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第二話 ヤツの名は①

 「よう」 


 いつぶりか聞いたことあるような呑気な挨拶。


 「そんでお帰り。ルウ。」


 一回死にかけてから夢もとい悪夢のような時間だったが、どうやら現実に魔虫を倒して無事故郷に帰って来れたらしい。


 我が故郷「ファーガス」。一本の巨木から成るこの国は人と魔虫が太古より共生をしている。この世界には7本の巨木があってファーガス同様大昔にそれぞれの巨木に国を興し人々は生活をしている。例外も存在するがここでは割愛する。おれが例の魔虫と戦っていたのは「サクラ」という国。

 サクラをはじめ各地で魔虫が暴れだした後もファーガスの魔虫だけは暴走したことがない。一説にはこの国の神虫の影響で魔虫が暴走しないのでは、と言われている。

 神虫とは魔虫よりさらに上位の存在で各国に一柱ずつ存在すると言われている。この国の人々は神虫から恵みを受けながら生活している。 

 このように魔虫とファーガスの人々は切っても切り離せない関係だが各地で暴走した魔虫をファーガスの人間が退治するというなんとも皮肉なことをしている。


 「それにしてもあの倒し方は笑ったわ!お前どうせおれのこと脳筋とか言っていつも馬鹿にしてるらしいがあれこそ脳筋ってもんよ!!」


 この愚兄、大爆笑である。実際色々と作戦だなんだと頭をこねくり回したが最後は力技だった。我ながら否定もできないのが悔しい。


 「そんな笑うならあの時もっとまともなアドバイスしてくれよ!」


 「こっちも時間なかったんだよー。」


 「というかどこから見てたの?」


 「そんなことより!」


 はぐらかされた。大方こっちが意識を失ってる間記憶を覗いてたんだろう。不快この上ないが一応命を助けられているのでチャラにしてやろう。

 

 「お前の光線、おれのとは性質が違うみたいだな。」


 「というと?」


 期待で少し胸が膨らむ。光線はおれの固有の技と言う訳ではなくこの糞兄貴も使える。更に言うと威力は断然あっちの方が上だ。更に更に言うとおれの光線は糞兄貴のそれの下位互換というわけだ。はぁ、。つまりは話を戻すとあのアホみたいな脳筋ビームと差別化ができるかもしれないということだ。


 「ただの熱を帯びただけの光線じゃなくて何やら相手の魔力に直接干渉できる性質があるみたいだ。あの魔虫に最後光線が通ったのもその性質が影響したんじゃないかと思ってる。どちらにせよいつもの光線じゃ返り討ちにされていたはずだからナイス火事場の馬鹿力って感じだわ!よっ!脳筋!」


 「当時の状況をそれほど細かく分析できるなんてすごいですね。」


 「そりゃぶっ倒れてる間に記憶覗いたもんね。、、あ。」


 頭に来たのでちょっとかまをかければこの様だ。どうせさっきの魔虫だって自慢の光線でスキルの耐性とか関係なくぶっ飛ばしてたに違いない。なんせあの愚兄の光線の上を行く威力の技はないと言われているほどだ。脳筋はどっちだよ。


 「ま、まあこれからは威力に磨きをかけるんじゃなくて例の性質に磨きをかければ役に立つ時がくるんじゃないですかね!今のままでもほとんどの魔虫は倒せてきたわけだし!そうすれば「ルウの光線はソウの劣化版!」とか言われなくて済むようになるかもしれませんよ!?」


 これでもフォローしているつもりなのか?せっかく故郷に帰ったというのに一々腹が立つ。


 「もう一個気になることが。」


 怒りを抑えて話を戻す。おれは修羅場を超えて心が広くなったのだ。


 「それについてはこれからはこれから話そうと思っていたところさ。」


 少し驚いた様子でいつもの調子に戻るソウ。


 「あの魔虫はやはり普通じゃない。何者かの手が加わっている。」

 

 「やっぱりそうか。」


 「まず光線もとい光属性に対する耐性なんて聞いたことがない。火を操る魔虫もだ。むしろその2つは魔虫の弱点だ。だからおれもお前も光線を使って魔虫と戦って来れた。炎属性のスキルをもつヤツだっておれは一人しか知らない。それほどレアな属性だってお前も知ってるだろ?」


 確かにおれも一人しか知らない。あいつも今どこかで戦っているのだろう。そんなことより。


 「ビシダエ型の魔虫でも飛び抜けて大きかったけどそれについては?」


 「それがさらに事態を不気味にしている。あれは魔虫の中でも最上位クラスの個体だ。元々のヤツはあの大きさだよ。だから普通の人が束になってもあれには元より敵うはずない。おれやお前でも苦戦を強いられる。そんな化け物をさらに化け物にしたヤツがいるってことだ。間違いなく只者じゃない。」


 聞くんじゃなかった。つまりそんな黒幕がいたらあんなのがまた出てくるかもしれないってことだろ?うわぁ、、、


 「まあただの突然変異って可能性は完全に否定できないけどね。瞬間移動やら斬撃無効やら他のスキルも強力な上にお前に対策したとしか思えないラインナップだ。やっぱり人為的なものを疑ってしまうな。」


