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登校途中に繋がった異世界からやんごとなき方として戻ってきてしまった話  作者: kaioosima
第二章 新天地が新鮮な感動だけとは限らない
19/50

019 物事には大抵は虚実が混ざっているものだが…

今回もまた暗いネタが続いていますので、拙いながら入れたギャグが清涼剤になってくだされば幸いです…。

 ○神訂暦世界6015年4月8日朝(2023年4月8日朝) エウロパ大宙域 イベリア宙域 帝国領アトラス星系 第二惑星 宇宙港○


 他国で吸血鬼(ヴァンパイア)と恐れられる星守り(クストーディア)族と判断されて、エウロパ側から幼い少年が帝国側に向けて追放されようとしていたその現場は、騒然となっていた。


【うわぁ!? ち、血だぁ!】

【に、逃げろ! 感染して発症しちまう!】


 少年が幼くも出した衝撃波をミカエルが打ち消すもその負担の為か再び勢いよく血を噴出して倒れ、彼に守られた形となっていた人々が恐れを再び露わにして逃げ出したのだ。


『ちょっとおおおお!? またウチの息子が漫画みたいな勢いで血を噴出させてリアルでなら死んじゃいそうな状態になってますぞぉ!?』

「落ち着いてくださいお義父さ…じゃなくてダニエルさん! あれはもうほとんど先生がこういう時の為に出来るようにした曲芸みたいなものです!」

『いやまぁ今は多分ギャグパート辺りだろうから大丈夫だと思うけど…またクトゥルーさんに迷惑を掛けちゃうんじゃ…?』

「あー大丈夫ですマリアさん、もうそろそろ向こう側の人達がーー…あ、来た」


 動揺や心配の声を見せるカールソン夫妻を光代が宥めていると、エウロパ側から別の一団が到着してきた。


「何事ですかーーーーー…ってあなた達ですか。いつもご苦労様です」

【さぁあんたらは早く解散して、これ以上接近して投石とかをしていると普通に逮捕ものだぞ!】


 駆けつけてきたその新たな人々はエウロパ側の警備兵のようで、同じ宙域圏に属するデモ隊の人々を退去させ始めた。


【ッ! テメエらまた現れやがって! 幾らもらってやがる!?】

【あんたらこそデモ活動支援金から幾ら引いてんだ。さあ、行った行った】

【この人殺しの化物共! 母ちゃんを返せぇ!】

【そういうのは実際にやった連中にでも言ってろ坊主】


 警備兵達はデモ隊の人々に罵られながらも彼らをフェンスや壁から更に離れた場所へ退去させていく。


「またあなた達ですね。今回もありがとうございました」


 そうしてデモ隊がいなくなり、帝国側検問所の向こう側へ少年を連れて行ったところで、許可を貰ったエウロパ側警備隊の隊長が礼を述べに来た。

 その場の言葉は帝国側公用語を用いられているので、会話の内容は隠された画面越しに様子を見るダニエル達にも理解出来た。


「…それで先ほどあの…血を噴出させて倒れたそちら側の方は…?」

「あ、大丈夫ですよ。ぶっちゃけあの後で光代に足から掴まれて引きずられていた方が痛いくらいでしたし」

「ってうわぁ!?」


 エウロパ側警備隊の一人が心配そうだが慣れていない様子で問い掛けるが、そこでミカエルがあっさりと立ち上がって来て驚かせた。


「…あーいう人たちは何度か近づいてきたりもっと酷いのをしてくる例もあるので、もう慣れて今じゃー普通の人なら死ぬくらいの吐血や、身体の何処からでも傷なしで血を噴出させられるようになってますんで。毎日少しずつ体の何処かに溜め込んでいつでも鮮血サービスできるようになってます」

『嫌な特技だな!?』


 身についた自分の血を拭きながらいつも通りのミカエルにダニエルは陰ながら突っ込んだ。


「…いやあ、いつもそんな身を削る様な芸をしてまでああした連中を怪我もさせずに退かせる貴方にはいつも感謝しています。ある意味ではあの行為が一番効果的ですから。連中は血液を浴びると感染するというデマを信じているようなので…」

『…え? ミカエル達のあれって感染じゃなくて遺伝でなるんじゃ…?』


 それに対しても感謝を保ったままのエウロパ側警備隊指揮官の言葉に、向こうには聞こえないがマリアがふと疑問を浮かべた。

 この世界の星守り(クストーディア)族の多くが、人間の両親を持って最初は人間として生まれてくるのは先に説明したとおりだが、その目安となるのが“スピリット・コネクション細胞”、通称SK細胞なる細胞で、この細胞は人間ならば質や量に個々の差はあっても神訂暦世界側の人間ならば皆が持っているものであった。


(…僕達の血を浴びるとSK細胞が活性化して吸血鬼(ヴァンパイア)化するって言う噂を信じてるんだ。政府はそれを金に目がくらんで隠してるって陰謀論を主張して…。ああ云う反対派の中には、感染者の拡大を防ぐために出生直後の第一次症状の時点で直ぐ帝国へ追放すべきだという意見もあるんだよ…)

『…そんな…』


 ミカエルに魔法通信で聞かされたその内容にマリアは沈痛とした表情を浮かべた。


(…海士臣島も昔は偏見が当時強かった病気の患者を収容するための施設が建てられたでしょ…)

