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Fゲーム  作者: 塚波ヒロシ
19/23

第19章 ゲットワイルド

毎度おなじみ、週末に向けての投稿です!

今回も19 20章を連続投稿致します。

第19章 ゲットワイルド


 Fゲームっていうのは、今僕たちが必死に戦っているモーターレースや、それこそ人間一人で走るマラソン、サッカーや野球、変わった所だと団体で戦うクイズ大会、将棋にチェス大会などなど。それこそ「娯楽」に該当する物は何でもその中で出来るんだ。しかも、基本的に無料で。

 それこそ最初の頃は友達同士でゲーム空間に専用のデバイス(僕たちが授業で使っているメガネのもっと馬鹿でかい、まるで大きめの双眼鏡みたいなものだったらしい)を使って意識や感覚を持ったまま入り込み、そこで必要な物を用意して遊んでいたんだそうだ。

 要は道具や場所をタダで貸してもらっていただけだったんだ。通常空間にも当然車もチェスセットもあるからその意味ではあんまり違いは無い。

 じゃぁなんでワザワザゲーム専用のサイバー空間でやっているかというと、いくつかの理由がある。

 一番の理由、メリットは「この空間内では死ににくい」ってこと。通常空間に比べて安全脱出装置システムが敏感に設定されているんだ。前にも言ったけどこの船の中のサイバー空間内での1番の死因は「ショック死」 つまり「あ、僕死んだわコレ」と強く実感してしまうと本当に死んでしまう。でも、ゲーム空間内では「死を実感」する前に通常空間に意識と感覚を脱出、ログアウトさせられてしまうんだ。だからゲーム内では安心して「危険行為」ってのができ、そのスリルを十二分に体感することができる。まぁソレでもごく少人数が「間に合わずにショック死」することもあるんだけどね。

 二番目に「アバターを使用できる」事かな。カーレースの場合には殆どないんだけど、実際の自分の姿とは事なる、全く別の姿を設定することができるんだ。ウミさんがレース内では背の高い男性の姿になっている例が分かりやすいかもしれない。因みにアバターはゲーム内での身体そのものを言い表し、服装や髪型、肌や目の色などは「スキン」と言って区別している。

 コレは無料で手に入る物ってのはとても種類が少なく、殆どは買わないといけない。それ専用のショップがいくつもあるぐらいで、僕たちに世界のファッションブランドの一種にもなっているんだ。当然、地球の映画やアニメのデータを再現したアバターやスキンはかなりの高額だし、ウチの母さんみたいにオリジナルデザインとなると、制作に時間とお金も結構必要となってくる。実は僕のレーススーツも金額を聞いたら、目玉が飛び出る金額だったりする。

 三番目に「空間のデザインは自由にできる」事だ。

 空間のデザインにも無料で手に入る物がボチボチあるし、有志が勉強でデザインしたものが配布されているなんて事もある。

 雪に埋もれた山小屋でカードゲームをしたり、青い海の広がるビーチでスイカ割りもできる。

 このレースコースもデザインするのにどれだけの時間と費用がかかったかの違いはあるけど、同じ様にして作られたわけ。さっきの線路の砂利もどっかの誰かがデザインした物なんだろうね。

 第四に「物理法則を調整する」事が出来る。

 コレは調整するのにちゃんとした知識や技能が必要で、僕みたいに成績不振の学生にはチンプンカンプン。ま、現象としてぐらいなら分かるよ?

 例えば「重力が小さい」とか「水の中で呼吸ができる」とか「火が熱くない」とかそういう事が設定できる。

 無重力空間でダンスをしたり、水中レストランで食事をしたり、炎を全身に纏わらせてカッコよく登場するとか。実際スポーツゲーム以外でもよく使われている利点だね。

 そんな……一言で言えば「何でもアリの遊び場」で「命の心配が限りなく少ない」状況なもんだから、いろんな企業が星の数ほどのゲームを創り出した。

 モーターレースでさえ数え切れない数の企業がゲーム……正確にいうのなら「レースコース」を創り出してきた。今走っている、昔の海外の街並みのコースもそうだし、ただただ広大な砂漠しかないラリーコースや、まるで全部がネオンで出来ているようなSFチックなコースなんかもある。

 ゲームの種類もカーレース、バイクレース。果てはスペースシップでレースしたり、巨大な戦艦での海上戦なんかも出来る。想像できる全ての遊びが出来るってわけだ。

 ……ただ一つだけ大きく規制がかかっているゲームがあるんだ。もう分かるよね?「殺人が出来るゲーム」。流石にコレは規制がかかった。

 だってそうだろ?「リアルと区別がつかない」のに「命の心配が少ない」んだから。遊びで人を殺しても問題がない……流石にコレには問題があった。倫理的にね。

 なのでこういうゲームも含めて「人がゲーム内で傷つく」「肉体が切断されたり、破壊される」シーンやその部分ってのは、まるで大昔のコンピューターグラフィックのように緑の蛍光色のワイヤーフレームで表現されて、内臓や筋肉の内部や骨、出血は描画されない様になっている。それに生身に肉弾戦でバトルするゲームだとアバターでのプレイが推奨される様にもなった。

