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生産職吸血鬼は異世界の夢を見るか  作者: 吸血鬼まつり
19/112

19.再会は突然に


 シエラはその日の昼過ぎに、錬金術ギルドと鍛冶組合への登録に成功していた。

 特に何も問題なく、それぞれの受付で名前を書いて登録費を払っただけだ。

 ……見よう見まねでなんとか覚えた自分の名前はずいぶんと不格好な雰囲気の文字になってしまったが。

 発行された鍛冶組合の金色のカードと錬金術ギルドの黒色のカードを眺めながら、シエラはにやりと微笑んだ。

 

「ふむ……やはり物理カードというのは満足度が高いな」


 前の世界ではトレーディングカードの収集をしていたこともあって、この手のものには実は弱い。

 鼻歌交じりに自分のサインの刻まれたカードを眺め回したあと、インベントリにしまいこんだ。

 

「いやしかし、特に何も問題が起きなくてよかった。こういうところの初めての訪問でイベントが起きるのが《エレビオニア》定番のクエスト導入パターンじゃったしな」


 この世界はゲームではないとはいえ、ここまでファンタジー感が強いとお約束というものを意識せざるを得ないのである。


「……ふむ、まだ日も高いが城へ戻ってみるか。この地のことも気になるがやはり一人ではのう」


 今までに出会ったブラックドッグやロックゴーレム程度の敵ならば自分でも軽く処理できるだろうと今のシエラは分析している。

 ただ、それ以上の敵が出てこない保証は全くないし、この世界で死んでしまえばどうなるかもわかっていない。

 友人たちのように戦闘職種でないことを少しだけ後悔しつつ、シエラは無人の路地裏で目を閉じ、リコールを詠唱した。

 

 

 目を開けると、そこは既にシエラの自室であった。

 まだ何度も試しているわけではないのでリコールに不安はあるのだが、これを使わなければ城に帰れないのが困ったところだ。

 

「さて。とりあえずエルマでも見つけて現状の確認を――」

「お呼びでしょうか? シエラ様」

「ぉわっ!?」


 つぶやきつつ扉を開けると、そこには目の前にエルマが立っていた。

 シエラは驚いて後ろにすっ転んでしまう。

 

「い、いや、ちょうどよかった。して、おぬしはここで何を?」

「城の警戒結界に転移反応がありましたので、シエラ様かと思いお部屋までお迎えに上がりました」

「ふむ……そうか、そういえばあの結界は転移の反応が分かるのだったな……。何か変わりはあったか?」


 シエラが立ち上がりつつ尋ねる。

 

「いえ、特記事項は何も。現在、天空城外部調査部隊の第一陣が初回の捜索に出ております。これより二時間後に帰還予定です。また、地下迷宮調査部隊の第一陣も初回の捜索中で、こちらも二時間後の帰還予定となります。また――、おや? 今、結界に転移反応が」

「……もしや、敵性か?」


 この天空城《アルカンシェル》にはギルドシェルメンバー以外に対する認識阻害や転移阻害の結界が常時発動している。

 そのため堂々と転移できる敵性存在はいないはずだが、ゲーム時代とは異なる世界なのだから、何がいても不思議はない。


「――いえ、これはシエラ様のリコールと同様の魔力パターンです。おそらく、《アルカンシェル》のギルドシェルメンバーの皆様のいずれかかと」

「おお、ようやくか……! まあ誰であれ、探しに行くとするかの」


 自由人な《アルカンシェル》メンバーのことをあまり心配していなかったとはいえ、未知の世界で再会できるのであれば早めに果たしておきたい。

 転移してきた何者かがまたどこかへ飛んでしまわないうちに――と歩き出そうとしたシエラの、隣のドアが同時に開いた。

 シエラの部屋の隣室。その場所を自室にしていたのは紛れもなく、ヤツだ。

 

「――リサエラ!」


 エルマたちのものとはまた違った豪奢なメイド服を身にまとった、黒髪ショートカットの女性に声を掛ける。

 その声に振り向いたリサエラは、シエラを見て固まった。

 

「……リサエラ?」

「……シ、シエラ様?」

「ああそうじゃ、わしがシエラだとも。……久しいな」


 シエラがそう応えると、リサエラはこちらへ猛然と駆け出して――シエラを抱きかかえ、押し倒した。


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