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登校途中に繋がった異世界からやんごとなき方として戻ってきてしまった話  作者: kaioosima
第一章 パイが増えても中身がメリットだけとは限らない
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013 被害の拡大は止められるべきなのに…

今回ので、宇宙海賊騒ぎが(一応は)終了となります。

 ○2023年4月7日昼 日本国 鹿児島県南部 海士臣島(あまとみしま) 海士臣市 ループ橋付近集落上空 某宇宙海賊船船内○


 デスゲームが行われていて、ハイディナが壁を蹴り破って乱入した宇宙海賊船の船底にある倉庫は由が完全に崩壊して、そこにいた人々は上空から地上目掛けてパラシュート無しスカイダイビング状態となった。


「何でこんな事になったんだーーーーーーーーーー!!??」


 その中にはあまりの急展開に見た目もしくは異世界接触前の年相応の恐慌状態と化しているミカエルの姿もあった。


(ミカエルー! 前回の話から今回のが投稿されるまでの間に何日かあっただろ! 魔法で何とかできる方法は考え付いてるだろー!)

「この状態で何をどっかの西遊記が元ネタみたいな漫画なメタい発言してんのー!?」


 そこで二頭身チビキャラ化幽体状態のダニエルがメタい発言で皆の救出を要請してきて、無茶ぶりをされたミカエルの突っ込みがなされている間にも地上は近づきつつあった。

 一方、船が崩壊した海賊達の方はもっと混沌としていた。


「うわーん! 船長が隣りの星系のイーバ・リータガ一家の連中が帝国製最新式魔法シールド装置を買ったことでマウント取られまくったのに腹を立てて最新式のシールド装置にばっかり金を掛けて船の装甲部分の交換時期を先送りしまくってたせいでー!?」

「そう言うテメーこそこの前にシールドの防御力に興奮して出力上げまくってウチの古い装甲が耐えきれなくなって穴あけさせまくったじゃねーかー!?」

「もとはと言えば弟のヤミトーリが明らかに出力があってない装置を買ってくるからー!」

「と、とりあえず着てる服の飛行魔法型着地装置を使いましょう!」

「それは今のシールドの出力を上げ過ぎた時に壊れた装甲を修理する費用を捻出するためにお前が全部売っちまっただろーがー!」

「あ、そうだったーーーー!」

「そう言うあんたこそ装甲の修理費用浮かすために固まってる時は鋼鉄の百倍くらいはあるけど熱にはめっぽう弱い黒金黒糖で埋めるなんてしたくせにー!?」


 海賊達は今回の船の崩壊の責任を押し付け合って落ちながら喧嘩の最中にあった。


「いや、言っときますけどさっき私が蹴りで撃ち抜いたあの魔法式シールドは、中華星雲に位置する明国製のデッドコピーの感じがしましたよ」

「「「「「それが本当だとしてもテメーが蹴り抜いたのが直接の原因だろ!!!!」」」」」


 それを同じく落下中のハイディナが突っ込んだりするが、自分達の船を壊された海賊達から一斉に突っ込み返された。


「ちょっとーーー!? このままだと地面に叩きつけられて死ぬって時に何をいつも通りにしてんのー!?」


 ミカエルがその状態でも平静な真顔を保っている様子に突っ込んだりするが、ハイディナは彼にやや顰めた表情でこう言い返す。


「いや、私は別にエルフで飛行魔法も魔法道具無しで使用可能ですし、貴方もまだ昔みたいな力を完全には取り戻せてはいませんけど、このくらいなら別に身を強く打った程度にしか感じないでしょう」

「…あ、そうだった…あ」


 ハイディナの注意にミカエルは思い出した表情でホッとするが、その目前を魔法式医療カプセルに包まれた状態に両親のボディが通り過ぎるのを見て、直ぐに顔がまた青ざめた。


(ミカエルー! 何とか皆を助ける事は出来ないの―!?)

