表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fゲーム  作者: 塚波ヒロシ
16/23

第16章 プレパレード

引き続き、第16章をお届けします。

今回から名前が上がった新しいシステム。

これこそがロムとミュートの最大の武器にして、

僕がこの作品で書きたかったシーンに一番必要な

『コア』になります。

第16章 プレパレード


「次のコーナーは少し難しいコース設定にするわよ。ちゃんとやればタイムが縮まるわ!」

「了解!やってみる!」

 今日のタイムアタックはすでに3本目だったけど、不思議と疲れを感じてはいなかった。寧ろ精神的にも肉体的にも高揚感を感じていた。

 1本目からミュートの表示するコースは昨日までのそれとは違い、僕の予想より一段階難しくて攻めたコース取りとなっていた。

 ただそれは確実にタイムの短縮を目指したもので、それをこなした一本目のタイムは僕のベストタイムを更新するものだった。

 ミュートもいきなり高難易度のコースを設定せず、あくまで僕に現在の技量をベースに、更に一段階難しいコースを設定する事で、僕の技量を高めようという狙いが明らかに見えた。

 それに成功すれば、次に来るコーナーでも同難易度のコースを設定し反復練習、失敗すれば何がダメだったのかを指摘して再度挑戦させてくれる。

 たった3本しか走ってないのに、明らかにタイムが縮まっているのを実感でき、正直言って楽しくてしょうがない!

「リミッターかけているのが嘘みたいだな……」

 外から見ているダグも驚きを隠せない。

「ミュートちゃん、ロムさん、お疲れ様!」

 タイムアタック3本目を新しいベストタイムで終了した僕らにミカがタオルと冷えた水のボトルをよこしてくれた。

「次にレースが終わったら、同化システムを練習しても良いかもしれませんね」

「かもな……。一度くらい練習しておかないと」

 ミカに提案にダグが顎をさすりながら応える。

「アレをやっておかないとレッドブルのとっておきが使えないからな」

「いよいよ同化システムか……」

「正直チョットだけ怖いんだけどね」

 したり顔のダグとは逆に、僕とミュートは不安そうな表情を浮かべた。


 同化システム……正式名称は長ったらしくて忘れちゃったけど、Fゲーム全てにおいて使用できるマシーン操縦システムの一つだ。

 簡単に言うなら文字通り「自分自身をマシーンに見立てて操縦する」「マシーンと同化する」システムの事を言う。

 一部の特定のゲームゾーンじゃかなりポピュラーなシステムで、操縦するマシーンを文字通り自分の手足として操縦する事ができるシステムだ。

 コレを使用すると本来はハンドルを切ったり、ブレーキを踏んだりと言う動作にかかる反応時間をほぼゼロにすることが出来る。早い話しが「思った通りにマシーンを操縦できる」って事だ。

 ただ、カーレースゾーンにおいては同化システムを使用しているレーサーは殆ど居ないと聞いている。一見すると有利になるシステムに見えるのだけどね。

 理由は簡単。「人間にはタイヤもハンドルも付いていない」からだ。

 自分の体が車になったからと言って、ついてもいないハンドルをどうやって切るんだい?アクセルをどうやって動かすんだい?前輪は手なのか足なのか?フロントライトは目なのか?だとするとブレーキランプはどこなんだろう?

 そう、人体と車の構造が余りに異なるため「慣れるのに途方もない時間がかかる」って事だ。しかもコレばかりはレーサーのドライビング技能が優れていたってどうにかなるわけじゃない。完全にセンスと言うか感覚の問題になる。

 加えて、マシーンと同化するためにはアイズのサポートが必要となる。ドライバーはアイズと感覚を共有し、ドライバーの思考をアイズを通してマシーンに流す。当然、ドライバーとアイズが共通の認識でいなければならないわけだ。平たく言うと「とても仲が良い」二人じゃないと操縦できないんだ。

 そこに関しちゃちょっと自身はあるけど。

 でも、ダグの言った通りレッドブルの性能、能力、機能を完全に引き出すためにはこの余剰とも言うべきシステムを使いこなさなくちゃいけないのは、レッドブルを最初にダグとミカに見せた時からみんな分かっていたことだった。

 いや、いよいよこの段階まで僕とミュートのテクニックが高まったって事なんだと思う。

「取り敢えず現状で次のレースに挑もう!それが終わったらあのスーパードラゴンとの再戦も見据えてシステムの導入を考えてゆくぞ」

「おうー!」

 いよいよ次の段階に進む不安と高揚感に僕の心はごちゃ混ぜになった。でもきっとミュートがいれば上手くいく筈だ!そんな風に思いながら彼女を見ると、予想に反してミュートは顔を真っ赤にして僕を恥ずかしそうに見上げるのだった。


 実際に僕の操縦技術は向上していた。

 数日後のレースでそれはわかりやすく証明されたのだった。

 確かに今回のレースには目ぼしいレーサーは参加しておらず、僕たちチームブレイバーのオッズは一番人気で、当然のようにポールトゥーウィンで2戦目を華々しく飾る事ができた。

 だけど、今回のレースでは実際に運転してた僕ですら驚きの変化があったんだ。

 まず第一にミュートの指示がさらに正確になり、またその指示がより細かくスピーディーになった事だ。スーパードラゴンとのレースの時よりも指示の回数が倍ほどに増え、またその内容もより具体的になっていた。

