015 緊急時でも偉い人が相応とは限らないし…
今回のネタには、今のお偉い人達系の際どいかもしれないネタが多いです。
○2023年4月7日夕刻 日本国 東京都 内閣総理大臣官邸○
「政府としては今回の事態はどのように思われますか!?」
「現在の海士臣島で何が起きていますか!?」
「今回の現地で発見された生物の大半が巨大で犠牲者が多数出ているとの情報もあります!」
「さらには上空に多数の浮遊する大型の船舶が確認されているとの情報もありますが!」
「政府としてはどのような対処を!?」
ミカエルが何とかしてメッテルニヒを味方に引き入れようとしてから数時間後、空が赤くなり出した日本国の中枢の一角は、大量のマスコミでごった返して質問や興奮が噴火の如く巻き起こっていた。
「…この度、国民の皆様を驚かせている事態の連続があまりにも予想外過ぎた内容の連続でしたゆえに、こうしてご説明するのがお遅れしてしまい誠に申しわけございません…」
そうした集まるマスコミの前で、国民からの評判はダニエルが口にしたように芳しくない眼鏡をかけた、今の日本国首相は申し訳なさそうな雰囲気で頭を下げる。
「総理! ですから今現在の我が国にて何が起きているのかご説明下さい!」
「まず、結論から申し上げますが…今現在、我が国は…銀河系規模に領域を広げた“異世界”と繋がってしまったのです」
「「「「「!!!!!?????」」」」」
その首相の姿勢にうさん臭さも混じる慣れを感じたマスコミは答えを急かすが、それで首相が言い放ったその答えに、興奮と驚愕を更に増させた証であるどよめきを放った。
○2023年4月7日早朝 アメリカ合衆国 首都ワシントンD.C ホワイトハウス○
日本国政府のその発表は時差の都合でまだ日が昇ってない深夜に近い朝の時間帯であるその国も、非常に険しい表情で同国の首脳陣達が見守っていた。
「…全く、エイプリルフールにはまだ早いぞ…と、言いたいところだが…」
「如何せん、こちらの偵察映像からしても…今現在、クリスマス島で出現した浮遊物が本物だという事はわかっています…」
「今回、現れた宇宙船は…銀河系規模に広がった文明に属するようです…」
これまではこの星で最大の大国として君臨してきた自国を、軽くしのぐ存在が現れたという事態に、アメリカの中枢に立つ者達は頭を抱えていた。
「映像を見た我が国の国民の中には、人類史上初の異星人との接触だと興奮しているもの達もいるようですが…」
「独立記念日を扱ったあの映画に、それを歓迎したら集まっていたビルごと吹き飛ばされるというシーンがあったが、そういう連中は現実にもいるのだな…」
「実際、飛行機に乗って現地に向かおうとしている活動家もいる模様です…」
「日本側にもすぐに連絡を繋げる。それと同国に駐留している我が国の軍にも自制を徹底させろ」
「くれぐれも向こう側に現れたという例の異星文明勢力を刺激するなと…」
「我が国の博物館委員会にも連絡を取るように。今回、接触してきた異星文明が伏せてある過去にこの星へ接触してきた異星起源文明の遺物と思われる品々と関係があるかどうか…」
各地からの報告を聞いて大なり小なり、この場に集う彼らの全員が今この現実がどうか夢であってほしいという苦悩に襲われていたが、この世界では現実のもののため各地へ指示を出していく。
「それと、日本のヤスベ総理との電話会談の準備をー…」
(大統領、ミスター・ヤスベはもう昨年にて銃撃でお亡くなりになっています…)
また、大統領のその言動から、それ以外の者達は此度の事態に対処せなばならない今の大統領が、その年齢からそれができる力はないのではないかという不安にも襲われていた。
○2023年4月7日朝 ロシア連邦 首都モスクワ クレムリン○
日本国の離島で発生した銀河規模異星文明との接触は、アメリカを中心とした西側と呼ばれる国々と対立中で、今現在も隣国と交戦真っただ中の北の大国たるロシアにも届いていた。
「…つまり、今現在…アメリカの犬であるあの島国に、異世界から来たという銀河系規模の文明からの大艦隊が来訪してきたということかね?」
「はい、その通りです大統領。それで在日米軍を始めとして太平洋各地に存在するアメリカ軍の警戒はそちらへ向けられているようで…」
そこで緊張した部下からの報告を、同国を実質的な独裁で取り仕切る元工作員出身の大統領が感情を感じさせない表情で聞いていた。
「そうか、だったらアメリカをはじめとした連中は当分その異星文明への対処に集中せざるをえまい。その事を調べつつも我が国はその隙をついて対ウクライナ戦線を…」
(この状況でもあんたはそれしか頭にないんかい!? テレビにも足が震えていること気付かれてボケ出してきているって疑惑も出ているのだからさっさと隠居してくれよ!!)
