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Fゲーム  作者: 塚波ヒロシ
12/23

第12章 じゃじゃ馬にさせないで

 こんにちわ、それともこんばんわですか?

 こちらもご覧いただいてありがとうございます。

 やっとこさ新キャラクターの登場です。

 是非ともお読み進めてくださいませ!

第12章 じゃじゃ馬にさせないで


 父さん達が「青春18旅行」に出発して2日経った。

 僕に予想通り昨日の夕方テレビ電話がかかって来た。まだ家から200キロも進んでいない、お隣の地域の真ん中ぐらいにある街からだった。

 よっぽど寄り道をしたのかと聞くと案の定、あちらのお寺だこちらのショッピングモールだと1日半かけてココらでは有名なスピットを何箇所も巡ったらしい。おかけで父さんは疲れてダウンしたらしく、今日は昼から早々にホテルに入り、温泉でゆっくりしているんだそうだ。ご苦労様な事で。

 たっぷり30分ほど話して、次のレースの予定を伝えてから電話を切った。

 画面越しとはいえ父さんの顔が見れなかった事にちょっとだけ寂しさを感じたけど、じきに慣れてくるのかなぁと思った。

 たった2日程度じゃ僕に生活に大した変化なんて有りはしない。

 午前中はスクールがあり、終わったらチームの4人で次にレース事を話し合い、それが終わるとミュートと買い物をして帰宅。初日こそ僕がキッチンに立ったんだけどあまりの鈍臭さを見かねたミュートが今日以降、キッチンを守ると息巻いていた。そんなに酷い事はしてないんだけどなぁ。瓶の中の塩を全部床にぶちまけただけだよ?あと小麦粉を……

 そんな程度のことしか変化は無い。ミュートが僕のベッドに夜這いをかけて来たりとか、着替え中にうっかり部屋を開けてしまうとか、うたた寝したミュートが僕の方に寄り添って来て、あ、これキスとかしたらどうなるんだろう……とか言う事も全く無い。おかしいぞ!ラッキースケベってのは都市伝説なんじゃないか?

 そんな自分勝手の妄想も収まりつつあり、今日は昼からレースのプラン立てにちゃんと集中する事が出来ていた。

 今週末に行われるレースは前回と違い、オンロードのオーバルコースのみで行われる形式だ。1.6キロのコースを5周グルグルと回るレースで、マシンとレーサーの安定性が問われるのだとダグが教えてくれた。

「まぁレッドブルのそういう時の性能も見てみたいから、ちょうどいいと思ってな」

 向かいのパイプ椅子に座ったダグが、中空に開いた画面を見ながら僕に話しかける。

 毎度の如くアサヒ自動車オフィスに集まったチームブレイバーのメンバーは、これも毎度の如く応接室にてミーティングをしていた。

 僕は1人でオンボロソファーに、テーブルを挟んでパイプ椅子にはダグが、僕の右手にはこの前の賞金で購入したばかりの真新しい2人がけのソファーに奥からミカ、ミュートの順に腰掛けている。と言っても今し方女性陣はキッチンに向かったんだけど。

 女性陣たっての願いで購入したエンジ色のソファーは2人の手によってカバーシーツと数個のクッションで装飾され、座面を跳ね上げることで現れる収納スペースには簡単な清掃道具とかが入っており、完全に彼女2人の指定席となっていた。

 しかも僕とダグが何気なく座ると注意と他への移動を命令され、目を盗んで長居しようものなら容赦の無い消臭スプレーの放射を浴びせかけられる。その為、僕とダグはそのソファーの座り心地を満喫した記憶がなく、すでに羨ましさは薄れ、逆にアンタッチャブルな存在にすらなってしまった。

 そんな持たざる者の1人であるダグは悲しいかな、オンボロソファーよりも古いと思われる折り畳みパイプ椅子にの硬い座面にミカお手製の座布団をゴミ紐で縛り付け、このミーティングでもその体重を預けていた。

