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秋風  作者: 士祉護福介
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背中を押して

 さとしくんがかよっているしょうがっこうに てんこうせいが きました。

なまえは ミハエル・ジク

ブラジルというくにから きたおとこのこ。

さとしくんは ジクくんと すぐに なかよしになりました。

ジクくんも さとしくんが いっしょなので がっこうへいくのも たのしみになりました。

 あるとき こうえんで ふたりがあそんでいると さんにんのおとこのこがきて こういいました。


「おい、ここはにほんだぞ!おまえはにほんじんじゃないだろ!ここであそぶな!」


さんにんのおとこのこは こういうと ジクくんを すなばに おしたおしました。

さとしくんも とめにはいったので いっしょに たおされてしまいました。


「おい、わかったか!こんどまたここにきたらもっとするからな!」


さんにんはそういうと わらいながら いきました。

ジクくんは さとしくんにあやまり なきながら いえにはしって かえりました。


さとしくんは おとうさんがかえってくると きょうのこうえんのはなしをしました。


「おとうさん にほんじんじゃないと こうえんであそんではいけないの?

ジクくんは いいこなんだよ。おかしいよね おとうさん」


さとしくんはそういうと なきだしました。

おとうさんは さとしくんをだきしめながら はなしをしてくれました。

おとうさんのはなしをきいて


「わかった!こんどまたあったらそういうね!」


と、いつものさとしくんに もどりました。


べつのひ またあのこうえんに ふたりがあそびにいくと、

このまえのおとこのこたちがいました。


「またきやがったなぁ!!くるなっていっただろ!!」


おおきなこえをだしながら ふたりのところに はいってちかづいてきました。

そのとき ひとりのおとこのこが ころんで ひざからちをながしました。

ころんだおとこのこは おおごえでなきだしました。


「いたいよ~。ちがでてるよ~。たすけて~。いたいよ~」


まわりのおとこのこたちは どうしていいのかわからず ころんでいるこをみているだけでした。

でも ジクくんは ころんだこにちかづいて


「ダイジョウブ。スグヨクナルカラ。ケガシタトコロヲアライニイクヨ」


そういうと おとこのこをたたせて みずのみばで ひざをあらってあげて ばんそうこうを はってあげた。

すると ころんだこは なきやんで


「あ、ありがとう。いたくなくなった。ほんとにありがとう。このまえはおしたおして ごめん」


と、すなおにあやまりました。

まわりのこたちも いっしょに ジクくんに あやまりました。

ジクくんはわらって ゆるしました。

さとしくんは このまえ おとうさんから おしえてもらったことを みんなにはなしました。


「にんげんはみんないっしょ。せかいはともだち。だからにほんじんもブラジルじんもともだち」


みんな えがおになって いっしょに なかよくあそびはじめました。



 拓也は、デートの時に白人夫婦と白鳥の話を聞いて、この話を思いついた。

デートから3週間後には完成を迎えた。


「あっお疲れ様です。平川です。あの・・・絵本が完成しました。」


拓也は咲希に電話で報告すると、


「出来ました?素晴らしいですね。先生!今からすぐにお伺いさせて頂きますので!」


興奮しながらそう言ってすぐに電話を切った咲希。


到着してすぐに原稿を確認した。


「先生・・・これは、すっごくいいですよ!感動しました!私、今までの作品で一番好きです!ほんとに素晴らしいです先生!!」


興奮した咲希の姿を見つめる拓也。


「よかったぁ。この前のデー・・・。あっこの前3人で行った時に白人夫婦と白鳥の話を聞いて思いついたんだ。あの時に末次さんが誘ってくれたから出来た作品だよ。ありがとうございます。」