「な、何か手はーーーー…って! いいのがあった!」


 そこで母であるマリアの言葉で周囲の同じく驚きと恐怖に襲われている人々の姿を思い出したミカエルだが、そこで何か閃いた表情で掌中に魔法で何かを作り出した。


「…こちら側の天におられる我らが父よー、どうか皆が地面に汚い花となった後はその魂の次の行き先はどうか貴方の慈悲に預かれる場所にしてくださいませー…」

(十字架握って死後の救済を願うのはまだ早いだろーーーーー!! 確かに教会系の私立幼稚園には通わせていたけど! と言うかお前って思い出せている限りあっち側では何度も死んでるようだけど天国行ったことはないって話だろ! と言うかヴァンパイアなのに十字架握って大丈夫なのか!? 握ってる手から何か焼けてる嫌な臭いがした煙が出てるぞ!!)


 十字架を魔法で出現させて祈り始めたミカエルに、ダニエルはその十字架に蹴りを入れながら突っ込むという別な意味で非常識な突っ込みを入れた。


「…じゃー、次は…どうか仏様ー皆さんを来世はもっと平和に過ごせる場所に転生させてくださいませー…南無阿弥陀ぶ―――」

「転生系SSの主人公みたいな経験してるからって輪廻転生思想がある仏教形式に縋るなー! まーご近所づきあいで七夕は旧暦と今の暦のどっちでも参加して世話になった人達の墓には行ってるし!! 地元の棚卸とかの行事には料理もって参加してるけど!!」

「―――ぅごふぅ!?」


 それを受けてしかめっ面になったミカエルは次に数珠を具現化するが、ダニエルはそれにエルボウを当ててミカエルの首に打ち付けた。


「ゲホゲホ! そ、そうは言ってもさぁぁ…僕だって向こうでは一度五体が無茶苦茶になる戦いをどうにか終わらせて一週間くらい再生しながら寝込んだ後でようやく目覚めたってところなのに…この人数を助けるなんて細かいのは今の状態じゃ…あ」


 ミカエルが立て続けの突っ込みで身を痛そうに擦りながら視線を彷徨わせていると、今現在の自分達の不時着予定地の光景が目に浮かんだ。

 そこは近場のスーパーに続く登る坂道の途中にある大きなマンションで、その前には大きな砂場が付いた公園があった。


「しめた! “砂よ! その器を広げて落ち着く者達を傷無く受け入れる懐を持て!!”」


 それをミカエルが指さして重い声音でそう命じると、あと数秒で落ちるはずだった公園の砂場が巨大な花を咲かせたように噴出して広がり、彼を含めた落下中の人々を飲み込んだ。


「「「「「キャアアアアアアァアアアアアアアアァアア!!??」」」」」


 落下中の人々はそれを見た瞬間には何が起きたのかわからず、ただ膨大な砂に飲み込まれながらも身が何かへやや強めに打ち付けられる感触を覚えて、驚きの悲鳴を打ち上げた。


「…う…ゥウウウゥウ…こ、これは…助かったのか…?」


 十数秒後、砂塵が収まるとダニエルは不時着のショックで魂が肉体に戻ったのか、落下の衝撃で壊れた魔法医療カプセルの割れた蓋をこじ開けて外に出てきた。


「こ、これはいったい…?」

「皆がここに落ちてくるのはわかったから…この辺りの土壌を滅茶苦茶細かい砂にして更に超ふんわりする柔らかいクッションにしたんだよ。まー…あんまり深い所までクッションみたいな砂にしたからこの辺りの建物の下の地盤がこのままだと危うくなるし…直ぐに戻すよ。ついでに落ちた海賊達の拘束もっと…」


 マリアも同じく幽体が肉体に戻った様子で魔法医療カプセルから出た所で、ミカエルは説明しながら周囲の攫われていた人々をクッション砂場から浮遊魔法で砂の中から少しずつ引き上げ、海賊達を魔法で生じさせた黒く輝く鎖で次々と拘束していった。