「レッドブルのセッティングはすでに終わってるし、ロムはそっちでシミュレーションしておいてくれ」

「了解だよ。コースデータはあるんだっけ?」

「はい。さっきミュートに渡しておきましたよ」

「うん、ミカにちゃんと送って貰ったわ。今日帰ったら入力しておくから、明日の朝から使えるわよ」

 キッチンの女性2人が飲み物を用意しながら答えてくれた。

 キッチンからはお湯が沸く音と、和風出汁の香りがさっきからこちらに漂って来ていて、僕の空腹をじわじわと刺激している。ダグもそれは同じらしく、腹の虫が鳴いている声がさっきから聞こえている。

 程なくしてミュートとミカがガラスの器を何個も持って来た。切り子の入った大きめにガラスのボウルにはたっぷりと素麺が氷と共に入っている。小さい器には麺つゆ、別に小鉢には薬味も用意されている。

「後は出来合いの物だけど、天ぷらも有るわよ」

「そろそろ夏が近づいて来たので、スーパーで安売りし始めたんですよ!」

 女子2人は得意げに言い、今度は大皿に盛られた大量の天ぷらを持ってきた。

「良いねぇ!あ、俺レンコンの天ぷらって好きなんだよね!」

「知ってますよ!あとオクラもありますよ」

 あーなんか既にダグとミカって夫婦みたいだよなー。さっさと結婚すれば良いのに。とミカと並んでテーブルの右側に座ってるミュートをチラッと見ると、ミュートはミュートでこっちを見てきた。目を逸らす間も無く、完全にミュートと目が合ってしまった。やば、なんか言われるかも!

「あのねぇ……、まだ会ってひと月の私が知ってる訳ないでしょ?」

「いや、なんにも言ってないじゃん」

「……何が好きなの?」

「……エビとカボチャ……」

「……今度買ってくる時は多めに買っておくわ」

「……ど、どうも……」

 実を言うと、レースを終えてからミュートと話す事に躊躇いというか、よそよそしさと言うか……なんか恥ずかしさみたいな物が僕の中に生まれ始めた。

 理由は自分でも分かってる。どんな態度で会話すれば良いのか分からないからだ。

 あの時は優勝した満足感でちょっとした物忘れみたいになってたんだろうな。

 次の日の朝になってミュートの顔を見たら、あの事がフラッシュバックして、マトモに顔を見る事が恥ずかしさ無しには出来なくなっていたんだ。

 ……そうだ、ミュートとキスしてしまったんだって。

 コレってミュートが僕の事を好きだからキスしてくれたんだろうか。だとするとそりゃめちゃくちゃ嬉しいよ!何もかもが僕の好み通りの女性が僕を好きで、しかもキスやマッサージをしてくれて、しかもお風呂にまで一緒に入ってくれたわけだ。こんなのドラマやアニメの主人公(モチロンこの船で新しく作られたアニメだよ。でも父さんの話だと、大昔の地球で作られたアニメはもっとモエる?脚本だったらしい)その物じゃないか!僕が今までに人生で最も憧れたシチュエーションが現実に今ここに在るんだから。

 ただここに来て見逃せない疑問が在る。

 ……ミュートは僕の事を好きなんだろうか……

 キスしたには事実だ。ダグにバレないようにレッドブルの車内画像データ抜き取るときに、僕の携帯にその瞬間の動画はちゃんと移動させた。ミュートの後頭部しか映ってなかったけど。でも僕の記憶と照らし合わせてそれは間違いない。

 でも、キスした=ミュートは僕が好きだからとはならないんじゃないかと思い始めてしまった。

 ミュートは姉御肌な所があるから、僕を歳の近い弟と同じ感覚で見ていて、家族の緊張をほぐす為程度の感覚だったのかも知れない。

 それかレース頑張って来いやと、朝の挨拶程度の意味しかない物だったのかも知れない。

 しかもそれをミュートに確認する事が出来ずに2日も経ってしまい、僕は完全にそのタイミングを逃したまま、チェリーボーイならではのモヤモヤとした日常を送る事になってしまった。


 そんな事を心の端っこに置きつつも会話をしながら素麺をすすっていると、事務所の来客を告げるチャイムが2回鳴った。

「あ、僕が出るよ」

 ダグとミカの何故かニヤニヤした視線から脱げたくなった僕は、このアサヒ自動車の店主でも無いのに応対をかって出て、応接室から店先に向かった。

 日除けのカーテンで締め切ったのに事務所側は外からの陽射しだけで充分明るかったので、電灯を付けずに入り口のカーテンを開けるのに手間取る事は無かったが、カーテンを開けたガラス戸の向こうには誰も居なかった。

 あれれ、もう帰ったのかな?

