新しい未来
王城庭園の華やかなガゼボに四人で集まり、お茶を楽しみながら話をする時間。
感慨深く思うと同時に、とても嬉しかった。
「悪い領主さんって本当に顔に出るんだなぁってびっくりしました!」
「あらあら。ふふっ、顔に出ていたの?」
「それはもう!平民の聖女なんて持ち上げればわけないぜ…ってのが顔に出てたんです!もうほんっとむかついて!!」
拳をギュッと握り震える様子から、そういった相手は少なくなかったんだと察した。
今の貴族当主等は大半が貴族至上主義の思考だ。
勿論そうではない方々もいらっしゃるけれど。
「オスカー様がいなかったらもっとわかりやすく言ってくるってトレッサ様は言ってましたけど、酷くないですか!?」
「そうねぇ。品のない方は私も好まないわぁ」
あの事件の後、トレッサ様は告発した者として陛下から賛辞を受け没落レジャール侯爵家から抜けることになったのだと聞いた。
それ即ち貴族位を抜ける事になってしまうのだけれど、陛下からの賛辞やトレッサ様の優秀な実績を鑑みて貴族令嬢のままだ。
けれど誘拐された事により凌辱されたのではないかと憶測する者達もいたせいで彼女は肩身の狭い状況が続いているらしく、王宮に赴く事も憚られるから暫くは顔を見せられないと手紙をくださった。
全く持って不愉快極まりないけれど彼女はそれで良いのだと納得しているようで、学園に通い全科目を真面目に取り組んでいるという。
学園の卒業資格を取ればまともな就職先を掴めるし、職が安定すれば自分はどうとでも生きていけると手紙に綴る彼女は本当に強く、尊敬する。
そしてそれは今目の前で彼女と親しい関係を続けている可愛らしい彼女も同じ思いを抱いているでしょう。
「トレッサ様、卒業したらあたしと一緒に領地周りしてくれないかなぁ」
頬杖をついたフィオナさんにオスカー殿下が呆れた目を向けた。
「あの未来の女傑と?それなら僕は遠慮しとくよ」
「王子様いなかったら駄目ですよー!逃しませんからね!あたしの盾役!」
「もっと言葉包んで言いなよ」
顔を引き攣らせるオスカー殿下がフィオナさんと一緒に領地を回っているのだと聞いたときは驚くと同時に感心した。
国内であっても王族が動き回ることはあまりない。
視察だとしても一度行けば次は少し期間が空くものだけれど、報告書を見た限りこの方々は何処かに腰を落ち着けることなく動き回っていた。
学園にも卒業資格を取れるギリギリの出席だけしているようで、完全に領地巡礼の方をメインに過ごしている。
心配だけれど両陛下もリアムもその成果を評価していて、当の本人達にやる気が漲っているから私からは何も言うことはない。
実際、二人のおかげで国民達の聖女万歳の声が多く上がるようになり、今この国はとても明るい。
聖女と王子が国を回るなんて新しくて面白い。
きっとこの二人は国民に長く愛されるでしょう
そう思うと嬉しくて、軽口を言い合う二人の姿に自然と頬が緩んだ。




