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生産職吸血鬼は異世界の夢を見るか  作者: 吸血鬼まつり
24/112

24.うまいめしはけんこうによい


「名前は……そうじゃな……魔法銃マジックブラスター、プロトといったところか。先行量産型と付けておけば完璧じゃな」


 工房のテーブルに並んだ二十丁の魔法銃マジックブラスター:プロト先行量産型を見て、満足げに頷くシエラ。

 魔法銃マジックブラスターというのはひねりのなさすぎる名前だが、これは武器の名前というよりもジャンル名にあたるものなので、ひとまず問題はない。

 

「工程もある程度簡略化して、ランクのそれなりな金属でも作れるように改良したつもりだが、どう思うかの」


 エルムに渡した数枚の紙にはシエラの残した設計図や素材一覧、作業工程が記されている。

 

「はい、問題ございません。私が監督して補助すれば、雑用係たちでも量産は可能かと」

「それはよかった。まあ簡単に、かつ応用が利くようにがコンセプトじゃからな」

「素晴らしい計画かと思います。それでは、事前のお話通り、試していく中で改善点があればこちらで試作しても良いということでしょうか?」

「うむ、どんどんやってくれ。わしには扱えん武器じゃからなあ、好きにやってくれ。ある程度成果がまとまったら定例会ででも報告してくれればよい」

「はっ、ありがとうございます、シエラ様」


 シエラもいつでも地下工房にいるというわけでもないので、やることがあればエルムやその配下の眷属たちにとってもいい暇つぶしになるだろう、と気軽に考える。

 ……数カ月後、提出された成果を目にしてシエラが度肝を抜かれるのはまた別の話である。

 

 

「これはまた、豪勢じゃな」


 リサエラに呼ばれ、上層の一室に向かったシエラを待っていたのは豪華なディナーであった。

 二人分とは思えないような料理の種類である。

 ちなみに、エルムなどは普段から眷属用の大食堂で食事を摂っているようで、彼女たちは基本的にシエラたちとは食事を共にすることはない。

 食事に誘ってみようかとも思ったのだが、普段の様子を見ていると彼女たちも萎縮してしまいそうだし、部下との接し方というのもなかなか難しいものである。

 

「ええ、せっかくですので、備蓄の食料から気になったものを使ってみました。現実になってから初めての経験ですので」


 なるほど、とシエラは頷く。

 この天空城には大きな倉庫があることは先に述べたとおりだが、その中には冷凍庫になっている区画が存在する。といってもそれはただの冷凍庫というわけではなく、中に入れたものの腐敗を完全に止めてしまう特殊な付与がかかっている。

 そこには、シエラたちが討伐した魔物や動物等の肉やその他野菜や果物など、様々な食材が保管されている。

 《エレビオニア・オンライン》は食事を取ることで食材や調理法に応じたステータスボーナスを得ることができる。普段なら取得経験値アップやアイテムドロップ率アップなどをかけておき、ギリギリの戦いになるエンドコンテンツではステータスにボーナスをかけておくのが一般的な使い方であった。

 味覚は画一的なもので、保存されている味覚データがエンジンで再生されているだけ、という雰囲気であった。

 仮想現実上で満腹感を与えてしまうと、現実で栄養失調に陥ったり、餓死してしまうことが予想されていたためである。

 

「なるほど、確かにこの世界での味というのは気になるな。グランドマスターメイドの料理はボーナスも格別についていたことだし」

「ふふ、今日の料理はメイドスキルに寄らない、新しいものも作ってみたんです。シエラ様がおっしゃっていたことが気になりましたので」

「ほう、それは楽しみじゃな。では早速食べるとしようか。いただきます、と」

「はい、いただきます」



「おお……このビーフシチュー……特に良いな……」


 シエラが感動しているのは、濃厚なビーフシチューである。

 野菜や肉の味が存分に溶け出しており、深みを感じる味わいである。

 他の料理も涙が出るほど美味だったが、特にこのシチューに関してはこの世のものとは思えないと感じてしまう。

 

「そのシチューが、レシピになかったものです。私の真の自作料理をそう言っていただけると、非常に嬉しいです」


 シチューを褒められたリサエラは、珍しく、わかりやすく嬉しそうに微笑んでいる。

 

「実は、ビーフではないんです、そのお肉。……なんだと思います?」

「ん、そういえばこの味、歯ごたえ、牛ではないな……、なんだ……?」


 首を傾げたシエラを見て、リサエラが微笑む。

 

「倉庫にあった、凍氷王龍エルダーフロストドラゴンのお肉を使ってみたんです。魔力を抜かないと冷気を発し続けるので下処理に多少苦労しました」

「はー……どらごん……これがドラゴンの味か……。極上の味なんじゃな、ドラゴンというのは。筋肉の塊なのかと思っておったが」


 シエラが口をぽかんと開ける。絶賛しつつ食べていた肉がまさかドラゴンのものだったとは夢にも思わなかった。

 凍氷王龍エルダーフロストドラゴンといえば、ある大雪山型ダンジョンのダンジョンボスである。

 その核が武器を作るのに必要だったので一時期通って乱獲していたのだが、その龍の肉がこんなにおいしいとは。

 

「料理は昔から完全にリサエラ任せだったが、これはかなり奥が深そうじゃな……」

「はい、これから様々な食材を試すのが楽しみです」


 リサエラのほうも、いろいろな面で新しい工夫が進んでいそうで楽しみだ。

 これは負けてられない、とシエラは思いつつ至福の食事を味わい続けるのであった。

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