6、「カルボナーラ」「ジト目」「仏教」
お腹が空いた。佳奈ちゃんに何か作ってもらおう。
そんなことを思いながら居間に向かうと、佳奈ちゃんはソファでテレビを見ていた。何の特集かはわからないけど、とりあえず佳奈ちゃんが好んで見るぐらいだから難しい内容なのだろう。そう思って横目でチラッと見てみたが、どうやら仏教の特集らしい。何の宗派かまではわからないが、とりあえずお寺の様子が見えたのでたぶん仏教。
そんな杜撰すぎる推測をしながら、邪魔するのも悪いので私はキッチンへと向かう。家にあるのは、卵とベーコン、後は生クリーム。御膳立てされているようなものだが、カルボナーラを作るとしよう。
「佳奈ちゃん、カルボナーラ作るけど食べる?」
「うん? 私仏教になるから外国の物食べなーい」
たぶんテキトーに応えてるな佳奈ちゃん。まあいっか。
少し多めの一人分を手際よく作り、佳奈ちゃんの横に座る。いつの間にか番組が変わっていて、イタリア料理の番組になっている。
佳奈ちゃんは隣でカルボナーラを食べ始めた私を見るや否や、案の定寄越せ寄越せと要求してきた。
「佳奈ちゃん仏教徒になるから外国の物食べないんじゃないの?」
「じゃあ仏教やめるー!」
いいのかそれで。まあ、元から本気ではないのだろうけど。
フォークで一口分を取り、佳奈ちゃんの口の前に持って行った。予想通り、口を開けて来たので寸前のところで引っ込めた。
ムッとした顔をした佳奈ちゃんの口の前にもう一度フォークを持っていくと、かぶりついてきたのでこれまた引っ込める。何度やってもこういう反応してくれるから、私はついついやってしまうのだ。
それをさらに何回か繰り返すと、佳奈ちゃんは痺れを切らしたのか口を尖らせ、ジト目でこちらを睨んできた。やっとその顔をしてくれて私は大満足だった。その顔が好きで好きで堪らない。だから私は佳奈ちゃんをいじめるのがやめられないのだ。
そんなことを思いながらフォークを自分の口へ運び、食べてしまう。
佳奈ちゃんはこの世の終わりを見たかのような顔でこちらを見ていた。面白いので放っておき、次の一口を食べ進む。少し冷めてしまったけど、佳奈ちゃんの良い顔が見られたからトントンかな。
「美佳、いい加減寄越してよ」
「自分でフォーク持ってくればいいでしょー」
ああ、おいしい。佳奈ちゃんが困っている表情やジト目でこちらを見る表情が本当に好き。ご飯が進む。
佳奈ちゃんは私の言葉を聞くと、食器棚の方へ飛んで行った。引き出しからフォークを持ってきて、私と一緒にパスタを頬張る。
やっぱり、幸せだなぁ。佳奈ちゃんと一緒に暮らし始めて、本当に良かった。
「佳奈ちゃん」
「何?」
「好きだよ、愛してる」
「え、ちょっ、いきなりどしたの?」
照れてる顔も可愛いなぁ。本当に、好き。
「何でもないよ。ただ、言いたかっただけ」
ああもう、いますぐ佳奈ちゃんを食べちゃいたいけど、それはダメ。
もっともっと、佳奈ちゃんが私から離れられないぐらいになってからじゃないと、拒絶されてしまうかもしれないから。そう言う欲望は、まだ胸の中に取っておかないと。
拒絶なんかされたら、私はもうどこにも行く場所がないんだから。
うーん微妙。こじつけた感が半端ない。
捨てられたくない女の子の話なんだけど、もっと長く書けばよかったかな?
今回は特に四つ目のテーマは考えてません。悪しからず