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Fゲーム  作者: 塚波ヒロシ
18/23

第18章 Special Drivin Date

引き続き、第18章をお届けします。

いよいよ最終ステージが始まりました。

チームブレイバーの勇姿をご覧ください。

第18章 Special Drivin Date


「セクション10から50、チェック……」

「了解……。全システムクリアー……」

 ファンサービスの時間も終わり、ミュートとミカはピットに戻った。レッドブルの助手席にいるミュートは車内ディスプレイが映し出すホログラムに過ぎないけど、それでもいつも通り彼女は綺麗でグラマーだ。

 レッドブルは僕たちの遠い昔の出身国の車ではなく、いわゆる外国産車のため、フェアレディとは違い左ハンドルだ。乗り初めはその感覚の違いに難儀したのを覚えている。

 それにひたすらに天井が低く、まるでベッドに仰向けに寝ている様な姿勢で運転をする為、メットを被っていても首から上がキツい。常に顎を引くような姿勢をレース中ずっと続けないといけないからだ。

 でも、それでもコイツは間違いなく僕の愛車で、最強の武器だ。コイツと僕とミュートがそろえばなんだって出来るはずなんだ。

 そう思いたい。例え敵がそれ以上のマシーンで、数段格上のレーサーだとしても……。

「レッドブル、通信遮断。窓を全てスモークにして……」

 突然隣のミュートが変な事をレッドブルに音声指示し始めた。

 外からの光が途絶え、外部からの音声も聞こえなかった。橙色の小さな車内等とコンソールの鈍い光だけが僕とミュートをボンヤリ浮かび上がらせているだけだった。

「……また気弱になっちゃった?」

 ミュートがサイドブレーキを乗り越え、上半身だけ僕に覆い被さってきた。そのまま折角被ったメットの留め具を外して脱がせてしまう。

「……ま、私がケンカふっちゃった訳だし……」

「いや、ミュートは被害者だよ。アイツにあんな事されて……」

 話ながらもミュートはどんどん僕の上ににじり寄って来て、とうとう僕の腰の上に跨がる格好になってしまった。ホログラフだから重さも実体もないけど、僕の腰あたりがなんか熱を帯びているような感覚に捉われる。

「ねぇ……。勝つ為のおまじないしてあげよっか……?」

「おまじない……?」

「ほら、まえにロムが言ってたでしょ?」

 そう言いながらミュートは着ていたブルーの上着の胸のホックを外し始める。

「なんか言ってたっけ……」

 ミュートの行動の意味が全く分からず、まるで金縛りにでもなっているかのように、僕はただ彼女の行動を見つめるだけだった。

 薄明かりの中に映し出されるミュートは場違いに艶かしく、すごく綺麗だ。

 上着の前を全開にし、長い金髪をさっと掻き上げると、テラテラと白く反射光を捉えたロゴ入りのチューブトップのブラが見えた。

 ミュートの大きな胸に歪に引き伸ばされたロゴは蛍光色で描かれていたので、こんな弱い光量でも淡く緑色に光を放っている。

 ミュートはそのロゴの中央あたりを片手で握り締めると、それをゆっくりと首の辺りまで引き上げ始めた。

「ちょ!ミュート!」

 僕の静止が聞こえなかったのか、完全にブラは引き上げられ、僕の目の前には二つの乳房が完全に露わになってしまった。

「どう……?結構大きいし、形も良いと思うんだけど……」

 自分でブラを捲り上げたままの格好で僕に話しかけてはいるが、ミュートの目線は完全に明後日の方向を見ている。こんな薄暗さの中でも彼女の顔がレッドブルの車体の様に真っ赤になっているのは明らかだった。

「あと、コレもだよね……」

 そのままの体勢で僕に覆い被さってきたミュートは、触れないはずなのに僕の顔を両手で包み込み、ゆっくりとキスをして、そのまま僕に抱きついてきた。

 ホログラフなのできっと彼女の身体のどこかは座席や僕の体にめり込んでいるんだろうけど、抱き付かれている僕はミュートに、まるで拘束されたみたいに身動きを取ることができない。