 僕はまだ尋ね人が近くにいるだろうと、アサヒ自動車とガラスに直接書かれた戸をあけると、驚いた様な声が下から聞こえた。

「ウワァ!危ないなぁ!」

 声の方を見下ろすと、そこには確かに人がいた。

 紺色の半袖のパーカーのフードを被り、白いシャツにオレンジ色のハーフパンツのその人物は、急に出て来た僕にぶつからない様に半歩下がった所で、両手を上げている。

 ……小さい。僕のへそ辺りの身長だ。格好とさっきの声からしてジュニアスクールの男の子らしい。

「コホン、ごめん下さい。チームブレイバーのオフィスはここでいいですか?」

 彼は一つ咳払いをして、フードを取りながら僕に尋ねて来た。

「そうだけど……どちらさんだい?」

「あー!レッドブルのロム!会いたかったよ!」

 フードを取った彼は、ニコニコしながら僕に話しかけてくる。明るめの赤毛をポニーテールみたいに束ね、大きなこれまた赤みがかった瞳をキラキラさせながら。

「どったの?」

 不意にダグの声が背後から聞こえた。どうやらこの小さな訪問者の声に興味を持った残りの3人がこちらに来たらしい。ダグなんか素麺を啜りながらだ。

「こんにちわ。僕、ロムくんに会いに来たんだけど……」

 彼は後ろの3人にも聞こえるように目的を告げた。

「きゃー、ロムさん!もしかしたらファンの子なんじゃないですか?」

「おぉ!僕、昼はもう食べたか?素麺食うか?」

「どうぞ上がって上がって!天ぷらもあるわよ!」

 ミカのファン、と言う言葉に反応して僕の後ろの3人は完全に舞い上がったらしく、彼の返事を待たず室内に手を引き、ダグの隣に丸椅子を用意して座らせてしまった。ミュートとミカに至っては麺つゆと飲み物まで瞬時に用意してしまう歓迎ぶりである。

 彼は目をまん丸に開いて、あれから一言も発する事なく席に座らせられて、またもビックリしているようだ。

「キミ、お名前は?」

 みんなも着席し、まずはミュートが彼に尋ねた。

「ウミ アズマだよ。ロムくんにもう名乗っていたよね」

「あら、顔見知り?」

 え……誰?

 4人の視線を受けてみたものの、即答出来なかった。どこかで確かに聞いた名前なんだけど……。

「もう、忘れちゃったのかい?僕だよ、スーパードラゴンのドライバーのアズマだよ!」

「えぇぇぇっ⁉︎」

 完全に裏返った僕の驚きの声がパーテーションをビリリと振るわせる。驚いたのは他のメンバーも同じらしく、ダグは咳き込み、ミカはあんぐり口を開き、ミュートは天ぷらを箸から落としてしまった。

