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Fゲーム  作者: 塚波ヒロシ
21/23

第21章 はなびら

こんばんは、こんにちは、おはようございます!

毎度おなじみ流浪の物書き事、塚波です。


今回も2章分を投稿いたします。

さぁ最後の最後に大きなトラブルに陥った

チームブレイバーです。彼らは優勝出来るんでしょうか?


是非ともお楽しみくださいませ!

第21章 はなびら


 動画を見ているときに何かの拍子で動画が停止してしまう時って一瞬何が起こったのか気が付かない事があると思うんだけど、この時の僕は正にソレと同じだった。

 さっきまでいい雰囲気で話し合っていたミュートが彫像のように全く動かなくなったかと思うと、その輪郭が不気味に掠れてジワジワと色を失っていき、ついには「ザッ」とノイズ音だけ残して跡形もなく消えてしまった。

 その数秒にも満たない間、僕は何のリアクションもすることなくただただその変化を見届ける事しか出来なかった。

 はっと我に帰り、ダグに通信をする。

「ダグ……ミュートが消えてしまった……」

「ザッ……なんて言ったんだ?よく聞こえなかったんだが」

「ミュートが消えちまったんだ!」

 2回も言うことにさえ苛立ちを感じた僕は、ダグに怒鳴り返すように同じ事を伝えた。

「……どう言うことだ?詳しく話すんだ」

 一拍置いてダグの冷静な回答が来る。僕はソレで幾分か呼吸を整えられた。今度はゆっくり目にミュートが突然消えた状況をダグと、その隣にいるはずにミカに説明できた。

「ロム、ダグ、私が一旦ピットの本体に意識を戻してミュートの様子を見てきます!」

 説明が終わるが早いか、ミカが反応した。

「その……大丈夫なの?」

 僕は色んな意味でダグ達に大丈夫なのかと聞いた。

「今一番心配しなくちゃいけないのはミュートの事だ。こっちはエンゼル兄弟を突破してるから俺一人でも問題ない!」

「今動けるのは私だけです!ダグもロムもレースの集中してください!」

 二人の強めの口調に、寧ろ「お前こそ大丈夫なのか?」と聞かれているようだった。

「分かったよ……。ミカ、ミュートを頼む」

「了解です!逐一通信しますから!」

 言うが早いか、通信が切れるノイズ音が聞こえた。恐らくダグの車のボンネットからもミカの姿が消え、彼女の意識はピットに横たわる自分の身体に戻ったに違いない。

 

 苛立ちは直ぐにドライビングに影響をする。自分でも分かるほどハンドル操作に悪影響が出てきた。ミカの通信を待つ間だけでも合計で数秒の遅れが発生した。

 いかに僕がミュートを必要とし、彼女が同乗して居ないだけでここまで力が無くなるのかと情け無く思う。チクショウ、何が起きてるって言うんだ!

「ザッ……ミカです。二人ともいいですか?」

 待望のミカからの通信!ちょっと驚いた僕は、少しだけ速度を落としてしまった。

「いいぞ、ミカ。報告してくれ」

 ダグも通信に入って来るが、随分落ち着いた口調だ。余裕がなく一言も発せない僕とは大違いだ。

「落ち着いて聞いてくださいね……。ミュートはピットに居ません。恐らく……」

「……拐われたとか……?」

「……はい。残念ながら」

「誰に!なんで!何の目的で!」

「落ち着けロム!……ミカ、分かっていることを報告しろ」

 僕の怒気交じりの通信を制し、ダグがミカの話の続きを促す。僕は今にも真っ赤に染まりそうな曇った視野で必死にコースを攻略し続けた。何でミュートが誘拐されたんだ!

