第一話 いきなりラスボス 前編
初投稿です。お手柔らかに。
「よう」
そんな軽い挨拶で目が覚める。目が覚めたということは死んではいないのようだが、、、
確かにおれは相手に敗けたはずでこんな真っ白で何もないような空間にいた覚えもない。やはり死んでる?ここはあの世?
うつ伏せのまま考えているとさっき挨拶してきた誰かが話を始める。
「ここは精神世界みたいなもんだよ。お前がほんとにあの世に飛んじまう前に魂を拾ったって感じかな。調子はどうだい?我が弟よ。」
あー誰かと思えば、あの人そんなこともできんのかよ。なんでもありだな。
「最悪だよ。まじで死んだと思ったんだから。てかほんとに死んでないんだよね?おれ。」
「まあ仮死状態っていうのが正しい表現かな。本体の方は空っぽ。」
軽く安堵する。まだ状況が飲み込めてない自分に兄がべらべらと説明を続ける。
「まあ相手が悪かったかな。相手はビシダエ型の特異個体だ。
光線吸収反射に瞬間移動、斬撃無効に超火球。
スキルてんこ盛りのまさにラスボスクラスだわな。お前の光線やそれを応用した斬撃を無効化して近接も瞬間移動で許さない。その上超火球を使う魔虫なんて聞いたことがない。
こんなのが自然発生するのはやっぱり不自然だよなあ。」
そう、今出てきた魔虫とは本来、人類に対して積極的に攻撃を行う対象ではなかった。むしろおれと兄の一族は共生しているくらいで人類全体としては触らぬ神に祟りなしといった認識だったのだ。
それが近年随所で突然現れては人類に攻撃をする。そんな魔虫と呼ばれる存在に対処してきたのが「光の一族」と呼ばれるおれたち一族になる。
最近普通の個体にはありえないような強力なスキルをもったものが現れるようになりおれはその出鱈目な強さをもった魔虫に敗北したところだった。
だんだん意識がハッキリしてきた。ここで今一番気になっていることを聞く。
「あの魔虫、どうするの?おれやられちゃったし。」
「え?お前が倒すに決まってるじゃん。」
「え?」
「え?」
「だってほら、おれやられたのよ?エネルギーも残ってないのよ?」
「エネルギーは補給してやるから。」
「また戻ってきたところで勝てる気がしないんですけど。」
「対策方法教えたげるから。」
「てか兄ちゃんが倒したほうが早くね?」
「おれの肉体は今ここに無いから無理。」
「、、、、、」
強引に丸め込まれた。てっきりお役御免でお暇を頂けるものだと思ってた。すごく嫌だ。だって怖いもん。
普通嫌でしょ。デッドボール食らったあとの次の打席なんて立ちたくないでしょ。当たり所悪くて退場もんなんだけど。早く病院で精密検査受けないとなんだよ。
文字通り今死んでるようなもんだし今。九死に一生を得たのよ。この命大事にしたいのよ。
「この場で対処できるの君だけだから。頼んだわ。そんな嫌そうな顔するなって。」
「わかってるけどさあ、それならどうやって倒すのか教えてよ。」
もうヤケクソである。このままほっとけばこの場は壊滅は必至だ。兄がこんな形で救援に来たのだから、本当におれがやるしかないのだろう。まったく嫌なお仕事である。はあ、逃げたい。
「光線は反射されなきゃいいんだ。斬撃が効かないなら殴ればいい。瞬間移動は防げないけど火球を撃った後なら隙ができる。」
「要はどうしろと?」
「火球を撃った隙に一気に近づいて殴る」
うわぁ、、、脳筋。そんな戦い方できるのあんたくらいだよ、、、と口には出さない。出したところであれだし。
「殴ると言っても光線を撃つときのエネルギーを込めてな。今までの疲労は無くなって身体は軽くなってるはず。瞬間移動にはある程度対応できるさ。さっきも言ったけど火球を撃ったあとがチャンスだ。確かに化け物みたいな相手だが本来のお前に倒せないヤツじゃないよ。ってわけでよろしく。」
そう言われるとなんだかできない気がしないでもないが、光線のエネルギーを拳に込めて殴るなんてやったことがないのでぶっつけ本番である。
そんなことには触れず実の弟を再び死地に送りこもうとしている兄は人でなしに違いない。
「大丈夫!光線の応用も初めてじゃないだろ?こういうのは一発勝負で案外上手くいくのよ!そら、行ってこい!」
兄に背中を叩かれて精神世界にあった意識が現実にぶっ倒れてる肉体に吸い込まれていくのだった。