「そんなに驚く事ないでしょ?レースの姿はアバターだって言ったよね?」

「……確かに。今思い出したよ。でもこんな子が……」

「みんながそういうこと言うからアバターを使ってるの!もぅ、失礼しちゃうよ」

「ご、ごめん。あまりにギャップがあって」

「なにさ、どうせ僕は小さいって言うんだろ?」

「あははは……」

「ところでアズマさん、今日はどうされました?」

 図星を言われ返答に困った僕に、ミュートが助け舟を出してくれる。アズマさんは……アズマくん?どうやってこれから呼ぼうかと考えてるうちに話は進んでしまった。

「あー、まずはごめんね、そのうち尋ねるとは言ったけど、突然来ちゃって。ご飯まで頂いて」

「いえいえ、こちらこそなんかすいません」

「実は今日来たのは、キミたちをスカウトする為なんだ!」

「スカウトー⁈」

 ダグが麺つゆの入った小鉢を片手にさっきの僕の声以上の大きな驚きの声を上げる。

「そう!君たち4人を全員ね!」


 ウミ アズマの提案はかなり魅力的だった。

 彼の所属しているチームドラゴンは僕らと同じく四人組の小さなチームと思っていたんだけど、実は母体となるいわゆるギルドにチーム丸ごと編入されていた。

 スターチャートカンパニー。コレはそのギルド名でもあるし、そのギルドの出資運営をしているスポーツ用品の会社の名前でもあるんだ。

 スターチャートは運動靴やトレーニングウェアないろんなスポーツの衣料や道具の製造販売、トレーニングジムの経営、Fゲームのスポンサーなど、スポーツとつく有りとあらゆる場面で見る事ができる有名な会社で、この船の中の企業では相当有名な名前だ。

 そこがたった一勝しか挙げていない僕らをスカウトするにあたり、嘘みたいな好条件を提示して来た。

 運営資金の全面支給、新オフィスの無償貸し与え、高額な給与、新型マシーンの提供などなど。

 ……夢のような話だ。そりゃいよいよレースで好成績を出さないと何を言われるか判ったものじゃないけど、成績さえ出せるのならこんなに美味しい話は聞いた事がない。

「どうだい?凄い高待遇でしょ?」

 何故か胸を張るアズマくん。今にも「エッヘン!」と言いそうな態度だ。

「で、オレたちが所属し続ける為の、コッチが提供する条件ってのは有るんだろ?」

 ダグが天ぷらを一つ口に放り込んで、低い声でアズマくんにゆっくりと質問をした。

「モチロン有るよ。そりゃこんな高待遇だもんね、条件と言うか守るべきルールがあるさ」

 そう言ってアズマくんは中空に画面を開き、テキストファイルを展開した。

 契約書と大きめに書かれたテキストには、さっきアズマくんが教えてくれた提示内容の下に、同じ分量のいわゆる規約が書かれていた。


1 ギルドの指定するレースには必ず出場する事

2 ギルド内のチームでの直接的な対戦は出来ない

3 ギルド内で得た情報は口外出来ない

4 ギルド以外で得た、Fゲームに関する情報は全て

 報告をすること

5 ゲーム内で使用するマシーンは自由だが、所持機

 の情報は全てギルドの共有財産とする事


 などなど……。その他にも住居の事や、チームメンバーの情報のギルド内共有化、レースでのノルマと細かくびっしりと書かれていた。

 当然、それに違反した場合の一方的な解雇と違約金の例題なんかも記載されている。

 僕とダグは読み進めるにつれ、最初の夢心地はすっかり薄れ、それどころか背中に薄ら寒さすら感じ始めていた。

 ……大人、怖いなぁ……

「だいぶ顔色が悪くなって来たんじゃない?」

「あんな高待遇出して来たんだ、まぁコレぐらいは覚悟してたけどな」とダグが引きつった笑みをしながらアズマくんに返答する。僕はと言えばもう一度契約書を頭から読みかえし、契約をした場合の状況をシミュレーションしていた。

「契約は当然、断ったって良いからね。ここで今すぐ返答しなくっても大丈夫だよ?」

「……いや、今すぐで問題ないぞ」

 ダグがアズマくんを真っ直ぐ見て答えた。

「答えはモチロン、ノーだ!」

 ここまでお読み頂きましてありがとうございます。

 主人公チームの4人以外には明確な元ネタが存在します。特に今回から本格的に登場するウミ アズマは私が今現在どハマりしているコンテンツからです。

 まぁすぐに解っちゃうと思うんですけどね。


 ウミ アズマ…海、東…東海??


 少しでも面白いと思っていただきましたら幸いです。休日の暇つぶしのお役に立っていたら更に嬉しいです。

 楽しんで頂いたのでしたら、是非とも高評価ブックマークのほどよろしくお願いいたします。

 ご意見ご感想もお待ちしております。(ノミの心臓ですので、お手柔らかにお願いすます。)


 ではまた週末には間に合うよう登校予定です。

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