但し、表情からは察し辛いがロシア大統領の方も頭が生え際以外の理由でも身内から不安視されてきており、相手をしていた側近は独裁政治に対する反動から内心で毒づいていた。
○2023年4月7日夕刻 日本国 鹿児島県南部 海士臣島 ループ橋付近集落 幻田宅 ハイディナ部隊秘密戦闘指揮所○
「…とまあ、今現在のこの星での主要な国々の反応はこんな感じだねぇ…」
「…うーん、ソ連が終わった後の大混乱状態の北の熊さんの様子を見れていたバーガーの国の大統領ってこんな気分だったのかなぁ…」
冷戦が終わってからは朝にしたトイレでの大きいものの色まで調べられていたというクレムリンの主の後継者と、その情報まで知っていた時期もあったというホワイトハウスの今の主たちの様子に、秘密基地と化しているそこでミカエルはフランクな要員の一人と話しながらシュールなものを見た光景を浮かべていた。
「…空中に浮かぶ超ハイテクな映像で見れるのがこの星のお偉いさん達の頭を捻らせている姿か…。まー、上手いところメッテルニヒをこっち側に取り込んでエルフ達への仲人はたのんだし、繋がっている向こう側の星は帝国領だからあっち側の未開発の発展途上惑星みたいにいきなり保護という名の進駐をされるということはないでしょー…」
「…取り込んだ…ねえ。あんなので本当に大丈夫なのか…?」
どういうわけか夢の中での魔法を現実でも使えるようになった宗一も、ミカエル達がいた世界の関係者の可能性ありとこの秘密戦闘指揮所への入室を許可されていたが、彼の意識は数時間前にキタムラ近くのマンションの屋上で起きた例のやり取りに意識が大きく咲かれていた。
「…あのー、メッテルニヒさん…貴方が超甘党なのは私達は知っているので別に驚きませんが…あまりここのように我々の世界と接したばかりの惑星でするのはちょっと…」
数時間前、ループ橋集落から見下ろせるそのスーパーセンターキタムラ近くのマンションの屋上で、光代が微妙そうな苦笑を浮かべて、上空に現れたエルフの大艦隊に属しているエルフ族の男たるメッテルニヒに注意しているのを宗一は見た。
この地球での前世から続く超甘党であったメッテルニヒは、ミカエルが地元であるこの島で買い集めてきた同島で取れた黒糖やスイーツで出来た甘菓子系お土産をちらつかされ、文字通り滝のような涎を垂らして、それに混じる酸でアパートの屋上を溶かし出していたのだ。
「お、おいミカエル! どんどんマンションの屋上が溶けていって私達の所まで近づいて来ているぞ! 大丈夫か!?」
「大丈夫だよお父さん、これって戦闘時はともかく平時の今なら無生物とかは滅茶苦茶溶かすのは早いけど、生物系を溶かす力はあんまりないし―――」
「うわーーーー!? な、何だー!?」
「うちの家の天井が溶けてきた~!?」
それに慄きだしたダニエルをミカエルは宥めようとするが、それを遮るように足元から悲鳴と驚きの声が立ち上ってきた。
「―――い…あ、しまった…ここ、マンションだからすぐ下は人のいる部屋だった…。この星の建物…そこまで耐酸性強くなかった…」