 「あれは自然発生だって祈るわ。もうあんなのとは戦いたくないし。」


 「そうだな。それとあの魔虫、正式に名前つけないとな。これからヤツについて議論していくのにも不便だ。」


 「そんなもう何体も同じの出てこないでしょ。ビシダエ型特異個体でいいじゃん。名前とかつけちゃうと変に記憶に残りやすくなるじゃん。普通にトラウマだからできればきれいさっぱり忘れたいくらいで、、、」

 


 「そーもいかねえんだわ。残念だがちゃんと名前つけねえといけねえ事態になったぞ!相変わらず仲良さそうじゃねえか英雄兄弟!」


 やかましい老人の声。光の一族「流星群流星群(メテオ・シャワー)」のトップ。ショウビ。おれたちはこの人の指示のもと魔虫を対処している。昔めちゃくちゃこのジジイにしごかれた。全ての元凶。クソジジイ。クソジジイはクソジジイでもクソアニキより強いクソジジイ。おのれ、クソジジイ。


 「英雄だなんてあんたの前だと名乗るのも恥ずかしいですよ。」


 兄は珍しく謙虚だ。


 「ガハハハまあそう言うなよ!ルウはもうソウから聞いたな?例の魔虫は人為的にステータスを改造されているのではないか。そこからさらに悪いニュースだ。」


 えー、聞きたくなーい。というのが本音だ。そうはいくまい。


 「その魔虫がさらにもう一体発見された。」


 いつもは陽気な老人が眉間に皺を寄せ、深刻な顔をする。


 「ってことはあれがまた暴れだしたら、、、」


 それだけはほんとにやめて欲しい。


 「その心配はないらしい。その魔虫は超火球も瞬間移動も使えない。」


 「ならそこまで驚異はないですよね?上位の魔虫ほど暴走のリスクは低いはずですし。変に刺激するほうが逆効果だと考えます。」


 兄と同意見だ。何をそんな深刻そうな顔をしているんだこのジジイ。


 「その通り。問題はあれがサクラの国の神虫級魔虫だったってことよ。限りなく神虫に近い存在。つまりはこの世に一体しかいないはずなんだわ!」


 「神虫級!?改造前より強大な力を持っているということは解っていましたが、そうなるとあの魔虫は、、、」


 神虫級かあ、おれ、それをさらに魔改造したやつと戦ってたわけね。一回死にかけたくらいで助かってよかったわ。うん。それにしてもオリジナルがいたとはなあ。この次の話はもうわかりきっているけど聞きたくねえなあ。


 「複製複製(クローン)だ。まさに神をも恐れぬ所業よ。これでヤツが人為的な手が加わった個体だと言うことが確定したと言って良いだろうよ。」  


 あーあ。これを受け入れるには時間がかかるなあ。


 「つまりはまたあの魔虫が出現する可能性があるということですか。」


 「そうなるな。次はまた違った魔力やスキルを備えて来る可能性もある。今回のような初見殺しが何度も来たらウチも腹をくくねばならん。」


 まじかよ、、、またあんなのと戦わなきゃいけねえのか?


 「して、ルウよ。ヤツと戦った感じはどうだった。」


 「あんまり思い出したくないけど、、出鱈目に強かったっていうのは元よりその神性みたいのは一切感じなかった。」


 「だろうな。ここまでがサルビによる報告。」


 「サルビ?正式に入隊したってこと?」


 「サクラの国でお前が倒れたって聞いてすっ飛んで来たぞ!研究員ながら腕っぷしも優れたやつだったから助かったわホントに!」


 急に嬉しそうなジジイ。熱心に勧誘してたもんなあ。

 サルビとはおれの昔からの友人だ。元々様々な国の自然を調査していたがこれはなんと心強い。おれもついさっきまでサクラの国の防衛任務に就いていたがあそこは美しい国だった。今ならあいつが研究に没頭するのもわかる。

 ん?というかサルビが入隊してサクラまで調査に行ってその報告がもう届いている?え?おれ何日寝てたの???なんか強敵倒して一皮剥けた気でいたけどあの戦い方って毎回こうなっちゃうの????


 「、、、、、」


 「サルビなら大丈夫だろ。あいつだっておれたち並に光魔力を使えてたろ?」


 光魔力とはおれたち一族の一部の者が生まれつき持っている魔力とは別の力。おれたち兄弟の光線は光魔力よる光属性の技だ。

 それにしても察しの悪い愚兄め。おれが言葉を詰まらせている理由はそれじゃない。サルビとは殴り合いの喧嘩で決着したことがない。そんなことおれが一番理解してる。 

 まあそれはそれとしてあそこの真剣になったり騒がしかったり忙しいジジイは何か言いたげだ。あれはろくでもないことを言い出すときの顔。


 「そんでさ、あいつの名前どうしよっか☆」


 決まってねえのかよ。クソジジイ。


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