「誘拐したのは恐らくシルバーナイトのチームです。私がピットに戻ると同時刻に、彼らはピットインし、何故か助手席にナビゲーターを乗せました。スーツとメットで変装させてましたが、背格好からミュート本人だと思います」

「な……何でまた……」

「そりゃお前、ロムを優勝させたくないからだろうな」

「そんな!俺たちみたいな弱小チームにそんな大それた妨害をするのか?」

「いいえロム、あなたのタイムはシルバーナイトのそれに迫る勢いだって気付いていましたか?彼らがあなたを脅威とするには充分ですよ」

「そんな……。じゃぁ僕とミュートが速かったからミュートは誘拐されたって言いたいのか?」

「そういう意味では……」

「いや、ロム!そう言う意味だ!お前はシルバーナイトをビビらせて、誘拐させるほどのレーサーになっているんだ!」

「ダグ!ちょっといい加減に……」

「ロム!ミュートを取り返してこい!奴に追いついてミュートを取り戻せば、シルバーナイトに勝てるって事じゃないのか?そう言ってるんだろ、奴自身がよ!」

「ダグ!冷静になって……」

「ロム、お前の後ろは俺に任せろ!まずは奴に追いつくんだ!ミカはロムの車のサポートをしろ。俺の方のサポートは片手間で構わない。まずは奴に追いつくことを考えるんだ!」

 ミカの通信を、通信機の音声が割れるほどの大声でダグががなる。もうこうなったダグを止める事が出来ないのは僕もミカもよーく知っている。

 ほとんど溜息の様な声でミカが了解を言う。

「二人とも……すまん!」

「勝ってから言え……」

 通信が消えると同時に、ミカを漫画チックにディフォルメしたキャラクターがコースナビゲーションと共にフロントガラスに表示されたのはその直後の事だった。


 ミカはスタイル抜群で、誰もが振り返る美人さんだ。正直なんでダグにナンパされほいほい彼女になったのかが未だに不思議でならない。

 そんな彼女だが、二台の車のナビゲーションとミュートの行方調査を同時にしている為にかなりのメモリーを使用しているのだろう、レッドブルのフロントガラスに表示されている彼女の姿は、首から上を饅頭のようにまん丸にして、髪型だけでやっとミカだと判別出来るほどデフォルメされている急造アバターだった。流れてくる音声も何となく機械で合成された簡易的なものになっていた。

「コノママ カソクシテ クダサイ」

「了解!もう最後のバトルゾーンが見えてくる頃だね」

「シルバーナイトハ ピットインデ モタツイタタメ バトルゾーン チュウバンデ オイツクコトガ カノウデス」

「そうか……。よし、少しでも差を縮めよう!ミュー……ミカ、頼んだぞ!」

「リョウカイデス! ザンダン カククドウブ チェック……」

 僕もこの長い直線でナビや順位を確認しておいた。今の状況はこうだ。


230キロ地点からバトルゾーン

一位 シルバーナイト   200キロ地点付近

二位 スーパードラゴン  190キロ地点手前

三位 レッドブル     185キロ地点付近

四位 ゼータ       180キロ地点手前

五位 エンゼルホワイト  165キロ地点付近

ミカの予測 1〜3位が240キロ地点付近で最接近

コース全長 250キロ


 最後の10キロで全てが決まる展開となってきた。ただここで僕に不安がよぎる。シルバーナイトに追い付いたとして、どうやってミュートを奪い返すかだ。プランなんて全く考えていないのに、残りの距離と時間がどんどん無くなってゆく。

 幸いバトルゾーンまではアップダウンこそあれただの直線コースだ。今のうちに考えておくのもいいかも知れない。僕は今や首だけになったミカに話しかけた。

「ミュートの状況はどうなってる?」     

「……ワカリマセン シルバーナイトノ クルマニ ノッテイルノハ タシカデスガ」

「こちらからの通信とかはできないのかい?」

「ハイ タメシマシタガ デキマセンデシタ」

「どうやって取り戻そうか、手を考えないと……」

「ソレナンデスガ 1メートルナイニ セッキンスレバ ナントカナリマス」

「……え?何とかできるの⁉︎」

「カナリ キケンデスガ……」

「……危険は覚悟している。聞かせてくれ……」

「リョウカイシマシタ プランヲ セツメイシマス」


 ミカが提案してきたミュート奪還プランは僕に冷や汗をかかせるには充分な程に危険極まりないモノだった。宝くじで一等を当てるよりも難しいんじゃないかと思えてくるほどだった。

