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悪役令嬢ですが気にしないでください。  作者: よんに
学園初等部編
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西棟と挨拶


翌日の放課後、畏れ多くもリアム殿下自ら私を案内してくださるとの事で現在、校内を共に歩いているのですけれど…


「皆様とても興味がおありのようですねぇ」


「第一王子とその婚約者候補者が共に歩いていれば気にはなるだろう。」


それもそうかと納得していると、何やら背後から騒がしい声がしてきた。


何だろうとリアム殿下と二人振り返ると


「何でアナタが王子殿下と一緒にいるのよ!!」


ポニーテールの赤髪が可愛らしい勝ち気な猫っぽい子女が私を睨みながら近寄って来る。



「ごきげんよう、トレッサ・レジャール侯爵令嬢。その様なお顔をされては折角の可愛らしいお姿が勿体無いですよ。」


暗に『今可愛らしくない顔をしてますよ』と言ったのだけれど、どこか素直な彼女はハッとした顔の後ゴホンっと令嬢らしくない咳払いをすると、キリッとした顔で私を睨む。


あらぁ、そのお顔が勿体無いと言ったのですけれどねぇ…馬鹿な子ほどなんとやらと言いますか…



「どうして、ルーナリア・アクタルノ公爵令嬢が王子殿下と一緒にいるのかと聞いているのよ!!」


「生徒会に入る事になりましたの。殿下はまだ学園に慣れていない私を生徒会室まで案内してくださっているのです。そして生徒会の先輩としてお話を聴かせて頂いているのですよ。」


穏やかで柔らかな口調と微笑みで言うと激昂していた彼女は少しその怒りを落とし、いきり立っていた肩を下げる。


「生徒会…」


「ええ。放課後は基本生徒会室で学園の事を話し合ったり、行事について考えたりと素晴らしい取り組みをなさっていると聞いて、私感銘を受けていまして…。携わる事が出来てとても嬉しいのです。」


「…そう。」


随分と勢いの失くなった彼女に「あ!」と、名案を思いついたように両手を合わせて微笑む


「トレッサ・レジャール侯爵令嬢も宜しければ御一緒に見学なさらない?成績首位者は推薦が無くとも立候補で―――――」


「―――あたくし、アナタと違って暇ではなくってよ!!」


遮って言う彼女は僅かに嫌そうな顔をしている。

とても分かりやすくて微笑ましく微笑ってしまう


「そうですか…。残念ですわぁ。もしお時間が出来たのなら是非お声をお掛けくださいね。」


「そ、そうね!そうするわ!じゃあ、アナタも精々生徒会の役目を果たすことね!」


「ええ、頑張りますねぇ」


「ふん!では、王子殿下、失礼致します!」


リアム殿下にカーテシーをしてクルッと方向転換してそそくさと遠巻きにしていらっしゃったお友達の方々の所へ行かれた。


なんだか、猫じゃらしを一回して行かれたみたいな気分になりますわねぇ



「…君は躱すのが上手いな。」


「まあ殿下。それは褒めてくださっていますの?」


「もちろんだ。」


「ふふっ。ありがとうございます。光栄です。」


穏やかな雰囲気を残し麗しい二人が去った後、その場にいた生徒達の間で『リアム殿下とルーナリア嬢推し会』が結成されたそうな――――。





ロズワイド学園には東棟と西棟があり、教室や各科の実習室、ダンスホールや訓練場などが東棟。

職員室や資料室、図書館などが西棟にあり、生徒会室も西棟に配置されている。

主に生徒が近寄り難い場所が西棟で、東棟と西棟の間にある中庭の花壇を区切りとして入る者はあまり居ないらしい。


「サボりスポットとして人気だが。」


「まぁ…。殿下はお使いに?」


「極稀にな。……避難場所として良い。」


……人気者は大変ですねぇ


苦い顔のリアム殿下にその言葉は掛けずに微笑んで話題を変える。


「アーグが西棟の奥にある林が日当たりが良いと手紙に書いていたのですけれど、この先には林があるのですか?」


「西棟から少し離れた所にだが。精霊様の好む魔力が漏れる大木が林の奥にあり、高学年になると行くこともあるらしい。」


“らしい”と言う事は全員が行く訳ではないのでしょうか。精霊様というお伽噺のような存在を否定するにはこの国は精霊様の恩恵と言われるモノが多く、それ故に憧れる者は多くいる。

私もその一人ですが…


「精霊様……お会いしてみたいです。」


「そうだな。会いたくないと思う者はこの国では少数派だろう。」


そう言う殿下の目には期待と憧れに満ち溢れていて年相応の姿を初めて見た。

輝く琥珀色の瞳を盗み見て、少し気恥ずかしさを感じて目を逸らす。


流石万人が認める美形。私自身で見慣れているのに圧倒されてしまいそうです…。


「それと、林は立ち入り禁止区域だ。気をつけるように。」


「はい。」


いつもと変わらない微笑みと口調のはずだけれど、視線を向けられなかった事には気づかれていませんように。





西棟の二階に『生徒会』の表札がある扉の前、私は少し長く目を閉じてゆっくりと目を開けて微笑む



私の区切りの仕方。私の息の仕方。

きっと大丈夫。やり遂げてみせる。


初めてお会いしたパーティでリアム殿下に頂いた道導を今も尚、私は大事にしているから。



ノックして開けられた扉の先、こちらを見遣る数人の先輩を見渡して、最後に目に付けた人に一等()()()()()



隣で僅かに息を呑む音を耳にしながら私はその人から目を離さずに口を開いた。





「初めまして、生徒会の皆様。本日よりお世話になります、ルーナリア・アクタルノと申します。不束者では御座いますが御指導御鞭撻の程、どうぞ、宜しくお願い致します。」



完璧な優雅な微笑みと礼にその場の者全てが魅せられる中、甘い微笑みを向けられた者は目を細めた。



それが何を意味するのかを気づいた者はほんの僅か



「歓迎するよ、ルーナリア・アクタルノ嬢。共に学園に尽くしより良い学園にするために頑張ろう。」






―――さぁ。




暴いて差し上げましょう。



―――学園に蔓延る悪しきものを。




排除してしまいましょう。



―――学園に巣食う悪い虫を。





一匹残らず、仕留めてみせます。



甘い微笑みに隠した殺意にも似た感情に気づく者はいなかった。




皆様御自愛下さい。

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