 そして第二に、僕がその指示をかなり予測できたこと、そしてそれを実行できるようになっていたことだ。これは今までの反復練習の賜物だし、またミュートとの意思疎通がスムーズになったと言うことが理由だと思う。

 最後に、これはミュートに言われて初めて気づいたのだが、どうやら何回かミュートの指示よりもさらに一段階難しく、効果的なコース取りを僕が自ら行っていた事があると言う事だ。

 僕自身が言うのも変な話しなのだが、ミュートの指示を元にしてさらにインラインに、さらにブレーキタイミングを遅らすことで次のコーナーでの立ち上がりをより良くする事ができるんじゃないかと、欲張った運転をした事があったのを覚えている。

 僕としてはミュートの指示を無視しているのではなく「ミュートは本当はこっちの指示を出したいんだけど、僕の浅い経験じゃ少し安全なコースを出しておいた方が良いと考えた」んじゃないだろうか?と思った場面があった。実際に僕の技量ではもしかすると失敗の可能性は多分にあったんだろうが、でも僕たちはレッドブルでたった2回しかレースを走っていないルーキーのチャレンジャーだ。こんな程度のリスクを恐れるわけにはいかないという気概の方が優っていた。

 ミュートは自分の指示をある意味無視されたわけだけど、だからといって腹を立てる事はなく、寧ろ僕の技術の向上と、精神面での成長を喜んでくれた。まぁ、試合後リビングのソファーで頭をナデナデされながらだったのは照れくさいのでダグたちには教えなかったけど。

 さて、僕には珍しく自己分析のようなことをしてしまったわけだけど、殆ど正解なんじゃないかと思う。実際に僕とミュートとレッドブルはジュニアスクールの男子諸君のようにグングンと成長していて、またそれが楽しくてしょうがなかった。

 その成長具合というのは外から見ている人達……観客や実況席のアナウンサーは僕が優勝すると予想してくれたし、それはオッズ一番人気だという事がそのまま現れたわけだ。

 そして何よりも僕たちに自信をつけさせたのがレース終了直後にかかってきた父さんからの電話だった。

「ヒロム、連勝おめでとう!今回のレースは凄く早かったな!」

「ありがとう父さん!確かに前回よりも速かったね!ラップタイムを更新したみたいだよ」

「そうかそうか!でも父さんが言いたかったのはそうじゃないんだ。うーん、タイムというよりは走り自体が速く、巧くなったって事だな」

「そう?いやねダグやみんなにもそう言われるんだけど、僕としては精一杯レースしていた事に変わりがないから、何が良かったのかがイマイチ分からなくて……」

 ここで父さんに言われたのがさっきの分析内容だった。画面の外から鍋の番をしていた母さんにも言われたんだけど、僕ら自体が「強くなった」ように目に写ったんだそうだ。

 その両親の言葉が何よりも嬉しかった。旅先の車内テレビでしか見られなかったらしいけど、また近いうちにレース会場まで足を運んでもらいたいし、会って直に感想を聞きたい。

 因みに気恥ずかしかったので、ミュートといい感じなのは黙ったおいたけど、コレが母さんだったら気付かれていたかもしれないなぁ。


 変化といえば、もう一つ。ただコレは余り人に話すべきことではない事だと思うんだけど。

 レースの終わった次の日ぐらいからなんだけど、ミュートが特に物理的に距離が近いんだ。

 僕自身も話すのが照れるんだけど、二人きりの時……ほとんどが家にいる時なんだけど、ずーっと僕のそばにいて、言葉のやり取りも何だか本当に恋人みたいな甘い雰囲気なんだ。

 例えば朝になるとミュートが僕を起こしにきてくれるんだけど、何回か僕のベッドに潜り込んで来ていた。僕が目を開けると一緒になって寝そべっていたミュートが僕の顔を覗き込んでおはようを言ってくれる事もあった。

 食事も今までみたいにダイニングでとらず、リビングの大きい座卓に二人並んでとるようになり、そのあとはソファーに並んで座ってテレビを見たり、次のレースのミーティングをする事もある。そんな時は決まって彼女は僕にもたれ掛かってくるんだ。

 でも、ダグの家に行ってシミュレーションする時はそんな素振りを見せず、いつもみたいに姉貴風をビュンビュン吹かせて、どっちかといえば僕を叱る事が多い。

 僕もそんなミュートに少し慣れてきたのか、自宅では恋人を、外では弟分をと使い分けるようになって来た。

 女心を理解するにはまだまだだけど、概ね上手くいっているんじゃないだろうか。彼女の機嫌が良ければそれだけレッドブルの強さが増すわけだし、私生活でも彼女の本当の可愛さを知っているのは僕だけというのも正直気分が良い!

 それにこのまま順調に僕たちの中が進めば、僕の現在最も強く抱いている野望の一つ、童貞卒業だってそれほど遠くない。そんなことを感じつつ、目標としていたレース、そうスーパードラゴンとウミさんとの再戦が近づいてくるのだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

週末のひと時のお供になっていたら幸いです。


もし少しでも面白いと思って頂いたら幸いです。

是非高評価ブックマークをして下さいね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