 ただ、意外にも船の中の人間たちは「ゲームと現実の区別がつかない」なんて事にはならなかった。

正しく言うのなら、「ゲーム空間」と「通常の空間」だね。どっちも電脳空間なんだけど。

 この事はひとえに、アイズ達が行ってきたカーボンへの教育の賜物だと僕は思っている。

 今現在の僕たちが「講義」として受けているいわゆる学校教育なんかでも、小さい頃は勿論の事僕の年齢になっても「ゲーム空間と通常空間との違い」や「仮想空間での生活様式」なんて名前の授業がたびたび行われるほど熱心だ。

 一度父さんに、なんでこんな授業が何度も、いつまで経っても行われるかを聞いた事がある。

 そうしたら、チョット寂しそうにこう答えてくれた。

「結局のところ、電脳空間のプログラムでしか無いアイズと、ちゃんとした肉体を持つカーボンは別の生物だし、アイズはそれがすごく残念で悲しいんだ。ただそれでもアイズはカーボンに自分たちのことをもっと知って欲しいし、仲良くなりたい。だから分かりやすく講義って形でみんなに教えているんじゃないかな」

 

 電脳空間でしか生きられないアイズと、電脳空間は本来の生きる場所では無いと心のどっかで感じているカーボンは、真の意味で心を交えることができないんだという事を言いたかったんだと思う。 

 僕じゃその残念さとか寂しさを本当の意味で理解は出来ないんだろうなと知って、こんな質問は二度とすることはなかった。

 でも僕はちゃんと両親と心を通わせる事は出来ていたんだと思いたいなぁ。もちろんミュートとだってもっと仲良くなりたい!


 さて、ここまで余談を話したんだからもう少し付き合ってもらおうかな。

 例えばこんな話はどうだろう。この世界でのお金の話とか。嫌いじゃ無いだろ?

 実はこの船に乗っているだけで「お金」が手に入るんだ。文字通りの意味でオッケーだ。

 もっと詳しく言うと「この船に乗っている全ての人間(カーボンもアイズも全員)は「宇宙飛行士」として地球の政府に雇われている。まぁ、まだ受精卵の状態のカーボンや起動していないアイズは除かれるけどね。

 だから僕もダグもミュートもミカも、みんな既に就職をしている事になる。さぁ僕たちの給料明細はお幾らでしょう!え?ハンマープライスって何のかけ声なの、ミュート?

 僕たちの給料は、なんとゼロ!そう1円も貰っちゃいないんだ。労働基準法は無いブラック企業に勤めている……ってのは冗談で。

 僕たちの給料ってのはこの電脳世界の使用、生命身体の保証、毎日の最低限の栄養補給などなど……この船で生きてゆくだけにかかる費用に相殺されてしまっているんだ。

 単純な話、僕たちは毎日寝ていても最低死ぬことはないんじゃ無いかな。試した人は居ないみたいだけど。でもアイズの父さんは旅行に出るまでは毎日働いていたし、母さんは僕に小遣いをくれたし家計のやりくりもしていた。つまり、この世界には「お金」ってのがちゃんと存在するし、金持ちと貧乏人も存在している。

 お金を稼ぐには仕事をしなくちゃいけないのは誰だって分かるよね。

 この世界での仕事なんて地球でのソレと大差はない。ただ電脳空間の中だって事だけなんだ。

 木を切って木材を作る人、木材を使って家を建てる人。野菜を作る人に調理をする人。ショップの店員に商品を配達する人。銀行員、役者、警察官……。地球の頃と比べて必要がなくなった職業もあるだろうし、新しく生まれた職業もある。そう、例えば「ゲーマー」とかね。


 ゲーマー……最初の話に戻っちゃうけど、Fゲームでの大会やレースに参加して賞金を稼ぐ人たちの事をいつしかそう呼ぶようになったんだ。

 父さんの話だと、昔は単にゲーム好きな人を指す言葉だったらしい。テレビに繋いでピコピコと電子音を奏でながら、手のひら大のコントローラーを握りしめてキャラクターや戦闘機を動かしてステージをクリアしてゆくビデオゲームなんかに熱中していた人たちの事だ。まぁ時代によって差異はあるけどね。

 でも、そんな個人でゲームの技能を高めていたゲーム好きの人たちにも転機が訪れたんだ。

 プロゲーマーの誕生とコンピューターネットワークの発展拡大だ。

 僕たちの乗っているこの巨大宇宙船が地球を旅立つ数年前から、ビデオゲームをスポーツに見立てて行われる大会が地球のいろんな国で行われるようになった。大会の大小にもよるけど、そんな大会には大抵優勝賞金が付き物だったんだ。

 そんな賞金付きの大会に参加するのは、それこそそのゲームに関しては世界一を自称する猛者たちばかりだったんだ。しかもそんなゲーム大会はテレビや有料ネットチャンネルなんかで放映されるようになりだすと、いろんな企業がゲーマーたちのスポンサーに付き、給料を払ったり大会用の衣装や諸々を用立てるようになったんだ。

