016 知る権利でもモラルは守られるべきだけど…
今回は色々とまずいネタが出てきますけど、作者の情報源はネットが主なので事実と違ったりする可能性や、パロディが多く含まれているので真に受ける必要はないです(…多分)。
但し、本作の舞台のモデルになっている作者の生まれた島で、今回の話に出てきた果物がブランド化を目指して栽培され始めているのは本当です。
作者はまだ食べた事はないですけど、美味しいと評判です。
○2023年4月7日昼 日本国 鹿児島県南部 海士臣島 海士臣市 スーパーセンターキタムラ付近マンション○
「うわぁ!? 今度は上から素っ裸の男が落ちて来たぞぉ!?」
「救急車が一台潰れちまったァ!?」
宇宙海賊の崩壊した船底倉庫から解放された人々と、それを救助すべく駆けつけてきた救急隊や、同じく落ちてきた海賊達を捕えるために駆けつけてきた人々は再び驚きを示していた。
マンションの屋上より高校生くらいの少年が粘液以外は何も纏っていない全裸の状態で落ちてきて、落下先にあった救急車を一台破壊してしまったのだ。
「…………」
それを、少年がいた場所であるマンション屋上の酸で煙が生じている場所からミカエルが微妙そうな表情で見守っていた。
「…大丈夫。魔法でどうにか肉体強化したから九割くらいの確立でこっちの病院でも助かるはず。テレビでは放映できなくて○ッカ○ットみたいなサイトじゃないと見れない色々飛び出てる状態ではあるけど」
「それ大丈夫って言わないよな!?」
それから背後を振り返って苦笑いでそう親指を立てるミカエルに、宗一が突っ込んだ。
「ッ!? しまった! こんな未開発惑星とは言えつい過剰防衛行動を…!?」
宗一の突っ込みの声の大きさに我に返ったのか、メッテルニヒはハッとした表情を浮かべるが、その真横をミカエルの掌中より生じた黒い稲妻を伴った鎖が駆け抜け、彼の背後の空間が放電現象を伴って歪みだした。
「いででででぇ!? ははは放せよ!!」
やがて鎖は手繰り寄せられるが、空間に生じた放電から今度は大型のカメラ機器と思われるものを担いだ髭だらけの小男が引きずり出されてきた。
「あ、たしかあんた切り取り報道に盗撮カメラ及びその設置のための破壊行為が過ぎて業界の各大手から追放処分を受けたドワーフ新報のドワーフの記者だった…名前は確かー…」
「で、出鱈目抜かすんじゃねえ! 何の証拠があって…!?」
「いや、こっちでもアクセスできる星間情報サイト“バビロン”で検索すれば普通に出てくるよ」
ミカエルは引きずり出したドワーフの男を、空中に投影した異世界側のインターネットサイトに出てきた画像と照らし合わせた。
「…あー、元マスゴ…失礼、フリーのジャーナリストの方ですか…。けれどこの星ってまだ発見されたばかりで民間人の侵入はあそこへ転移した当学園みたいな緊急時を除いて違法では…?」
「アアァ!? テメエらみてえなくそ上級国民丸出しなガキにそんなこと言うことを言う資格があんのか…あ…ああーーーーーー…」
それを見て光代が微妙そうな顔で口を挟んできて、それにドワーフの記者の男は食って掛かろうとするも、そこでドワーフの男は瞼が急に重くなってぶっ倒れた。
「…え? 倒れた…?」
「メッテルニヒさんの唾液で溶けて生じた煙は種族によっては強い睡眠誘発効果があるんだよ。えーーーっと記録媒体はーーーーっと…あ、これか…」
宗一がそれを見て戸惑っている間も、ミカエルはそのドワーフの持ち物を幾つか魔法で触れずに調べ出していく。
「お、おい…大丈夫なのかね!?」
「大丈夫ですよーメッテルニヒさーん。別に死人が出るようなことにはなりませんよー。まーこの人達が豚箱に行くのを渋ったりしなければのお話ですけどー♪」
そこでメッテルニヒが不安そうな表情で加わったりするが、それにミカエルは綺麗な笑顔を浮かべて話を進ませつつもその背から巨大スライムの時と同じ巨大な翼を生やしていた。
「何処の錬金術師だー!?」
その光景にダニエルは母国の南にあるドイツ語圏で悪魔と契約を結んだという伝説の錬金術師ファウストと、それと契約を結んだとされる悪魔メフィストフェレスを二人に重ね合わせた。
○数時間後 2023年4月7日夕刻 日本国 鹿児島県南部 海士臣島 ループ橋付近集落 幻田宅 ハイディナ部隊秘密戦闘指揮所○
「…とまあ、メッテルニヒさんも政敵に見られたらまずい動画を取られたからバレるのは拙い状況だったし、上手く味方に出来たよ」
時は現在に戻って暗がりが目立つその部屋で、ミカエルはここ海士臣島で4年前から栽培が始まったアボカドを口にしながら周りに説明していた。
「…本当にかぁ? それとさーあの小学校時代にめっちゃムカついたアイツ…名前はーーー…わかんねーからトロミ~ヒャッヒャは大丈夫なのか?」
