023 誰しも本音と建前があるものだし…
くれぐれも言いますけど、本作はフィクションなので現実における国家や人物などとは一切関係はございません。
けれども、実際に作品のモデルになった作者の地元の島には、あの動物なのに耳が短い原始的で“生きた化石”と称される希少動物と、それをモチーフとした市町村公認のマスコットキャラがいます。
それと、作品舞台のモデルになった作者の地元の島の北辺りでは養蜂が行われていて、その蜂蜜も販売されています。
最後に、ユニーク件数600突破ありがとうございます。
○2023年4月9日夜日本国 鹿児島県南部 海士臣市 ループ橋付近集落 幻田宅 帝国側地球派遣部隊戦闘指揮所○
「…とまあ、迂闊に巻き込んでしまった友人からの手痛い忠告を期に引き締めて…、次は地球圏の各国の動きについて見ていこうか…」
宗一の突っ込みで痛む耳を抑えつつ、ミカエルがそう告げると戦闘指揮所内部では次々と地球圏における各国首脳陣の秘密会議の様子が次々と映し出されていく。
「それではまず、地球圏にある大国の中では、我々が拠点を秘かに設けさせてもらっているここ日本国の西隣に位置して最も無視出来ない中国からのものです」
ハイディナがその空中に映し出されている映像の一つを拡大すると、そこには赤い衣服を身に着けて黄色い体毛をした小さな熊のぬいぐるみみたいなあのキャラクターにどこか似ている、最近は何やら過去回帰の傾向が強いと国内外での声が強い中国の現国家主席の姿が映し出されていた。
『…というわけで修主席、これが今現在の日本国に今は属している琉球諸島北部…海士臣島の現状です…』
その現国家主席修篇斤を始めとして、映像に映し出されて北京の光景が見えるその某所には中国の首脳陣が集っていた。
『…まさかこのようになるとは、ロシアが先走って今も泥沼状態となっている中に続いてこのような機会が訪れるとは…』
『ええ、その通りです国家主席…この、銀河系規模で異世界と繋がるというこのゲート…今現在の現地国である日本だけに任せるのは酷と言うものでしょう…』
『何より、あの島を含めて琉球諸島は日帝時代に清朝時代の我が国の朝貢国であったのが謀略で奪いとられた領域です…』
『最初は異世界との交渉を一国だけに任せるのは問題とし、国連安保理を通じて我が国を含めた各国で同島とそこにある異世界との接続点を国際管理下に置くと主張して通すべきでしょう…』
そこには日本国民としては不安ばかり高めさせられる密談が交わされており、少し険しくなった表情で見ているミカエルの隣りの宗一は不安の色を強めていく。
「…お、おい…ミカエル…これって大丈夫なのか…?」
「…宗一、ここでは各国元首たちの本音を聞いてみよう…」
ミカエルが画面に映る修篇斤を指で押すと、それから彼が実際に口にしているものとは違うもう一つの言葉が紡がれ出していく。
(…そうして最終的には我が国の領土に戻ったあの島で…現地の特産品である黒砂糖を始めとした甘いスイーツを楽しむのだ♪ フルーツもたくさんあるんだから養蜂もやっているだろうし蜂蜜もたくさん口に出来るだろう…♬)
そうして露わになったのは、日本国にとっては穏便な内容ではないがその目的の方で非常に弛緩させてくる修篇斤個人の本音であった。
(…あー、また国家主席の甘味処巡り絡みの妄想が始まったよ…この感じ…)
(…つーかこの前も隠れて壷に入れてる蜂蜜舐めまくってたよなー…)
(まー香港やマカオで上映禁止にされたあのクマが元ネタのホラー映画が放送中止にされたから、言っちまったら間違いなく最低でも左遷されるから言わないけど…)
(顔の方は原作絵本やそれを元にしたあの鼠の会社のアニメじゃなく、ぼろくそみたいに言われているホラー化の方の一作目に近いけど…)
(この前なんか家族と一緒にこっそり香港にあるあの鼠のテーマパーク行って、国内で禁止してるあのクマのぬいぐるみを着こんではしゃいでたな…)
(自分の好きなキャラだからそれを用いて揶揄するように自分を非難するような真似は許さんってことか?)