 あっという間に「ゲームでお金を稼ぐ」って文化は世界中に世代を超えて拡散した。それこそ下手でも面白いゲームプレイをネットの無料チャンネルで自分で録音した実況を交えて放映する事でもお金を稼ぐことが出来る「いい時代」が訪れたんだ。まぁ当然そう思わない人もたくさん居たとは思う。

 そんな矢先に地球脱出計画が始まった。大人たちは自分たちの記憶をアイズたちにコピーし、その子供達はカーボンとしてこの電脳空間で産声をあげる事になった。

 アイズの元となった大人たちは当時の年齢が20から40代と考えると、きっとゲームに夢中だった人たちだったみたいだ。それはミュートと出会ってからの、あの部屋を解放してからの両親の話を聞いても間違いはないんじゃ無いかな。

 そんな「世界中の親たち」はこの惑星レベルでの移民の話を聞かされて、希望とともに一抹の寂しさも感じたらしい。

 つまり「親の趣味を子に伝えられない」って事だ。


 確かにこの電脳空間ではありとあらゆるモノが再現できる。チェス盤だってレースカーだって、宇宙戦艦だって!

 ただし、元になるデータさえあれば……。これが大問題だったんだ。

 一つの家族がこの宇宙船に乗せられる「データの量」ってのが決められていたんだ。いやらしい事を言えば、それは地位や名声やお金の量によって増やす事はできたんだけど、それでも上限は決まっていたんだ。

 その決められたデータの量の中で、自分たちの家、家具、衣服などなど身の回りのモノ何もかもに割り振らなければならなかったんだ。

 真っ先にそのリストから漏れたのは「趣味のモノ」だったみたいだ。釣り道具やタバコ道具、ぬいぐるみに自転車、高価なお皿に……そう車やゲーム、書籍に映画やアニメだったんだ。

 それでも両親たちはちょっとは期待していたらしい。有名な「作品」ってのはきっと故郷の国が共有データとして乗せているはずで、いつか電脳空間内で買い戻すことができるはずだってね。

 確かに故郷の国々は、それぞれ自国の有名なモノをデータとして乗せていた。例えば「400年前を題材とした映画」とか「大昔の戦争で大活躍したプロペラ飛行機」「自国を舞台とした演劇の台本」「自国にしか生息していない動物の生態」とかね。

 何となく分かってきたんじゃ無いかな?そう「子供たちにはちょっとつまらない」お勉強のデータばかりだったんだ。

 中には気の利いた当時の政治家が、自分の大好きな作品のデータも入れていて、今の僕たちの世界の住人たちにはバイブルみたいになったSF映画や恋愛小説なんかもある。例えば毛むくじゃらの宇宙人が平和な家庭に居候するドラマとか。そこの飼い猫と仲が悪いんだけど、いつも悪戯に失敗するところとか僕は大好きなんだけどね。ミュートはそうじゃ無いみたいだけど。

 でもね、そんな普通は「リストから外す」はずのデータを大金を叩いてまで、この宇宙船のハードディスクに乗せた酔狂な人間も結構な人数居たみたいだ。そうウチの両親みたいにね。

 そんな人達の殆どはみんな同じ様な思考になる。

「自分に持っていない、新しいデータが欲しい」ってね!

 そうなるとどうなる?経済学を習っていなくたって分かるよね。

 そう、データを売る人が出てくるんだ。

 貴重なデータがオークションに出品されると、値段はドンドン釣り上がっていった。それこそ精密な模型の車の金額が、今年モデルの実車の金額を軽く超えてしまうほどにね。

 たかだか模型の車に?と思うかも知れないね。でも、ここは電脳空間なんだ。お金さえあればその模型の自動車に乗って走る事ができるって事を忘れちゃいけない。この世界はデータこそが実物なんだ。

 でも、そんな大きなデータを手に入れてしまうと、今度は自分の持ちデータの容量がなくなるかも知れない。すると今度は自分のコレクションしていたデータの中で不要なモノを売ったりする。

 それをまた誰かが買ったり、交換したりして上手いこと経済が回るようになってきた訳だ。


 でもそんなデータ経済の中、船の中央コンピューターがとんでもない提案をしてきたんだ。

「個人のデータ容量を増やせます」ってね。

 そりゃ皆んな飛びついたさ!データのコレクターだけじゃ無い。いい家に住みたい人、ペットを飼いたい人、奥さんの車が欲しい人……。みんなが使い道が少なくなった貯金を吐き出して、データ容量を求めたんだ。

 確かにデータ容量の上限アップはお金で何とか出来たんだけど、コンピューターはもう一つ面白い手段を提案してきたんだ。

「船が主宰するゲーム大会の優勝賞品にします」

 コレこそが、僕たちゲーマー達が命と貯金を削ってまでゲームをする一番の理由なんだ!

ここまでお読み頂きましてありがとうございます。

続けて20章もお楽しみください!

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