繋がる
咲希が居なくなって1ヶ月
拓也はあのメールを1日に何度も読んではため息をつく。それを繰り返していた。
もちろん新作の構想も全然出来ていない。
拓也はメールをもらった日、すぐに電話をしたが電源が入っていない為、繋がらなかった。
それから、咲希の家や病院にも行ったが結局会う事は出来なかったのだ。
咲希と里菜はアメリカいく前日に退院して、咲希の実家で皆で過ごしていたのだった。
その日から拓也は抜け殻の様になっていた。
一美は拓也から状況を聞いたので、来れる日は家に来て拓也のお世話をしていた。
どうにか元気をつけさせたいが、どうすればいいのか分からずただ冗談を言って笑わせようとしていたのだが、拓也は反応しなかった。
その姿に徐々に怒りがこみ上げてついに爆発した。
「ちょっと拓也!!いいかげんにしなさいよ!!突然で悲しい気持ちは分かるけどもう1ヶ月経ったんだよ!そろそろ気持ち切り替えて仕事しなよ!!咲希ちゃんだって里菜ちゃんだってあんたの絵本を待ってるんでしょ!咲希さんだってすごく辛かったと思うけど、里菜ちゃんの為やあんたに迷惑をかけない為に結婚を決めて仕事もやめたんだよ。病気が分かってすぐにあんたに伝えたら、借金してでもどうにかしてやろうとするってのが分かってたからあえて言わなかったんだよ。あんたにはずっとこれからも絵本を書いてもらいたいと思ったからだよ!それくらい分かるだろ!それなら前を向いて2人の為に絵本を書くしかないでしょ。それが2人のこれからの生きる支えになれるんだから。あんたならそれが出来るんだよ!あんたにしか出来ないんだよ!想ってても伝えれないし、何もできない人だっているのに、あんたには絵本を通して伝える事ができるし、繋がれるんだから!頑張れ拓也~!!」
涙を溜めながら一美は言った。
その言葉に拓也は、深く心に刻んで答えた。
「そうだよね。そうだよ!俺には絵本で2人に繋がる事が出来る。お金もないし、助ける事は出来なかったけど、俺の絵本を楽しみに待っててくれているんだ。絵本でずっと繋がっていくしかないんだ。ありがとう一美!俺、書くよ!どんなに売れなくてもこれからもずっと絵本を書き続けるよ!」
「うん!そうだよ!拓也なら出来る!頑張れ拓也!」
それから拓也は気持ちを切り替えというか、咲希に出会ってからの事やありのままの自分が伝えたい事を絵本にした。
出来上がった絵本は遠い国にいる咲希の元にも編集社から届いた。
紙袋に入っている本を出して咲希は本を見て、すぐに里菜に見せて2人で病室で読んだ。
タイトルは「秋風」
その裏に書いてある言葉を見て咲希は笑顔になった。
「僕らは繋がっている」