「デモ コレシカ ナインデス」

 うちのチームで一番の常識人で通っているミカが言うからには実際にこのプラン以外には無いんだろうが……。それでもあまりに危険すぎた。特にミュート自身が……。

「……了解だ。とくかくシルバーナイトに先ずは追いつこう!」

「リョウカイ! カソクシテ クダサイ!」

 最終エリアに近づくにつれて景色は一変していた。市街地はどこに消えたのか、両脇は垂直に切り立った岩の壁が延々に続き、道は踏み固められているとはいえ砂利だらけだ。熱い日差しでカラカラに乾燥した砂が白く分厚いカーテンになり視界を遮っている。ワイパーをフル稼働させても瞬時にフロントガラスは砂に覆われてしまいもしミカのサポートが無ければこんなスピードで車を走らせたくはない環境下だ。

 僕はミカが標準したラインにレッドブルを乗せて、エンジンを目一杯回転させ始めた。この道の先に囚われているミュートに辿り着くために。

 何分走ったかさえも自覚がない程気が急いていたんだと、先行車の土煙が見えてから始めて気付いた。恐らくウミさんのスーパードラゴンだと思われる高い土煙がハッキリと見えた。それを裏付けるようにミカがアナウンスする。

「ゼンポウ 700メートルサキニ ドラゴン」

「ソノ500メートルサキ シルバーガ ソウコウチュウ」

 レトロなカーナビのようなミカの音声の途中で僕はアクセルを踏み付けるようにしてレッドブルを加速させる。

「ダメデス! ココデノカソクハ タイムロス デス!」

「でも!」

「ダメデス! アセラナイデ!」

「……分かった。ミカ、プランを再提示してくれ」

「ハイ…… プランヲサイテイジ レイセイニ ショリ シマショウネ」

 焦る……。とにかく頭が熱くなる。パニックとは違うけど、もう手の届くところにミュートがいるかと思うと運転が乱雑になり今にもアクセル全開で奴に追突してやりたい衝動に駆られる。

 そうこう言っている間に僕はスーパードラゴンの隣に並んでいた。違和感がここに来て持ち上がってきた。

 思わず左手を並走するスーパードラゴンのコックピットに目をやると向こうもコチラを見ながら何やらジェスチャーをしてきた。……電話をかけるような……

「ドラゴンヨリ ツウシンガハイッテ マス」

「繋げてくれ」

「ザ……ロム!良かった!やっと話せるよぉ」

「ウミさん!どうしたんですか、こうもあっさりと隣に付けて……」

「ミュートの事、コッチも知っているんだよー」

「えぇ⁉︎でもどうして……」

「ま、組織力ってヤツ?本当はイケナイ事なんだけどボクとの勝負は次に回そう。今はミュートを取り返してきて!」

「でもそれじゃあウミさんが……」

「良いって事だよ。全力じゃないロムくんと戦ったって面白くないよ。さぁ行った行った!」

「……ありがとうございます!」

 彼女はそれには応えず、代わりに自分のスピードを少し落とし道を開けてくれた。その先には砂利だらけの上り坂が立ち塞がり、道にはまだ濛々と立ち込めている砂煙が揺らめいている。

 低く狭いレッドブルの視界からは見えないけど確かにヤツの気配を捉えた!この砂煙に先にシルバーナイトが居る!ウミさんのお陰で接触予定時間を大きく短縮出来たみたいだ。ミカがテキストでミュート奪還プランのタイムスケジュールを更新し、もっと有利な状況を提示する。これなら確率的には「コンビニの500円クジの大当たりを引き当てる」程度に下がったんじゃないかと思う!

「コノ ダイジャンプデ シカケマス!」

 ミカもこの好機に興奮したのか、電子音声に熱が入っているようだ。

「了解!30秒後に仕掛けるぞ!」

 ミュート……無事でいてくれ!

ここまでお読み頂きましてありがとうございます。

引き続き22章もお楽しみくださいませ!

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