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登校途中に繋がった異世界からやんごとなき方として戻ってきてしまった話  作者: kaioosima
第一章 パイが増えても中身がメリットだけとは限らない
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012 障害沙汰は避けられるべきなのに…

今回は、前回の終わりで出てきたちょっとグロい(?)描写の種明かしとなります。

 ○2023年4月7日昼 日本国 鹿児島県南部 海士臣島(あまとみしま) 海士臣市 ループ橋付近集落上空 某宇宙海賊船船内○


「はい、これでどうですか?」

「「「「「…………………」」」」」


 ミカエルが口元を小さく血で汚しながら小さな歯を差し出した姿に、船内は海賊と誘拐された人々の関係なしに沈黙へ陥った。


「…あ、あのぉ船長…あ、あの子…どうやら……自分で自分の歯を()()にべりってへし折って取っちゃっみたいですよぉ…」

「「「「「!!!???」」」」」


 それを見た技術系部下の魔法による秘密回線も忘れての少々気まずそうな報告を受け、海賊達の多くが表情を引き攣らせた。


「はアアアァアアアアアアアァ!? どうなってんだぁ!? こいつで生じるのは()()()()のはずだぞぉ!? それなのにどうして実際に怪我人が起きてんだぁ!?」

「わからないですよぉ!? い、一瞬ですが口元に残像が残る動きを見せた所からして…あの少年がジェンガによる呪いが発動する前に歯をむしり取ったとしかぁ…」

「ばかやろぉ! テメエそれでも魔道科学者かぁ!?」

「ひ、ひいい!?」


 その驚きに駆られて船長は技術系の部下達に問い詰めるが、彼らからの返事に納得できなくなると実際に声を荒げてその胸倉をつかんできた。


(…おおー、向こうもいい感じに慌ててきて―――)

「ちょっとぉぉおおおお!? そんな親からせっかくもらった綺麗な体を傷つけるようなことをしちゃったのーーーー!?」

(おいぃぃぃ!? 何をそんな普通にトマトジュースでもを差し出したような表情で母さんから貰った体の一部をむしり取ってるんだぁぁ!?)

(―――あってうおおお!?)


 ミカエルはそれにズレた感じが大分混じる安堵を覚えるが、そこで彼に悲壮な顔をしたピギュミーンがにじり寄り、どういうわけか二頭身のチビキャラ化した風な姿のダニエルが詰め寄ってきた。


(あ、父さん良かった。上手いところこっちが掛けた幽体離脱の魔法が成功したんだね)


 ミカエルはその二人のうち、ピギュミーンは無視してチビキャラ風になった姿で幽体離脱しているらしいダニエルに向き直った。


(いやいや! ハイディナさん達から聞く限り向こうでは別人名義だがスペースクラスで名の知れた魔法使いである息子のお前さんが掛けた魔法らしいから信頼していたが…、だけどこんないきなり自分の体をプラモみたいに扱うような教育を受けてるだなんて聞いてないぞ!?)


 周囲の海賊達には聞こえないミカエルが開いた魔法秘密回線で、息子に掛けられた魔法で幽体離脱した姿のダニエルは説教を続ける。

 実を言うと、ダニエルとマリアがミキのビンで転んで打ちどころが悪くて死んだというのは、二人をこの中で比較的安全な場所へ逃がすためにミカエルが即興で思いついた策であったのだ。

 感じ取れる魂の波長からここの海賊達は人道的な方だと気付いたミカエルは、魔法秘密回線で両親にその事と自分が幽体離脱させられる術を持っているのを話し、二人を安全な状態にするために、向こう側の魔法使いや機器には気付かれない秘匿結界を組み込んだ幽体離脱魔法をかける事を事前に話していた。

 結果、ダニエルとマリアは事故で死んだと見せて、身体は手を出されることはない医者の元に運ばれ、今は息子が掛けた魔法でチビキャラ化幽体の姿で戻ってきたのだ。

 故に、マリアもチビキャラ風の幽体離脱状態になっていたので、二人の間に入って夫を落ち着かせに掛かった。


(まぁ貴方そんなにこの子を責めないで上げて。何はともあれ他の人達には悪いけど私達はこの子のおかげで安全な所に逃がしてもらいながら、この子の頼みで船内の色々な場所を見て回れたんだし…。何カ所か見張りの人やカメラが見当たらない場所も見つけられたし…)


 その上で息子とそれを向こう側の異世界で面倒を見ていたであろう人々に親としての怒りを見せるダニエルに対し、マリアは平時ののほほんとした様子で息子に頼まれていた仕事も絡めて宥めに掛かっていた。

 二人はミカエルに魔法で秘匿された幽体離脱で安全してもらえた代わりに、息子の頼みで脱出に上手く利用できそうな場所や道具などを探してもらっていたので、ここへ戻ってくるのが遅れてしまっていたのだ。


(それにその子が歯を差し出したのは本当だけど、怪我をしたのは演技そうじゃない。これって乳歯よ)

(…え、そうなの…?)


 そして、のほほんとした雰囲気に似合わずにもの探しや洞察力が意外と高いマリアのその言葉が、ダニエルを大人しくさせてその口を丸くさせた。


(…実はさぁこの歯…今朝に起きようとして体を打って倒した本棚から出てきた…子供の頃に抜けたのを瓶詰で保管していた乳歯)

(…じゃあ、お前の歯と唇についている血は?)