そこには関係者と目されている宗一の姿もあり、一応の知人の一人の安否に気が向いていたりもした。
「大丈夫大丈夫、車両に激突する寸前のところでどうにか魔法による強化は掛けたからモツやら骨やらが何カ所か見えてるけどこっちでもギリギリ治せる範囲内に止められたから助かるよ。それにさ―小学生の時点で骨折した腕をガードに出して周囲をあれこれしまくるような頭脳を持ってんだから高校になる今なら病院で上手く使えるようになってるって♪」
「お前があいつに小学校時代にいじめられていた理由がわかった気がする…」
それに対してミカエルが綺麗な笑顔を浮かべつつも背後に黒くて粘着的なオーラを醸し出している姿に、宗一は悲しそうなものを見る乾いた笑みを浮かべた。
「ミハイルさ…失礼ミカエル君、あのフリーの記者が出てくる向こうの番組が始まったようです」
そこでハイディナが空中映像越しに向こう側の異世界の報道番組が映し出すが、そこの大勢の記者を前にした席の真ん中に昼にミカエルが捕まえたドワーフの記者が出ていた。
『…皆さん、此度のジブラルタル星系で起きたテロ組織によるものと星連で発表された時空間異常テロ事件ですが…、我々はこの度…その政府の発表の裏に隠された真実を発見いたしました…』
そこでドワーフ記者は酷く重苦しそうな表情で口を開いていたが、ミカエルや彼からその人となりについての情報を聞いていた面々は非常に胡散臭そうな顔を向けていた。
「お、おいミカエル! あのおっさんがこっちで言うTV番組に出ているぞ! このままだとお前らがやってきたことがパパラッチみたいに悪く切り取りした感じでばらされるぞ!!」
宗一はそれを見て慌ててミカエルを心配するが、その瞬間にそのドワーフ親父が公開した映像は予想の斜め上を行くものだった。
『ん~~~~~♪ アミ~~~~~~~ゴ~~~~~~~~♪ 今日は~上が五枚で~下が~12枚ゲットね~~~~♪』
その異世界側の番組で映し出された映像には、マラカスを持って○んがりコーンみたいな帽子をかぶり、恰幅の良くて見た目は温厚そうな丸っこい顔をしていると思われるモザイクのかかった中年男性が、普通なら上着に隠されている内側の方の衣服の一種を木々に掛けていっている姿が映し出された。
「「「「「………はい…?」」」」」」
始めにそれを見た時、現実世界(?)側の者達は何なのかわからずに首を傾げた。
『…え!!??』
それとは対照的にドワーフの男は、始めは形作られた重苦しそうな表情だったのが、瞬く間に顔から血の気が本当の意味で引いていって脂汗が大量にだらだらと流れ始めた。
「何だぁ? このタコスの国ならどこにでもいそうな風をしているヘンタ―――」
「直接的過ぎるから」
「―――いぃ!?」
宗一はそんなドワーフ記者の反応など構わずに映像に対して思ったことをそのまま口にしようとするが、ミカエルがその口を瞬時に塞いできた。
「何なの? このアメリカのすぐ南の下にあるあの国ならどこにでもいそうな風貌をして女性の敵な行為をしている男の人って?」
「ちょっとぉぉ母さん!?」
だが、宗一の口を塞いでいる間にマリアがミカエルの防ごうとしていたその言葉を発し、息子の顎を大きく開かせてしまう。
「…ミハイル…お前…本当に性格が悪いなぁ…」
それに対し、異世界側から来たハイディナ達はドワーフに対しての表情が軽蔑から、個々で程度の違いはあれど同情を抱いた苦笑いを受けだしており、その内の一人はミカエルをもう一つの名で呼ぶと、それは起きた。
『おい!? 何だその映像は!?』
『どうしてコンキスタドールやその混血の末裔連中の映像が流されてんだ!?』
『さっき確認したのと映像内容が違うぞ!』
『映像を消せぇ!』
『さもねえと俺達があの木に吊るされるぞ!』
『だ、駄目です! 情報守備機能が固すぎてこちらからではー…!!』
異世界側のその報道番組に映し出されている人々が、明らかに血の気を失った表情で恐慌状態に陥っていた。
「…え、えーーっと…向こうは何をそんなに慌ててるんだ…?」
「あー、向こうの方でのある業界で今もっとも勢いのある組織のお偉いさんの恥部を素顔付きで知ったからねー。こっちとは違ってモザイクなしで」
「…え? あのおっさんがお偉いさん…? それってどういう意味だ?」
それに戸惑いと疑問を浮かべる宗一に対し、ミカエルは部屋の一角にある地球側世界地図である国を指さした。
そこは、ちょうど宗一とマリアが口にした国であり、今では海士臣島で国産化が試みられているアボカドの原産地である国でもあった。
「…お、おい…ミカエル…今さっきの…傍から見ればその辺の木々に女性のあれを描けていって通常なら警察にでも捕まりそうなことをしている男って…まさか…!?」
それで何かに気付いたダニエルが青ざめた表情で問いを恐る恐る向けた。