「私……、ちゃんと言ってなかったね」

「何を?」とカラカラに乾いた喉で短く返事をするのがやっとだ。

「ロム……あなたが大好き。それこそ出会ったその時から……だからね、あなただけに私の初めてを全部あげたいの……」

「僕もミュートの事が大好きだよ……」

「うん、知ってる。この前の録音データ、何回も聞いたし」

「ちょ!消してないの⁉︎」

 ミュートは僕の声にビックリして身を引き、僕の腰に座り直した。上半身を起こしたので大きな胸がたゆんと揺れた。

 彼女は胸の下で腕を組んで、意地悪く笑うのだけど、もうエロい姿と意地悪さが可愛いのと、突然の告白で僕はどうせれば良いのかパニックになってきた。

「あんな情熱的な告白だもん!もう毎日聞いてニヤニヤしてるわよ」

「はぁー。もうどうにでもしてくれよぉ〜」とミュートの霰もない姿から顔をそらす。まぁ、目線は彼女の胸に釘付けなんだけど。

「あらどうにしても良いんだ!じゃぁ私を1番の恋人にして!あと……」

「レースに勝って欲しいんだろ?」

「うん!そう!あなたが勝ったら、そうね……」

「……卒業させて……」

「へ?」

「童貞卒業させて下さい、お願いします!」

「……私の処女も飛んで消えるんだけど!」

「初めてを全部くれるって言ったじゃん!」

「そう言う意味じゃ無くって……あぁもう!分かったわよ!もうオッパイも見せちゃったわけだし………」とミュートは口を尖らせて残念そうに愚痴る。

「よーし俄然やる気が出てきた!シルバーナイトもスーパードラゴンもぶっちぎってやる!」

「ほんと、男の子って単純よね〜。ま、ここまで来たらノーコンテニューでクリアーよ!

 相変わらずなんのことを言っているのか分からないけど、僕もミュートも今まで通りの元気が出てきた。男なんてこんなものなのかも知れない。女の掌の上で転がされて、チョットエッチなことがあるとすぐに立ち直れる。

 それでもいいや。間違いなく僕の彼女は一番だってのがよーく分かった。そんな彼女を全力で守る事に迷いはどこかへ吹き飛んでいった。


「ダグ、そっちの準備は終わったかい?」

「そりゃこっちのセリフだぞ。いきなりミュートと作戦会議なんてしやがって」

「ごめんごめん。いろいろ話し合っていたよ。そっちも作戦はまとまったかい?」

「うんにゃ。ずっとミカとイチャイチャしていたよ」

「な!おいおい大丈夫か?」

「昨日まで散々話し合っていたからなぁ。いまさら付け加えることなんてないさ。俺たちはとにかくお前のレッドブルに着いて行って、後ろからちょっかいを出してくる奴らから護衛するよ。お前はドラゴンと特にシルバーに全力で対抗しろ。こっちがクラッシュしようがリタイアしようが気にするんじゃないぞ」

「もちろん、分かってるさ!」

「ミュートの為にも優勝するんだろ!」

「了解してるさ、ボス!」

「頼んだぞ、エース!」

 僕とダグはお互いを映したワイプ画面に向かって力強くサムズアップする。メット越しだけどお互いのモチベーションの高さを確認できた。その証拠に傍で見てたミュートも満足そうに頷く。

 始まるんだ……。僕の人生で一番負けられない勝負が……。


 ダグのレーサーとしてはおそらく僕の少し下ぐらいなんだと思う。

 これは決して曖昧な考えのもとに出した物じゃなく、実際に同じ車で同じコースを何回も走ったシミュレーションの結果から導き出した者だった。

 ただ、これはあくまで「ナビのアイズがいない」「車はノーマルのフェアレディー」っていう条件下でのことだった。

 このレースが始まってすぐの、ビル街の下り坂を一気に駆け降りるセクションでのダグの動きを見て、その考えは一気に吹き飛んだ!

 間違いなくこのセクションでのダグのマシーンコントロールはシルバーナイト以上で、実はこのレースが終わってからの話なんだけどダグは「ファーステストスターター賞」を貰っている。

 ダグのゼータの動きは僕から見ても異常だった。恐らく連続してドリフトとスピンターンを駆使し、たった700メートルの直線で一気に4台を抜き去った。

 確かにゼータは最高速度よりも加速度に比重を置いたセッティングにしているとは聞いていたけど、こんな動きがモーターレースで、いやそもそも車でできるとは思わなかった。

「フィギアスケートでも見ているかの様です!」

 レース実況のラジオDJがまさにドンピシャの例えをマイクに捲し立て、観客の歓声はその興奮した実況をかき消すような、更に大きな歓声だった。

「どうだい、俺も結構やるだろ?」

 下り坂の最後は幅が広い直角コーナーで、ほぼ全員が下り坂でのトップスピードを維持したままマシーンをドリフトで滑らかに滑らせてコーナーに突入してくる。

 そのコーナーを突破したところでダグが興奮してこちらに音声だけの通信を入れていた。

「やるなぁ!いつの間に練習してたんだよ」

 僕はわざと悔しそうに声を上げた。

「ミカに俺のとっておきのカーレースの映画を見てもらって、同じ様な挙動ができないか考えておいてもらってたんだよ!それにこのゼータ、最高だな!下手するとお前のレッドブルにも勝っちまうかも知れないぜ?」