『…あーー、真香園(まこうえん)がね…』


 地元の歴史の闇に触れてくるミカエルの言葉で、マリアは夫がまだ作家として売れなかった時期に、家計を助けるために働いていた職場の近くに有ったので、偶々親交を深める事が出来たその施設とそこで暮らす人々のことを思い出す。


(…中には生まれた時点でさっさと止めを刺すって親もいるのも考えればー、表向き悲しんで送りつつもーその後は家で宝くじ当たったみたいな感じで豪遊してる親御さん達は人間味があって優しい方だと思うよー)

『…そういうのをそんなけらけらした感じで話せるって本当に何があったんだ息子よ…??』


 その母とは対照的に、それ以上にブラックな幼少期を持ってそうだが画面の前で二頭身ゆるキャラ風な分身を生じさせて軽い調子で喋るミカエルに、ダニエルはやるせない気分になる。


(あーお二人ともそんな気分を落とさないでください。少なくとも帝国領内では私たち星守り(クストーディア)は生まれた時点で適切な治療を受けられますから、ほとんどは実の両親の元で育っている方が殆どです)

(こっちの銀河の三分の一はそうだけど残りの三分の二が地球基準ならまだブラックなところが結構多いけどねー)

(ちょっと先生!?)


 途中で光代が同じく二頭身ゆるキャラ風分身を生じさせてフォローに入ったりするが、ミカエルは変わらない調子で落としに来るので彼に対する非難も繰り出した。


「…えーーっと、あの子の引き渡しは終わりましたので私達はこれにて帰ります。後のことはよろしくお願いしますね」


 一方で、その間もエウロパ側警備兵との話し合いは進んで終了となり、帝国側検問所には向こう側から来た少年を除けば全員が帝国側の人身だけとなった。


『…けれどーあの警備隊の人達、デモ隊の人達と比べて貴方達にも親密的だったわね』

(エウロパ側の租界があるけどこの星系は帝国領だからこっちの立場の方が基本強いからね。それに先々代から基本融和政策を打って、ここのエウロパ側の住民達は基本は良いお隣さん達だから)

『じゃあ、デモ隊の人たちは?』

(海士臣島からもっと南にあるあの島の県もさー、基地の周りで運動してる人たちに地元の人はそんなに多くないって話を聞くことがあるでしょ)

『…あー、まーなーー…』


 それで安心したのかマリアは向こう側の人の対応の温度差を気に掛けるが、ミカエルが地球側における地元のお隣県の裏事情も交えて説明し、仕事柄から取材旅行も多いダニエルも納得の色を見せた。


【じゃー僕、もう少しで施設の人達が来るけど、それまで私達と遊びましょうか?】

【…あ、うん…ありがとうお姉ちゃん…それで、さっきの…ありがとう…それで、ごめんなさい…】


 一方の光代は帝国側に送られてきた少年に振り向いて穏やかに接するが、こちら側に来て落ち着いたのか少年はお礼を言うと共に謝った。


『…落ち着けば良い子みたいだな…だが、何で親はあの子を一人で送ってきたんだ?』


 それにダニエルは画面越しにホッとすると同時にその疑問を再び口にした。


(…あの子と共にあの場所に来たら写メでも撮られる可能性があったからだよ。人権とかの意識はともかくネットの技術は地球よりも進んでるから、一緒にいられる所を撮られて晒されたら一気に炎上さ)

『…そういうところばかり似ているんだな…』


 異世界の負の面を見せられて、ダニエルは嫌な意味での親近感を覚えた。


(特にエウロパ圏では力を握っている教会の関係者などがね…)

『……………思って見たんだが、今こうしてそう言う拙い情報を知れるこの場に私達がいるのって何か政治とかいろいろな意味でまずくない??』


 同時に、そういった面が地球よりも強い勢力と、自分達よりも遥かに強い力を持たれている状態で故郷が接しなければいけない現状と、そのことを一民間人でありながら知ってしまったという状況に、ダニエルは非常に暗く微妙そうな表情で今更ながらそうぼやいた。


『…つきましては神皇陛下、此度に接触した新たな銀河系への通過点となり得る此度にて繋がり発見された惑星と、それに応じてのこちら側の他国との調整に向けて、現皇帝陛下がお二方にも参加を求められています』


 そのダニエルには聞こえなかったが、何処かから新たな魔法秘密通信が入ってきてミカエルにそう語りかけてきた。


『…どの道、拒否できないように逃げ道は潰しているんだろう。直ぐに繋げるよ…』


 呼ばれた一人であるミカエルは半分つかれつつも諦めた表情で、静かな双眸を添えてその言葉を返した。


『…続きまして()()陛下ですが、貴女様の方は…』

『…先生にばかり負担はかけられません。ですが…その言い方はあまりしないでもらえると…』


 一方、その名で呼ばれた存在らしい光代は、静かにだが深い後悔と忌避の思いを隠さない様子でその言葉を返した。

何だが、本作ヒロイン(の予定)の光代もなんだか過去の経歴が曰く付きっぽい様子になりましたね…。

その詳細も書きたいですけど、それの詳細へ至るのはかなり先になる可能性がかなり大です…。

それで、そこまで書けられるように、時間が出来た時で良いので今後とも感想と良いねボタン、ブックマーク登録の方を今後もよろしくお願いします。

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