4、「オレンジ色」「雪」「氷」
短いです
オレンジ色の雪が降った。いや、正確にいえば夕日に照らされてただの雪がオレンジに光っているように見えただけだが。
娘は大はしゃぎで外に出て、外に積もる白い雪を見て首を傾げた。
「おとーさん見て―! 雪の色が元に戻ってる!」
「そうだなあ、どうしてだろうな」
盛り上がっているのに水を差すのも気が引けて、話を合わせておく。
娘は素手で雪を触り、器用にぺたぺたと雪だるまを作っていく。その姿が見えるだけで心がいやされ、嫌なことを忘れられる。
暫くしてふと、妙なことに気が付いた。娘の手が全く赤くなっていないのだ。雪を触っていれば自ずと赤くなってくるはず。それなのにどうして赤くなっていないのだろう。
それを疑問に思うと同時に、両の手に痛みが奔った。
見れば、私の手はまるで雪を触っていたかのように赤くなってしまっているではないか。
「ねぇ、何してるの?」
後ろから家内の声が聞こえて来た。振り向くと、家内は氷のような視線を私の方に投げてきていた。
とっくに日も沈んで、オレンジに染まっていた世界はどっぷりと闇に隠れている。
「早く戻って来てよ……」
そんな言葉を吐いた家内の声は震えていて、とても頼りなく聞こえた。一体何があったというのだろうか。
娘は何か知っているだろうか。そう思って後ろを向いた私は、愕然とした。
先程までいた娘の姿はそこにはなく、少し離れた場所にあると思っていた雪だるまは私の目の前にあったのだ。
手のひらに落ちて来た雪が、私の体温で溶けていく。
それを見て思い出し、はっと顔を上げる。
そこに娘の姿はない。幸せだったあの日々は、氷のように溶けてしまったのだ。
今回の四つ目のテーマは「幻覚」です
娘さんを失って精神崩壊した男の人のお話。これから先もこんな感じのことが繰り返されるんでしょうね
救われないなぁ(お前が書いたんだろ)