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生産職吸血鬼は異世界の夢を見るか  作者: 吸血鬼まつり
85/112

85.期待の新星

 王都冒険者ギルドの雑然とした喧騒の中を、エメライト・リンクスとシュカ・イスバールが歩いていた。


 王都アイゼルコミットには冒険者に依頼される仕事が毎日山のように発生している。

 小さなものでは素材の採集、荷運び、人探しといった単純にマンパワーが必要とされているものから、魔物の討伐、馬車の護衛といった戦闘能力を求められるものまで様々である。

 そのため、この冒険者ギルドは早朝にもかかわらず、すでに多くの人で溢れているのである。

 彼らはみな、それぞれの目的を持って動いている。日銭のため、権力のため、名誉のため……その点で言えば、エメライトとシュカの二人の目的は、『自立するため』であった。僻地のオールデ村から出てきて、それぞれが一人の人間として自立し立派になること。それが二人の当面の目標であった。


「エメラ、何かいい仕事ありそう?」


 シュカは、壁に設けられた非常に横幅の広い掲示板を見ているエメライトに話しかける。


「ん……、シュカも、自分で探してみてよ……」

「うーん、私あんまり仕事運ないからなあ。こないだの依頼だって、行ってみたら聞いてた三倍くらい魔物がいてひどいめにあったし」


 この掲示板は一見無節操に依頼票が貼られているように見えるが、実際には難易度で区分けがされている。右から左に向かって、初級者向けの簡単な依頼から上級者向けの困難な依頼へとグラデーションを描いているのである。

 二人が立っているのはその中でも右端から少し左に進んだ地点の、初中級者向けかつ戦闘能力が必要とされる区画であった。


 そんな二人に、初級者中級者双方からちらほらと視線が向けられている。

 実は、この二人は新人冒険者の注目株なのである。

 彼女たちが冒険者デビューして二ヶ月余り。その間に、質のいい武装を整え、数回の魔物討伐の依頼をこなし、少し前にはダンジョン探索をしたらしいという噂も入っている。

 そんな彼女たちを駆け出しの冒険者たちは羨ましく思い、目標のように捉えていた。そして中級者から見れば伸びのいい新人といった様子でもあり、美少女二人ということもあって自分たちのパーティに抱え込みたいという欲望を抱いている者たちも存在していた。

 現在はそういった意思がいくつも交錯しており、結果的に二人の周囲は無風なのであった。


「これ、いいかも」

「うん? えーと、『怪鳥スパルナの羽根、求む』。『南東のピリヤ山に出没する美しい七色の羽根を持つ魔物、スパルナ(レベル十五前後の個体が一般的)の羽根を一羽分以上納品してほしい。状態が良好なものを希望』、と。報酬もなかなかいいし、規定の量を超えれば上乗せ、か……行ったことない場所だし、興味あるね。いいんじゃない?」


 そう言って、シュカが依頼票をもぎ取る。あとはこれをカウンターに持っていって契約を交わせば仕事開始だ。

 二人が振り返ったのを見て周囲の人々は目を逸らすが、エメライトは基本的に人の目を見るのが苦手なためそれには気付かず、シュカはシュカで大雑把な性格のため全く気付いていないのであった。


「やっぱいいな、元気っ子のシュカちゃん」

「いやいや、おとなしめなエメライトちゃんのが好みだね、俺は。そういえば、ちょっと前からあの子が着てる衣装、メイドさんみたいでかわいいよな……」

「ああ、詳しいことは分からないが、二人とも凝った衣装だ。似合ってるのはもちろんだが、機能性も高そうだし素材も相当上質だぞ、あれ……どこで手に入れたのやら」


 少し前からエメライトとシュカに注目していた中堅男性冒険者二人が話し合う。


「ちょっと王都では見たことがないタイプのデザインだ。それとなく聞いてみてもいいかもな」

「そうだな。エメライトちゃんが持ってる武器も最近二巨頭が流行らせてるらしいっていう魔法銃だし、そのあたりなのかもしれないな……」


 そんなことを話していると、後ろからやってきた男にそれぞれ拳骨を落とされる。


「ほら、俺たちも仕事だ。今日も日銭を稼ぐぞ」

「はいはい、行きますって」

「全く、手を出す前に口を出してくれよ……」


 こうして、冒険者たちの一日は今日も始まったのであった。


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