(血の方は円門(サークル)向こうの方で意識を取り戻した時に食べたピザトーストのケチャップを胃袋や腸から引きずり戻して復元して血のように見せた偽物)

(マジで便利だな向こうの魔法にヴァンパイアの肉体!?)


 母の仲介を切っ掛けにミカエルの口から出る真実に、ダニエルは先ほどとは別の意味で仰天した。


「お、おい…ピギュミーンよその辺で止めとけ…そいつは単に落とし前ってのを付けただけじゃねえか…」

「…う、うーん…仕方ないわねぇ…でもま~~…、考えようによっては見た目だけじゃない骨のある子が入ってきたってことだしー…負かした後の楽しみが増えて来たわねー❤」


 一方、現実ではピギュミーンが相変わらずミカエルを責め立てていたが、それに居た堪れなくなってきた海賊の船長の制止で、渋々としつつもあとへの楽しみで再び笑みを浮かべながら非難を止めようとしていた。


「…ん? 何だぁ? ここにいつの間にか小さな穴が…?」


 そんな最中、海賊達の一人が自分達のいる部屋の一角に小さいが外へ繋がる穴がいつの間にか出来ている事に気付いた。


(ん? あの小さな穴の形…何だか歯の形に見えるようなー…?)

(あー、あれってー僕が実家からこの乳歯を呼び寄せる際に、間に船の壁があって邪魔だったから魔法で強度を超強化させて海賊に気付かれないようにする認識操作魔法を掛けた状態で移動させてぶち抜いて出来た穴)

(…え、それって船の構造とか通行人の安全性とか大丈夫?)

(あー大丈夫、再び大気圏離脱や元の世界へ戻る前にー…来るから()()()がー…)


 その穴の詳細を息子から聞かされてマリアが不安そうな顔を浮かべだしたその時、それは起きた。


「…うふふ❤ それにしても美少年の血で汚れたこの歯…匂いが少々複雑なのはあれだけど…それを補って余りある香しい気配が―――!?」


 ピギュミーンが抜歯したと見せて偽装している乳歯を手に取って唇に当てようとしたその時、彼の顔に歯ではなく別の誰かの足が叩きつけられた。


「止しなさい!!」

「―――あぶべぇ!?」


 その足の持ち主の裂帛とした怒りの咆哮と同時に、ピギュミーンの巨体は小さな穴が開いていた方角とは正反対の壁にそれが大きく減り込む勢いで蹴り飛ばされた。


「「「「「!!!!????」」」」」


 突然の暴力沙汰に仰天するあまりに言葉を失った海賊達と誘拐された人々の中心に立ったその人物は、ある人物にとってこのような場にはもっとも来てほしくない存在であった。


(ハイディナさん!?)

(こういう状況では一番面倒だから何も知らせずに置いてきた()が一番来ちゃったー!!)


 その人物であるハイディナの登場にマリアは驚いて魔法秘密回線ながら驚きを露わにし、ミカエルは内心で非常に面倒臭そうな顔で絶叫した。


「テ、テメエは確か帝国の“赤金(あかがね)の戦豹”!? テメエまでここに来ていたのか…だがどうやってここまで来やがった!?」

「ひ、ヒイ!?」

「や、止めろ! 撃たないでくれえ!」


 一方、身内を傷つけられた海賊達は驚きつつも怒りと警戒を露わにして、どうやら商売敵的な意味での有名人らしいハイディナに魔法銃などの武器を差し向け、巻き込まれるのではという恐怖で人々は悲鳴で声を取り戻した。


「…どうやってって…あそこに小さくても小さな穴が出来ていたのだからそこを基点にすれば不安定になっていた外部のエネルギーシールドごとぶち抜いてここまで来るなんて簡単ですよ。さすがは貧ぼ…失礼、倹約海賊さんですね。船の保護で重要な装甲までコストカットを徹底するとは」


 それに対してハイディナが怜悧な表情で後ろ指をさした方角には、元々ミカエルが自身の乳歯を呼び寄せた名残である小さな穴が開いていた箇所が、外側からぶち抜かれた証明である大きな穴が外まで一直線にて続いている状態に激変していた。


「…憎たらしい説明をしやがって…! だがまあここへ一人で来やがるたあご苦労な事だぁ! ここでテメエに今までの恨みを込めてぶち殺して俺達の名を上げる踏み台にしてやるぜ―――!?」


 海賊船船長は自分の船を無残な姿にされた怨みを生じさせつつも、それも上乗せした過去にあるらしい因縁も込めて魔法銃をハイディナに向けたが、その引き金が引かれる前に彼らの身は浮遊感に襲われた。


「―――え…!?」


 それに戸惑いつつも意識が引かれた船長が足元を見やると、そこには崩壊した海賊船の船底と、それで露わになって遥か下に見える海士臣島の光景が広がっていた。


「「「「「…ええええええええええええええええええええええ!!!!???」」」」」


 続けて同じ状態になった他の海賊達や攫われた人々がそれに気付いて驚きの絶叫を上げた直後、彼らの身は重力に引き摺られ始めた。

今回のグロっぽく見えた描写は、結局は主人公のチートじみたイカサマで嘘なのがわかりましたけど、今度の話の最後でまた大変なことになりそうですね。

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