ミカエルはその声で、メッテルニヒが洪水状態で溢れさせた唾液がもう屋上の屋根を溶かしぬいて、下の部屋からその更に下の部屋まで溶かし出した事に気づいてしまったと感じた。
「ちょっと先生、そんなのんきに構えている場合ではないです! 幸いにもまだ人体に被害は出るわけではないですけど、被害がさらに拡大を…!?」
光代はそんなミカエルを急かそうとするが、そこで彼女の足首に涎で空いた穴から伸びでてきた男の手がヌルっとした感触を足しつつも掴んできた。
「!? だ、誰ですか!?」
「ゲホゲホ!? な、何が起きたんだよ…!? 朝に宇宙海賊に拉致されて両腕がもげて凄くいてえ夢を見たかと思ったら…今度は隣の部屋で目が覚めて変態呼ばわりされて警察に捕まって…それで夢から覚めようと寝てまた起きたと思ったら今度は天上が溶けてゲームも何もかんもが溶かされるなんてよ~~~~!?」
驚く光代の足首を掴んで屋上へ登ってきたその手の主は、小学校時代に“トロミ〜ヒャッヒャ”と言うその年代層を考えても意味不明な笑い方をしていた少年であった。
ちなみに、彼はミカエルの魔法による救助のあおりで燐華の部屋に窓を破って突入してしまった直後、彼女の父である刑事に性犯罪者扱いされて縛り上げられていたが、そこで現実逃避で夢と思って寝ていた所で上から幾つもの部屋を溶かしぬいて現れたメッテルニヒの唾液で、縄や手錠が溶かされてどうにか脱出できたようであった。
ちなみに、刑事はメッテルニヒの強酸性唾液が天井を溶かしぬいて降ってきた時点で、娘を連れて脱出済みであった。
但し、その身は無事であったがメッテルニヒの対無生物特化強酸唾液の影響で、一糸まとわずに粘液塗れという性犯罪者に間違われても可笑しくない状態だった。
「…え、ちょ…あ、あなた…その恰好…!?」
当然、見た目はミカエルと同じ同年代の学生と思われる光代は、裸体の同年代の少年をその男の象徴込みで直視することになってしまい、羞恥を覚えて動作がぎこちなくなってしまったが、そこで彼女と少年の間に誰かが割り込んできた。
「貴様ぁ! 欧州貴族である私の前で婦女に不埒な真似をしようとはいい度胸だぁ!」
「…え? ぶごべぇ!?」
その様子を見て当然と言える思考に至ったメッテルニヒが二人の間へ瞬時に立ち、少年をその頬から勢い良く蹴り飛ばしたのだ。
悲鳴を上げ乍ら少年が宙を舞った先には、数十メートル下に今も救急隊員や警察などが活動中のマンション前の公園であった。
「…あ、あぶなぃ!?」
「アアアァアアアアアアアァアア!!??」
一瞬遅れで気付いたミカエルがしまったという顔をして手を向けた直後、少年は普通に悲鳴を上げ乍ら落下していき、直ぐにグシャっとした鈍く大きな音を響かせた。
「…ふうう…どうにか間に合ったか…」
「「間に合った音だったかさっきのって!!??」」
それにホッとした表情で額の汗を拭うミカエルに、ダニエルと宗一は同時に突っ込んだ。
最後に、清涼剤代わりにギャグ描写(?)も入れてみましたけど…果たしてトロミ~ヒャッヒャ(この笑い方をしていた人の名前が思い出せないのでこれを当分の仮称にします)の運命はどうなるのでしょうか…?