「うん、地球で言うところのこの“訪れるのは今ダメな国ランキング常連”であるこの辺りで、日本で言うところの”ヤ”で始まって“ザ”で終わる人たちの大ボス」
「…それってアボカド食べながら話すことじゃないだろーーーーーーーー!!」
「確かにこの島でも栽培され始めているアボカドの原産地の一つはそのタコスの国だけどよー!!」
それを受けてミカエルがあっさり口にしたその解説に、最悪の予想が当たったダニエルと、遅まきながら気付いた宗一の突っ込みが雷鳴の如き勢いで彼に叩きつけられた。
「…あーー、アメリカの不動産で有名なあの人が国境に長城みたいなのを作ろうとしてる理由の一つになってるタコスの国の怖い人たちの偉い人ということね。しかもー…それが宇宙規模だとしたらどんなに大変なことになるかしら?」
「あー母さん大丈夫、向こうのこの辺りは殆どが僕の向こう側での母国の支配領域になってて、こういう人達が幅を利かせているのはこっちで言うバチカンくらいの大きさの隣接した領宙域外の惑星国家なんだよ。帝国領では活動以前に入る事なんて出来ない半分閉鎖状態の惑星国家の人達だから。わざと泳がせている分は除いて」
続けてマリアがやや困った風な顔を浮かべて、それをミカエルはどうにか宥めようとするが、その間もダニエルと宗一による突っ込みは新たなものが生まれていく。
「そもそもどうしてあのメッテルニヒって人のまずい映像があのタコスの国でハチの巣にされた炎上系動画投稿者みたいなのが出てきそうな動画に変わってるんだよ!?」
「あー宗一、あのおじさんが記録していた映像を色々調べてみたらさー、今回のも含めて色々とマスコミのお偉いさん達にもみ消されそうなヤバいのが見つかってさー。映像の表部分…確認の時点ではメッテルニヒさんのが映るようにしつつも…本番の時にはあっちの映像に変換されるように変えといた。もちろんその時にメッテルニヒさんのは消去されるようにして」
「お前の魔法さ本当に器用だな色々な意味で!?」
「息子よお前の関係者と見なされている私達はまあ大丈夫だろうとしてあっちはどうなんだ!? このままだとこっち側のアメリカのすぐ南にあるあの国みたいにさっき言っていたようにあの人達はなるような感じだろ!? 慌てぶりからして向こうでのお前の国の人たちじゃないだろ!!」
「あー大丈夫、向こう側の僕の国である帝国に直ぐ行って保護を求めれば大丈夫だから♪ まー港に入った時点で即座にお巡りさんに捕まって豚箱行きになる可能性が百パーな所業をしてるけどね♪ それでも地元に留まってその辺の木にロープで木登りするよりかは人道的でしょ♪」
それらの問いにミカエルは顔こそ綺麗な笑みを浮かべたままだが、その背からは非常に邪悪な笑みを浮かべた紫がかった黒色の巨人のような巨大なオーラを立ち上らせていた。
「お前は本当に向こうで何をしてきたんだ!?」
「こんな超マイナーSSでも主人公が出していいオーラじゃねえ!!」
「いや、僕、別に17年前に光の○から来た○ビウスじゃないし、ある方面ではそういう系の存在に倒されるのが創作物ではセオリーな存在だった時期が長いし…」
(…こういう時は他の人が殆ど小悪党になる空気を本当に纏うわね…)
ダニエルと宗一はそれに終始突っ込みを浴びせ続け、光代は無表情のままだが内心でやや引き気味になっていた。
「…えっとーーーー、今回の件で色々と画面越しにこっちを見ている人達には解らない人が大勢出る単語が出て来たけどー、気になったら~“メ”で始まって“コ”で始まる4文字が名前のあの国とー、“検索してはいけない”で色々ネットを使って調べてみてねー。けれどー…子供じゃなくても見るのはとてもお薦めできない画像とかが多く出るかもしれないからー…調べて見た後でどんな気分になってもそっちの責任でお願いしますー…。ましてやわかった国名とその職種の人達を取り上げてその人達と色々もめちゃったりしてもこちらは責任取れませーん…」
それを傍目にマリアは何処かの方向にカメラ目線を向けながら困った風にそう説明した。
(…けどまー、あれよりももっとヤバい組織の幾つかが動き出す可能性が大だし…こっちにいる知り合いの何人かは向こうに移ってもらう準備を進めた方がいいかもな―…)
一方、ダニエルと宗一に責められつつも邪悪なオーラを放っていたミカエルだが、内心では真剣で且つ憂えた表情で、こちら側で自分と親しい人々の安全性についても考え始めていた。
今回、色々とアメリカ(地域によってはそこも…)の南の下にあるあの国にはいけなくなる(?)ネタが幾つか出てしまいました…(いや、そもそもそこへ行くための金も用事もないだろby身内)。
次回、ようやく主人公が現実(?)に戻ってくる前にいた異世界が舞台になる予定です。