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秋風  作者: 士祉護福介
5/7

プレゼント

 里菜の誕生日当日


拓也は事前に咲希から来ていたメールに書いてある住所に到着した。

市営団地の2階である。玄関前に着くと、大きく深呼吸をしてチャイムを鳴らした。


「は~い!!」


明るい声でエプロン姿の咲希が出てきた。


「あっ、こっこんちには。本日はお招きあっありがとうございますっ!!」


拓也はものすごく緊張しながら挨拶をした。


「いらっしゃい、先生。まだ里菜に行ってないから静かに入ってきて下さいねっ」


そう言いながら咲希は家の中へ案内した。そして、


「里菜~!!里菜にお客様で~す!!」


部屋でテレビを観ていた里菜は振り返り、拓也に気づくと


「あ~拓也だぁぁぁぁぁぁ!!!里菜の誕生日会に来てくれたの???」


勢いよく、拓也に抱きついてきた。

拓也はすごく照れながら里菜の頭を撫でる。


「里菜ちゃん、お誕生日おめでとう!今日はママに招待してもらったんだよ」


「ママ~ありがとう!!すっごく嬉しい~!!」


そう言うと、今度はママに抱きついた。


「よかったね。里菜。じゃあ、先生も来られた事だし、誕生日会を始めましょうかね。さっ二人とも座って」


テーブルの上にはたくさんの御馳走がならんでいた。

まず、ケーキの上のローソクに火を付け電気を消し、ハッピーバースデーを歌い、ローソクの火を里菜が勢いよく消した。

電気がつくと、


「里菜ちゃんおめでとう~!!」


咲希は里菜が欲しがっていた化粧道具をプレゼントした。

その後に拓也も持ってきた袋を里菜に渡した。


「里菜ちゃんおめでとう」


「えっ拓也もプレゼントくれるの?これ何?開けていい?」


「もちろん。どうぞ」


里菜は袋を開けると一冊の絵本が出てきた。


「うわっ絵本だぁぁぁ!!これ新しく書いたやつ??」


「そうだよ!この前出来たばかりでまだ売られてないんだけど、里菜ちゃんの為にママにお願いして一冊だけ早く準備してもらったの。一応、僕のサイン入りだよ」


苦笑いしながら、拓也は言った。

里菜はそれを見て泣きながら喜んだ。


「ありがとう拓也!!すごくうれしい!!大事にするから。里菜の宝物にする!!」


咲希と拓也は顔を見合わせて笑顔になった。


それから、3人は色んな話をしながら食事を楽しんだ。

誕生日会も終わりに近づいた時に里菜はきつそうな咳を続けてし始めた。

咲希が里菜の背中をさすりながら


「里菜、大丈夫?ゆっくり深呼吸して。落ち着いて。慌てなくていいからね」


拓也はその姿を心配そうに見ていた。

里菜が少しして落ち着いた。


「ごめんなさい先生。ご心配おかけしまして。最近、こうなる事が多くなってきていて。近くの小児科には行ってるんですけど。少し時間がたてば落ち着いてはくるんですよ」


「そうなんですね。里菜ちゃん、早くなおるといいね。今日はもう少し横になってゆっくりしてたがいいよ。僕はもうお邪魔するから。今日は里菜ちゃんの誕生日会に参加できてすごく楽しかったよ。ありがとう」


拓也は里菜を心配して早く切り上げて帰る事にした。


「拓也。ありがとう。絵本宝物にするから。また今度遊ぼうね。絶対だよ。約束だからね!!」


「先生。ごめんなさい。今日は本当にありがとうございました!またご連絡致します」


二人に挨拶して拓也は里菜が早く良くなって欲しいと思いながら家に帰った。


 誕生日会から2週間後、拓也の最新作の絵本が出版された。

「世界人」は、以前のゾウの親子の倍の勢いで売れ、4ヶ月で重版し、累計9000部は売れた。

拓也の処女作の「うさぎのチーちゃん」には及ばなかったもののそれ以降の作品の中ではヒット作となった。


 拓也と咲希はこれからももっといい作品ができていくに違いないと、確信し始めてきていた。

しかし、里菜の体調は良くなる所が悪い日が続く様になっていた。




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