルが共にローラースケートを履いているわけではないのに高速で滑るように立ち止まったままの姿勢で駆け抜けていっていた。


「…いやまあ、それにしても大変だよねぇ、僕等がいた世界と空間的に融合したこの辺りの土地に住んでいるか権利を持っていた人達は…」

「それでも死者や障害が残るような怪我人が出なかったのは本当に良い意味での奇跡です。その点で言えば先生は本当に今回も大変働きました―――!?」


 その道路上に混じっている地元の見慣れた風景が、地球から見たら幻想的と言える光景に部分的ながら混じっているシュールな光景に、ミハイルは複雑そうな表情を浮かべるが、それを光代が励まそうとしたところで向かっている先の学院の一角からキラリとした光が生じたのを目にした。


「ぶばぁ!?」

「―――あ…」


 その光った箇所から音を置き去りにしかねない豪速で飛んできたサッカーボールを、ミハイルは避けきれず顔から真面に受けて10メートルくらい吹き飛んで背後の松の木に何とか着地した。


「…こ、この…地球では普通に死人を出しそうな速度でゴールを繰り出してきたのは…お、恐らく…」

「おい! ミハイルだ!」

「今回も服の下は包帯や絆創膏が多いけど!」

「今度も巴のシュートに耐えきった!」

「また死にそびれたなこの野郎!」

「光代もよくぞ今回もこのバケモンをよくぞ生きて連れ帰ってみせた!」

「…ぬおおおおおおおおお!? やはりこっち側での我がクラスメイト達いいイイいいイイイイ!!??」


 それにミハイルが微妙そうなのが多分に混じる気分で、痛む鼻を撫でつつも学院校舎の光った箇所を見やると、そこから宙を蹴るようにして飛んだり、背などから生えた翼で飛んできたり、もしくは道路を地球のレースカー顔負けの速度で走り抜けたりするなどして、ここ異世界側で通っているジブラルタル学院での友人達が概ね喜色を露わにした状態で突っ込んできた。


「先輩たち生きてて良かったですよー! また何日か姿を見せなくなったかと思ったらまさか皆で呼んだり研究したりしてる“アナザー・ファンタジー”みたいに異世界と繋がるなんて事態になってそこでまたトラブルに巻き込まれたような傷の多い姿になってたんですもーーん!!」

「あ、あーもーそんなにたくさん泣いてちゃ駄目よトモカちゃん…」


 その中で小柄で且つ薄桃色の髪をした童顔な後輩の少女トモカに抱きつかれ、光代は苦笑を浮かべつつも安堵の色も見せて、その豊かな胸に泣き顔を埋めてくる彼女の頭を優しく撫で始めた。


「おいごらぁ! ミハイル! テメエが今回のを上手く収めなかったおかげで今度の球技大会が中止になって前回のリベンジが不可能になったんだぞ! こういう時に役に立たねえとお前の存在価値ねえだろぉが!!」

「そんな無茶な!? 僕これでも最低でも2つの星を救った身なんですけど!?」

「そんなのどうせお前の身内なお偉いさん達が適当な連中の手柄にするに決まってんだろ! テメエが自慢しても病院への妄想治療に見せかけて軍病院連行されての緘口令に決まってんだろうが!」

「酷い!!」


 その中で肌の艶からして10代半ばそうだが赤みが強い肌に包まれたやけに長躯で額の脇から二本角を生やした女子学生が、ミハイルにやけにきつく当たって彼を涙目にさせたりした。


「成績上位だけどその不運体質でトラブルも呼び込む“トラブラーズ”一軍主力のお前とそれと同率ながら上手い収集役もしてくれてる光代さんがいないと俺らが悪目立ちして鬼センコー共に搾り上げられるじゃねえか!!」

「知るかー!!」

「…仕方ないのはわかるけどこの人を含めたあの人達に含まれるのはつらい…」


 一方でガラの悪そうな生徒達も種族問わず半泣き顔でミハイルを理不尽な理由で責め立て、さり気なく悪い意味でひとくくりにされて光代は空しそうな笑みで一筋の涙を見せた。


「あー、お前たちさっさと青臭い感動の再会は一旦止めて校舎内に戻れー。ここじゃー色々な意味で悪目立ちするからー」

「…うわ、戦○ァル鬼教師…いだい!?」


 その迎えてきた生徒達を強引に掻き分け、新雪を思わせる白みの強い銀髪をした白人系の女性が、普段は怜悧な美貌が似合うその面貌を面倒くさそうに崩した状態で現れてきて、それを見て引き攣った顔を浮かべたミハイルをデコピンで数メートル吹き飛ばした。


「あ、お久しぶりですスクリア先生」

「久しぶりだ光代、今回も本当に生きて帰って来て良かったな。ついでにその馬鹿を今回もまたよくぞ生きて連れ帰ってくれた」

(…ば、馬鹿って僕は何代か前の前世ではあんたの育ての親にして師匠だったんだけど―――)