(表向きは失礼だから取り締まってんのに自分がそのファンだなんてバレたら赤っ恥どころじゃすまねーからなー)
(まあ、実際に中国の食品よりも日本産の方が信用できるし美味しいってのもあるしな)
(実際、うちが汚染水と呼んでいる日本の東北の震災被災地から処理水が流されてもさー、そこの近海で取れたのよりもウチの方の河川や近海で取れたののほうが、原発の処理水で必ず混じる放射性物質トリチウムの濃度が高かったりするし…)
(正直さーウチの主席が海外のスイーツが好きなのもわかるよなぁ)
その本音は周囲の側近達にも察されており、現実で真面目な顔を浮かべている彼らの上にはそれを露わにしたような締まらない表情を同席している同僚達と向け合っており、テレパシーなどは使われていないのに本音は妙なシンクロを見せていた。
「…何て反応すればいいんだ…」
「…とりあえず、舐められて手出しされないように…こっちの技術力や国力の差を見せつけつつ、武力さえ用いなければ安全という事を向こうへ上手く伝えるのが肝心だ…準備は?」
「はい、今度の転送の準備も出来ています」
それでどう反応すればいいのかわからなくなった宗一の横で、冷たく重くなった表情でミカエルが告げると、ハイディナがキーボード型映像パネルを操作し始めた。
そして、中国の首脳陣達が囲む机の中心部に小さな稲妻が迸った。
『ぬお!? な、何だぁ!?』
『テ、テロかぁ!?』
それに映像から見える中国側の指導者達は騒然としだし、画面越しに見ていた宗一は顔を引き攣らせてミカエルを見やる。
「!? おい! 今度は何をしやがった!?」
「落ち付いてくれ、何も喧嘩を売るような真似をしてはいない。単にあれな行為がなるべくされないようにくぎを刺しながら、穏便且つ友好的に付き合った方がいいとの道を示せる品を送っただけだ」
宗一に詰め寄られてもミカエルは画面から冷静な眼差しを外さずにいて、やがて画面の向こう側を埋め尽くしていた煙が晴れていく。
『…え? 何だ…これ…?』
そして、中国側の首脳陣は稲妻が迸った跡に現れた、ミカエルが送りつけたその品が正体を現した。
『…あの熊のぬいぐるみに…?』
まず、あの赤いシャツを着た黄色い体毛の小さな熊のぬいぐるみが蜂蜜入りのツボを抱えている状態で、机の真ん中に姿を現した。
『…それでーーー、その隣りにあるのはーーー…黒いー…ウサギ?』
そして、そのクマのぬいぐるみと隣り合う形で、耳が短くて腹部をガーゼで覆った黒いウサギのぬいぐるみが、黒砂糖が詰まった服を抱えている状態で鎮座しており、どちらも中国語で“平和と友好が第一です”と書かれた旗が頭の上から伸びており、送り付けられて目にした中国側の首脳陣はキョトンとしていた。
「…えーーっと…何のつもりだ?」
それを目にして理解が追い付いていない引き攣った表情で宗一が問うと、ミカエルは真面目な表情でこう切り返す。
「…何か下手すればドンパチにでもなりそうな密談をしていたからねぇ。こっちから友好の品を送って敵意を和らげさせつつ、ついでに向こう側との絶望的なまでに差をつけたこっちの技術力を見せつけて下手な実力行使をされないように釘を刺した。ちなみに熊の方はもちろんあの鼠の会社のアニメの方が元で、ウサギの方はここ海士臣島と隣りの朴乃島にだけ生息している原始的なウサギ“アマトミクロウサギ”を元にしたここ海士臣島のマスコットキャラ“アマクロトーくん”。ちなみにどっちのぬいぐるみが抱えているのもこの島の産品。蜂蜜の方の正式名称は“海士とみつ”」
「…すまねえ、どんなに真面目な意図と表情且つ重い空気を放たれてもお前の口からそんな言葉を聞かされると、何一つも締まらねえ…」
非常に高い技術力と権力でなされたその友好的且つ示威的と称されている友人の行動に、宗一は微妙に気の毒そうな人を見る乾いた笑みを浮かべていた。
本当に言論の自由があるのってありがたいですよね…隣の国々の現状を見てみる…“バン!!”(←どこかからの金属製道具を用いた突っ込み音)
……つ…次も他の国の異世界接続とその現場である海士臣島に対する反応が中心になります。