「やっぱり先生はすごいです!!じゃあこれ、持ち帰らせて頂きますね。」


原稿の入った封筒をバッグに入れて部屋を出ようとした時に咲希は思い出して言った。


「あっ先生!来週の土曜日の夜ってお忙しいですか?」


拓也は頭の中で予定を確認して


「いや、特に予定は入っていませんよ。何かありますか?」


「ほんとですか??来週の土曜日、里菜の誕生日なんですよ。それで家で誕生日会をする予定なんですが先生が良ければ是非、来て頂けないか思いまして。里菜が喜ぶと思うんですよ」


「誕生日会?いいですね。是非参加させて頂きます。何か欲しい物とかありますかね?」


「嬉しい~!!ありがとうございます。また里菜には内緒でサプライズにしますね!プレゼントはいりませんよ。先生が来てくれるだけで充分プレゼントになりますので。じゃあまた詳しくはお知らせしますね。私は急いでこの名作を見てもらいにいきますので!それでは先生。失礼します!!」


そう言うと、早々と咲希は部屋を出て行った。


咲希が帰って少しして拓也は焦りだした。


「誕生日会って家でするって言ってたなぁ!!どうしよう!!咲希さんの家にお邪魔するって事だよなぁ!!女性の家にお邪魔するなんて・・・。しかも担当者の家に作家が行くなんて・・・。まずいよなぁ。どうしょう・・・。断るかぁぁ。いや、でも里菜ちゃんが悲しむかもしれないしなぁ。どうしたらいいんだぁぁぁぁ!!!」


その夜、拓也の家に一美がきた。


「お邪魔~。あらっ拓也どうしたの?いつも以上に暗い顔して。作品が書けないの?」


「いや、作品は今日完成した・・・」


「おっさっすが!じゃあ他になんかあった?悩みなら、この一美ちゃんに言ってみ~!ほらほら~」


拓也は一呼吸おいて、誕生日会に誘われた事、自分は行っていいのか悩んでいる事を打ち明けた。

それを聞いた一美は、


「拓也はどうしたいの?行きたいんでしょ?その咲希ちゃんの事が好きになってるんでしょ?それなら行ったら?せっかく誘ってくれてるんだし、担当者とか作家とか抜きにして1人の男として行きなよ!里菜ちゃんも喜ぶと思うけど、咲希ちゃん自身も拓也にきてもらいたいと思ってるんだよ。だから、誘ってるんだから。この前のデートにしても」


「えっ?この前のデートは俺の気分転換を図る為に一緒に行ってくれただけで、今回の誕生日会も里菜ちゃんの為に誘っただけだから、咲希さん自身が来てもらいたいと思ってないんじゃないかなぁ・・・」


拓也の答えに、ため息をつきながら


「はぁぁ、拓也はほんとに昔っから女心が分かってないなぁ。もし咲希ちゃんが拓也の事、何とも思ってないなら子供の為でもわざわざ家に誘ったりしないよ!それに気分転換を図る為にとしても休みの日にわざわざ自分の時間を使ったりしないよ!!」


「そっそうかな?そんなもんかぁ~」


「そうだよ!!そんなもんなの!ちょっと考えたら分かるだろって。私だってそうなんだから・・・」


「えっ?私だってってどういう意味??一美もそんな経験あるって事?」


「う~ん、もう!!ほんと鈍感やろうだなぁぁ。とりあえず、咲希ちゃんは拓也の事が好きなんだと思うから拓也も自分の気持ちに正直になって向き合いなよっ!作家としてじゃなく、1人の男として。分かった?」


「う、うん!分かった!!ありがとう一美!自分の気持ちに正直になるよ。一美がいてくれてありがたいよ。これからも頼りにしてますよ姉さん!!」


「よし!!ほんっと世話のやける奴だなぁぁ。まぁもしも咲希ちゃんに振られたとしても私が慰めてあげるからさ。この姉さんがね!」


そう言って、2人は顔を見合わせて笑った。


それから部屋の片づけをして一美は帰った。

帰る途中、夜空を見上げて拓也が幸せになれるようにと願い目から流れた雫を拭いた。





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