「今は魂の構成霊質を記憶付きで受け継いでハード一部ハイスぺなだけのボンクラだろうが」

「―――おって心の中でまで突っ込まないで! 確かに念話は当時の僕が教えたけど!!」


 今度はその教師スクリアも交えて、ミハイル達の友人達の再会の場は更なる混沌の度合いを深めていったが、そこには市内における各種戦闘で見せたような殺伐さはなく、微妙な意味での幻想要素こそあるが基本は今どきの学生の賑やかな日常であった。


「…なんだ、あの子は向こうでもああいう風に笑ったり嘆いたり出来るんだな…」

「そうねー、ファンタジー系でジャンルが増えているだけで私達のあの頃の時や、あの子のこっちでの友達と変わんないわねー」

「そうですな、あの子がああして普通に過ごせているのも…それが普通になってる貴方達が地球側での親をしてくださっていたおかげでしょう…」


 その様子に、ミハイルの地球で籍を置く学生ミカエルとしての親であるダニエルとマリアは安堵の表情を見せており、二人をステルス魔法でこっそり連れてきたクトゥルーは謝意の表情を見せつつも自身の義足でもあるミハイルに同じ親としての安堵の思いを共にしていた。


『大変だー! 学院に無許可で侵入しやがったパパラッチっぽい馬鹿が撮影許可の出してない政府との共同管理下の物品を撮影したデータが詰まってるカメラを持ってそこから逃げようとしてるぞー!!』


 だが、そんな賑やかな安らぎは彼らのいる道路の学院側から向かってきたその放送と、それから逃げるようにして近づきつつある半浮遊式魔法バイクで逃走してくるパパラッチらしい誰かで中断となった。


「え!? 何々!? 仕官候補科の警備部の連中は何してんのよ!?」

「たしかあの放送は冒険科の連中の声だったよな!?」

「だとしたら時期的にあの円門(サークル)の解析データとかが入ってるかも!」

「それだとしたら逃がすとヤバいぞ…!?」


 それにミハイルとその周囲にいる友人達が近づきつつあるパパラッチに顔を強張らせて身構えた時、道路の片側にある茂みから小動物らしき影がバイクの前に飛び出てきた。


「退けーー-! こいつは大き…ではなくて社会正義実行のために抑えた資料だーー! 退かないとひき殺すぞ―――!?」


 社会正義を唱える者とは思えない荒げた叫びを放ちながらパパラッチはその影を怒鳴りつけるが、それと接触した次の瞬間に彼の認識を埋め尽くしたのは、機械が盛大に拉げられる音を添えた青い大空、それに混じる真正面から殴り壊されたような彼が載っていたはずのバイク、我が身を包み込む浮遊感であった。


「―――お…え…これって…何が…?」

「危ない!」

「あぶべぇ!?」


 それが何なのか理解出来ずに呆けた顔からヤバい角度と速度でパパラッチが道路に叩き付けられようとしたその瞬間、ミハイルが瞬時に伸ばして巨大化させた鎖で横っ面から叩き飛ばされ、その横を流れる小川に先ほどよりかは勢いの和らいだ状態で叩き込まれた。


「…あーー、危なかったー…学業がやっと再開したそのありがたい日にスプラッターな光景で盛大な冷や水ならぬ冷や血を入れられるかと思ったー…」

「ふ…そう言いながらも瞬時に衝突死せぬように小川に叩き込む技と優しい心胆…お主とて体が変わっても中身は相変わらず変わらんな…」


 それからプカプカと水面に目を回した状態で浮かび上がったパパラッチに安堵の表情を見せたミハイルに、スクラップと化したバイクを担ぎながらそれに轢かれそうに見えた小さな影が近づいてきてその姿を見せた。


「…いつでも儂の元にまた来るがよい。不肖ながらこのアマゾウが力になろう」


 そうして渋く威厳のある声を放ちながら姿を見せたそのアマゾウと名乗る小さな影の正体は、何故か白い胴着に身を包んで二足歩行をして人語を話し、耳の短い黒いウサギだった。


「あれー? 何で私達が暮らしている海士臣島と隣りの奥野島にしかいないアマトミクロウサギさんが歩いて話しながら近づいて来ているのかしら?」

「ああ、あの人は当学院の学院長にして銀河キックボクシング協会会長でもあるアマゾウ氏ですよ。先ほどパパラッチを乗っていたバイクごと蹴り飛ばしたのもあの人のキックです。ちなみに種族は太古の昔に異世界より漂流してきた耳の短い珍しいウサギの遺伝子が強く出た方の獣人族です」

(いや確かあのウサギってうさぎ跳び出来ない種だろ!? やっぱり私達の世界と同じ点も違う点もあり過ぎる!!)


 それに不思議そうな顔を浮かべるマリアにクトゥルーは親しい友人を紹介する様子で答え、ダニエルは内心で先程から生じていた異世界に対する親近感とそれに迫る勢いで蘇った拒否感による葛藤から心中で絶叫していた。

くれぐれも言いますが作中主要舞台の一つのモデルになっている作者の出身の島には、耳が短くて黒い“生きた化石”とも称されるウサギは生息していますけど、今回登場したアマゾウ氏のような脚力はございません(←いや、当たり前だろby作者の身内)。

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