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悪役令嬢ですが気にしないでください。  作者: よんに
学園高等部編
131/152

闘技祭と事件


「打倒二組!!今年こそ勝つぞ!」


燃え上がる第二王子殿下率いる一組と


「今年も頑張りましょう」


密かにやる気を漲らせる私達二組は今年の闘技祭もバッチバチに張り合っている。


闘技祭も六年目となると周りも慣れたもので、私達の学年の近くにいる人はいない。




《今年も始まりましたロズワイド学園名物“闘技祭”!

進行は生徒会役員、リノが務めさせて頂きます!

そして王宮騎士団、王宮魔道士団からはお馴染みザリウス・ティト騎士、ミリナ魔道士が優秀な人員探しの為お越しくださっています、皆さん張り切って就職先を掴み取りましょう!》


拡声魔導具から届くリノさんの言葉に歓声を上げる高等部生徒達のやる気は凄く、闘技祭が初めての初等部1年生は少しだけ怖じ気付いている様子。


それを微笑ましそうに眺める初等部3年生以上と、遠い目をする初等部2年生。


きっとこういう光景も続いていく闘技祭名物でしょう。




「ノアン様、リメリナさん。少し席を外しますわぁ」


「はい」


「了解です!今日は高等部生まで回ってこないですし、明日に備えて休んでる人も居るのでルーナリア様も無理なさらないでくださいね!」


「えぇ、ありがとう」


笑顔で手を振り見送ってくれるクラスメイト達に私も微笑み返して闘技場を後にする。


生徒会の役目はリノさんが全て進行する事になっているから私が行ってもかえって迷惑になりかねない。

手伝いにはゾイさんがいるから十分。


安心して他の事にも目を向けられる。



「リダ。そちらの様子はどう?」


「スラム街から何人か消えているようです」


会場から少し離れた人気のない場所で落ち合ったのは幼い頃からの信頼出来る相手、リダ。


鼻まで伸びた藍色の髪で瞳は一切見えず、表情も微動だにしない彼は幼い頃より大分変わったところもあるけれど、


「姫の推測通りだと思います」


「その呼び方今度こそやめてほしいわぁ」


「はい、姫」


口角を上げているリダにやめるつもりはないのだろうとわかっているけれど、このやりとりも何年もしていれば楽しく感じるのだ。


「…それで、スラム街から消えている人達は()()()で間違いないのね?」


「はい。主に火属性の者と、行動を共にしている者達です。纏め役が火属性の古株の奴等がいませんでした」


「そう…」



ここ最近、貴族界で大きな事件が起こった。


火の侯爵家と言えば平民でも知っている有名な貴族であるレジャール侯爵家当主の悪事が明らかにされたのだ。


横領。部下に対する過度な指導を超えた暴力。

他貴族への干渉、及び洗脳。

長きに渡る領地の住民税偽造と権力による人権侵害。

隣国との戦争を仕向ける思惑に、王家への反乱。


侯爵当主の悪行は検査官や他貴族も把握しておらず、今回の件で共犯となった者達が想像以上に多く国王陛下等も頭を抱えていらっしゃった。


この事が明らかになったのはレジャール侯爵家の一人娘である、トレッサ・レジャール令嬢による告発があったからだ。


何年もの間、彼女はレジャール侯爵家の悪事を全て書き記して証拠まで押さえて告発したのだ。

言い逃れも出来ないほど的確に。


現在彼女は王宮で庇護、と言う名の隔離と尋問中。

彼女が白か黒かの判断をしなければならないからだ。

告発したのは彼女だけれど容疑者は彼女の父親だから。


私からすれば彼女に対してそういった心配も不安もないけれど。


最後にお会いしたときはやり遂げたような清々とした顔で今まで見たきた中で一番の笑顔を見せていた。


「やっとあの人を見下すことができたわ!」


そう言って高笑いする姿を思い出して笑ってしまう。


本当にあの令嬢はお強いわぁ。



だからこそ、彼女にこれ以上の責は負わせたくない。


「リダ、王都のスラムの重鎮は何と?」


「人が消えるのはザラにあるからとしか。それでもあちらも不審には思っているようでした」


口には出さないけれど、過去のことがあるのだ。


()()()()()はスラムに生きる者にとって脅威だ。



しかもこの期に及んで不審な動きがある。

それに関連しているのかは定かではないけれど、今火属性の者だけがいないのは不吉過ぎる。



「何もないのが一番だけれど…」


「希望的観測ですね」


清々しいほどハッキリ言われて思わず溜め息を吐いてしまいそうになる。


見上げた先でリダの瞳は見えないけれど、その口は僅かに引き結ばれていて私は気が引き締まる。


あの日から十年。

今度こそ、私は約束を守りたい。



“貴族”とは民に慕われる者を示す。

守り、頼り、頼られ、信頼し合い、

共に手を取りより良い街を築く

それこそが“貴族”


例えそれが綺麗事だとしても、理想だったとしても

私の根本に芽吹く間違いようのない本心。




「守ってみせるわぁ」




眩しいほどに青い空を見上げて誓う決意をただ一人、僅かに口元を緩ませる藍色の青年が耳にしていた。





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