 興奮したダグのおしゃべりは止まる気配がなかった。でも、調子に乗ったダグは僕にとっても怖い存在だ。絶好調のダグを止めるのが至難の技だというのは長い付き合いの間に何回も経験している。

「そうは行かないぞ。直線ならば僕のレッドブルが圧倒的に有利だからね!」

 コーナー直後の、右手に鉄道の線路を臨むロングストレートで一気にアクセルを叩き込む。エンジンが猛獣の叫び声のような唸り声をあげ、大加速に僕の背中がシートに押し付けられた。

 ミュートは人形大に縮んでおり、慣性が働くたびに僕の胸にその小さくなった体を飛び込ませてくる。まるで野球のグローブとボールみたいだ。ただかなり勢いよく飛び込んでくるミュートは痛くも痒くもないみたいで、なんだか楽しそうだ。

 まぁそうだよね。ホログラフなんだか痛いはずは……あれ?

「ミュート……遊んでるでしょ?」

「あははー、バレた!」

 実体ではないホログラフに慣性が働くはずないもんな!

「ちぇっ。ロムに堂々と抱き着けるなーと思ったのになぁ」

 チョット何それ、嬉しいんですけど。

「さてと、真面目にお仕事しますか!あ、6位のレーサーに隙あり!」

 そう言うと、フロントガラスに一気に理想の進路を描き上げる。僕はレッドブルをグンと加速させ、緩やかなコーナーなのにコースが少し膨らんだ6位の四角いワゴンをインから一気に抜き去った。直後に右手の線路を渡る為の急な右コーナーに入るのだが、ミュートはすでに指示を出していて、僕は特に焦ることもなくレッドブルに緩めのドリフトをさせる。

 6位のワゴンは再び僕を抜こうと無理やりインから急角度のドリフト操作をする。

 でもナビゲーターが居ないんだろう、その角度はコースアウト必須だ。

 ミュートの指示にもこうあった。

「線路を横断するため、グリップが弱い。丁寧に」

 僕を抜き返すことだけしか考えていないワゴンは、鉄の線路の上や歩行者誘導用のペンキで描かれた横断歩道でグリップが無くなってしまうことを予測していない。

 僕はハンドル操作だけでドリフトのコントロールでワゴンの背後に付けるコースをとる。きっとワゴンのドライバーは抜き返したと思ったに違いない。

 その瞬間、ワゴンがコーナーを一気に外れた。氷のブロックをテーブルの上に置いたようになんの抵抗もなく、横断するはずだった線路に沿って横滑りしてしまった。まさに線路の真上でのアクシデントだ。

 僕の目の前から文字どうり跳ね除けられたワゴンは本来列車が通るコースをそのままに進んで、砂利の上に横転してしまった。

「あちゃー。あれは復帰に時間がかかるみたいだね」

 僕は線路を渡り切った辺りでミュートに話しかけた。

「丁寧にコーナーリングできたわね。タイムも良好よ!」

 ミュートはこちらを振り返りながらも新たな指示をフロントガラスに書き出してゆく。

「あと5台……。どんな感じだい?」

「まだまだ始まったばかりよ。大きく差は縮まっていないわ。でも、こう言うことの積み重ねよ」

「そうだね……。さぁ頑張って先ずは追いつくぞ!」

「うん!」

 今度はちゃんと僕に振り返って、ミュートがガッツポーズを取る。

 彼女を守り為にも必死にならざるを得ないはずなんだけど、いつも通り明るく楽しい二人きりの空間に、僕の表情にはいつしか笑みが浮かんでいた。

ここまでお読み頂きましてありがとうございます。

まずはレーサーとして本格参戦のダグのシーンを

書いてみました。


ダグの愛車はフェアレディZです。そのZをギリシャ語

読みにして『ゼータ』としていますが、ご存じ某機動戦士のアレにもかかっています。


さてお話も終盤戦に入りました。残り数話ですが、是非とも最後までお読みくださいね。


少しでも面白いと思って頂けたら幸いです。

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