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オレと“お嬢様”

アーグ視点。



今よりもっとガキの頃からオレは独りだった。


スラムで育ち生きるために何でもしてきた。

盗み、暴力、人を殺したことだってある。


そんなオレはスラムでも名が知れていて、街の住人や警備兵にも目をつけられている


盗むたびに関わってくる奴等が鬱陶しくてちゃんとした職を探したこともあったがスラムのガキってだけで門前払いだった。



だけど今日、変なガキに拾われた。


貴族の6歳とは思えない女のガキ


ちびっこくて細いけど飯は食ってるだろう体の肉と良い匂いのする髪や服に、最初は金を盗んでやろうと思っていたのに何故か貴族のガキはスラムの奴にも普通に接し、挙句に隠れていたはずのオレを見つけた。


オレは隠れるのが得意だ。人にバレないようにするために一番最初に特訓したのは隠れること。


それを見破られ、何故か騒ぎを起こして会おうと言われた。正直頭がおかしいと思う


ガキの言葉に従う道理はないはずなのに、何故かオレは騒ぎを起こして指定された場所へ向かった。


そこでもオレは見破られて、悔しいと思った。

自分よりもガキの女に自信を砕かれた。


けどそんなガキがオレを拾った。


金に稽古に、オレが欲しいものばかりを言う

必ず貰えるなんて思っていない。人生そんな簡単にいくわけがないことをオレは知ってる



それでも、ガキの目に惹き込まれた。



青より空色のような、けどもっと青いような透明のような綺麗なオレと真逆の色の瞳に



寂しそうな瞳にオレは差し伸べられた小さな手を掴んだ。



『アーグ』



その名前を胸に刻みながら、オレは初めて触れる人の手の温度を感じていた。





ガキはルーナリアと言った。


護衛の男が「お嬢様」と呼んでいてやっぱり貴族なんだなと不思議に思いながらオレは呆れていた。



「そんなことないですよ。はなれてしまいましたけれどわたくしはこうしてけがなくぶじですし、このままやしきまでなにごともなければなんのもんだいもありません。きょうたのしかったですもの、わたくしからしてあなたはこうひょうかですよ。」


『お前がいなくても自分は平気だけど、お前からしたらヤバイよな。屋敷まではちゃんとしないとヤバイからな。自分は今日自由にできて楽しかったけど、周りの評価はわからないぞ。』



って、感じのことを微笑みながら言う6歳のガキに呆れた。


貴族ってのはこんなんなのか?と思ったけど俺より明らかに年上の護衛の奴は素直に受け取って嬉しそうにしてる…大丈夫か?



雨でもないのに傘を挿す“お嬢様”を呆れた目でいていたオレに、何故か“お嬢様”は微笑みかけていた。


人に好意的な態度を取られたのは初めてでどういう反応をすれば良いのかわからず戸惑い、呆れた顔しかできないでいた。




連れて来られた屋敷ってとこはめちゃくちゃデカかった。貴族って金持ちででかい家を持ってるって聞いてたけど想像以上だった。


しかもここにはたくさんの人間の気配がして落ち着かない。


生きるか死ぬかのスラムで人の気配がわからなければ致命的だったから俺の神経は気配に敏感で、ここは居心地が悪い


けど向けられる軽蔑や侮蔑の視線は“お嬢様”の好意的な態度より幾分かマシのように思えた。


ただ家の中にいた人間の様子に“お嬢様”が


「こんなかわいいこねこにおびえるなんて…ふふっ ネズミかなにかなのかしらねぇ」


そんなことを微笑みながら可笑しそうに言ってて呆れた。

本当にこのガキはオレよりも年下かと思う

護衛の奴も顔を引き攣らせていた。



そしてオレはフロってやつに“お嬢様”に無理矢理いれられて、何故か“お嬢様”に洗われた。


貴族ってこんなんすんのか?いや、じじょってしよーにんって奴は止めてたし“お嬢様”が変なだけか


体を触られぬるい水をぶっかけられて軽く威嚇したけど「かわいいわぁ」と頭を撫でられて固まる


本当になんなんだ、このガキは……。



湯に入れられて少し経ってから入り口に付近の奴の気配が消えた時、“お嬢様”がオレに誰も信用するなと言った。


仮にも自分の家にいる、親の部下ってやつなのに。


それでも微笑んでいる“お嬢様”の目は真剣で、吸い込まれるような感覚だった。


信用しない、とかオレにとって普通。

人間を簡単に信用なんてしようとは思わないし思えない。


“お嬢様”だって信用してるわけじゃない

ただの雇い主だって思ってる。


だってこのガキはいつも『微笑ってる』


それはどこか不気味で、背筋がひんやりとする




“お嬢様”に服を着せられ飯にありつけるということで少し気分が上がっていた。


そして飯の場では“お嬢様”がしよーにんに怒っていた。俺の飯がどーとか

まあ普通に考えりゃ一緒に食えるわけねーだろーな


何故かまた握られている手を軽く引いて飯がなくても良いと言うと微笑んだまま冷めた声で言われる



「あなたはわたくしのものなの。けんこうでげんきでなくてはいけないの。ごはんもすいみんもしっかりとりなさいね。」


「……わかった。」



なんだ、この威圧感は。スラムの大人なんかよりもよっぽど逆らっちゃいけねー気がする。



「いいこね。」



そう言った“お嬢様”が手を伸ばして俺の頭に触れようとしたんだと思うが届かなくて、その手を少し下げ頬に触れられた。


温かくて柔らかい小さな手がオレの頬に触れて親指で軽く擦るように触られる



………なんだ、これは。


なんなんだ、このガキは。



固まっているうちに飯が運ばれその前に座り、“お嬢様”はオレに飯への感謝の言葉を教えてくれた。


手を合わせて飯への感謝の言葉を言うと“お嬢様”は何故かオレを優しい目で見ていて、何故か体がゾワゾワとした。



飯を食べ終えた後また“お嬢様”に手を引かれて廊下を歩き、階段を上がった一室に入れられた。


ケルトルとかいう奴が「駄目ですお嬢様!」と必死に言うのを“お嬢様”は微笑むだけで何も言わず、オレを部屋に引き込んで扉を閉めた。



「さぁ、きょうはここでいっしょにねましょうね。」


「……は?」



やっぱりこのガキ、おかしい。




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