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とある夫人の話

とある夫人視点。



我がロズワイド王国の第二王子の誕生日パーティには各家の子息息女が集まり、社交の場とされる


今回の注目は病弱で領地から出られないアクタルノ公爵家の御息女


麗しい“氷の公爵”と比喩されるアクタルノ公爵当主の娘とあらばどれ程の可憐な令嬢だろうと皆が楽しみにしていた。



第二王子の友人となる年代の子供達は光の世代と呼ばれるほどに優秀な者が多いと言われている


それは病弱とされているアクタルノ公爵令嬢もだ。


可憐で聡明ならば殿下方の婚約者候補ともなるでしょうし、御息女の居られる家は少し目つきが違う

ライバルですから見定めなければいけない



「母上さま、何をそんなに楽しみにしているのですか?」


「マムルーク、アクタルノ公爵令嬢の噂は耳にしていて?」


息子のマムルークが隣でキョトンとした顔をする


親の贔屓目無しに可愛らしい息子の顔は同年代から上の年代の子供達まで目を引く

その顔に加えて"土を司る公爵"と呼ばれるアッシリア家の嫡男であればそれはもう放っておくことはないでしょう


第二王子のオスカー殿下とも幼い頃からお付き合いがあるから大人からのゴマすりだってある

私の息子は愚かではないから笑顔で流しているけれど、そんな聡明な姿は六歳児とは思えない


それが私の息子だけでなく、オスカー殿下や“火を司る侯爵”のレジャール侯爵令嬢もだと耳にする

やはり光の世代ね。



「今回の誕生パーティに初めて公の場に姿を見せるご令嬢よ。アクタルノ家はわかるわね?」


「三大公爵の内、“水を司る公爵”と呼ばれる家です。」


「えぇそうよ。良く勉強できているわね、偉いわ」


嬉しそうに笑顔を浮かべるマムルークに微笑み、手に持つ扇を広げて口元を隠す


「アクタルノ家のご令嬢はまだ確かではないけれど魔力が豊富で、しかもとても聡明だと噂されていているの。それが意味すること、わかるかしら。」


「……オスカーさまの、婚約者候補…ですか?」


賢い息子に正解と僅かに頷くと少し目を細め会場の入り口へと視線を向ける


殿下の側近となる者として幼いながらも役割を心得ているのだととても誇らしく思う


公爵家の娘で魔力が豊富で聡明。

それを王妃にと考えない者がいるだろうか


アクタルノ公爵当主もさぞ大事に育てているでしょうね。

あの堅物のような“氷の公爵”がどのような親なのか、それもとても楽しみだわ



「アクタルノ公爵当主様、並びに公爵夫人様、御息女様、御到着致しました。」


その声に話し声のしていた会場が静まり全ての人が入り口へと視線を向けた。


そして現れたのはアクタルノ公爵夫妻と、


―――――息を呑むほどに美しい少女



ミントグリーンのふんわりと広がるドレスを身に纏い柔らかな笑みを浮かべる可憐な美少女に会場が息を呑み、見惚れたと空気でわかる


護衛だろう少年にエスコートされて歩くその姿は幼いはずなのに美しく儚げで、目を逸らせない見えない引力があるのかその美しい少女から視線を逸らせないでいた。


すると小さな身体がよろけて誰かの「あっ」と言う声と共に護衛の少年が慣れた様子で支えていて、病弱なのは本当なのだと心配になってしまう


可愛らしい笑顔で支えた少年にお礼を言ったらしい少女に、高位貴族の幼少期は些か傲慢な子が多いけれどあの令嬢はそのような傲慢さはないのだと感嘆して好感を抱く


たった数秒の時間に起きた出来事と雰囲気に、あの美しく儚げな少女が殿下の婚約者候補になると確信を持った。



「…マムルーク。」


「ッ、はい、母上さま。」


あの少女に見惚れていたとわかる反応と赤らんだ頬に微笑ましさを感じ、叶わないであろう息子の初恋に少し残念に思う


あのような愛らしい娘がいたのならさぞかし自慢で誇りだろうとアクタルノ公爵夫人に目を向けると、公爵も夫人もあの少女へ目を向けることなく前に進んでいた。


その姿に少しの違和感を覚えながら「王族御一行が到着された」という声にその意識はまた入り口へと向いた。




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