「…い、いたたたた…あ、あれ…私…生きてる!?」

「お、おい!? 大丈夫か!?」


 周囲の人々は驚きが引き切っておらず、その身を痛そうに擦ったり、それが酷い人を介抱したりしているが大事には至っていない様子である。


「よ、良かったぁ…! 助かったんだ…って何だこの蛇みたいに動く鎖はぁぁ!?」


 一方、同じく軽傷だけで済んでいた海賊達は始め命が助かっていたことを喜んでいたが、次々と拘束されていく我が身に驚きつつもなすすべなく無力化となっていった。


「…あ、あーーー…どうにか死人は出ずに済みそうだな……ん? 誰か一人足りないようなー…?」


 その様子にミカエルは安堵しつつも誰かが足りない事に気付くが、直ぐにそれは上空の変化で掻き消される。


『この惑星で海賊行為を行っている皆さん、速やかな投降をお勧め…』

「…“ミッドガルドの享楽戦女神”…面倒くさい子がまた来たなぁ…。もうマジでいつもみたいな隠蔽は出来なくなったな…。この星は当分めっちゃ大変なことになる…」


 士臣島高校上空に現れた巨艦が、強すぎず弱すぎずな清廉な光を添えた状態でマンションの上空に姿を現し、その姿とそれから脳内へ直に響いてくる穏やかな声音だが静かに威圧してくる放送に、ミカエルは非常に面倒くさそうな表情を浮かべた。


「…い、いでぇ…な、何だよ…!? 派手髪野郎が夢に出た挙句…更に両腕がめっちゃリアルな痛みで吹き飛んじまうし…更に目が覚めても頭は滅茶苦茶いてえし…!?」


 ちなみにミカエル達が落ちた公園が存在するマンションの一室で、例の元いじめっ子の少年が頭に突き刺さっているガラス片を、どういうわけか無事に戻っているように見える手で抜くのに必死となっていた。

 どうやら彼はミカエルが地面に作り出した魔法式砂場型クッションによる反動が強すぎた結果、この部屋まで打ち上げられて窓を頭から突き破ってしまったらしい。


「…で、でもよぉぉ…夢でよかった…な…??」


 部屋へ飛び込んだ際に頭も強く打っていたらしい少年は視界もはっきりとしておらず、迷い込んでしまっていた部屋を手探りで探ろうとしていたが、そこで手に妙に柔らかい感触を覚えた。


「…う…ううぅぅぅ…い、痛い~~~! な、何が起きたのよーーーーー…!?」


 少年が掴んでしまっていたのは、彼がこの部屋に飛び込んできた衝撃で頭を打って目を回している、この部屋の主である同年代の少女の胸だった。

 彼女はどうにか回っていた目が回復すると、仰向けで倒れている自身に覆いかぶさっている少年の存在に気づき、目が丸くなった。


「…………」


 一方の少年は頭の痛みは引いていき、代わりに掌中には柔らかくて温かい感触と、それとは相反する寒気が手の平以外の全身を満たしていく。


「おい! 燐華(りんか)よどうした!? さっき町中に怪物やら擦群れした不審者が大量に発生したという連絡が来たから休日返上で警察署に行かなくてはいけなくなったこんな時にーー…!?」


 その少女である燐華の父が扉を蹴り開いて現れたのはまさにそんな時であった。


「…あ、い、いや…この…それは―――」


 少年は第三者の登場でようやく意識が現実に戻り、たどたどしい言葉遣いで事情を説明しようとするが、如何せん今の部屋の内部と彼らの視覚的な状況が悪かった。


「き、貴様ーーーー!! この朝っぱらから我が家に窓を突き破って不法侵入して俺の娘で強制性交罪を行おうとはいい度胸だーーーーー!!」

「―――あぁーーーーーーーー!!!???」


 我が娘の貞操の危機と判断した父親は商売道具である拳銃を直ちに取り出して発砲しだし、少年は再び死を濃厚に感じて泣き叫んだ。


「え!? 何であの子の大きな悲鳴が…しかも隣りから…って!? 刑事さん何してんのーーーー!!??」


 その悲鳴のあまりの大きさから、隣りの部屋のベランダで洗濯物を干していた少年の母親まで加わり、海士臣市を襲った混乱は小さなご近所づきあいまで破壊しようとしていっていた。

災害の影響は伝播するものですよね。

それと次回は、ようやく主人公が本当のご身分らしい行動を取る事となります。

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