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悪役令嬢ですが気にしないでください。  作者: よんに
学園中等部編
125/152

爽やかな王子様

フィオナ視点


「レジャール様、ここですよ!」


もはや通い慣れた王宮のお庭にある花の氷像は今日もお日様の光を受けてとっても綺麗に輝いている。


遠くから侍女さん達が嬉しそうに見て、楽しそうにお喋りをしながら過ぎ去って行く


あたしもお喋り出来る友達がほしいなぁ

ルーナリア様は友達、と言うよりもちょっと違う特別な感じ。


リリア様は今では先生であり、優しくて頼りになるお姉ちゃん……お姉様?って感じ。


たまーに会える妹のシェイナは村の話を少しだけ話してくれるけど、その中にあたしの友達の話はなくって、手紙を送っても返ってくるのは友達の親からもしもの時は優遇してくれってお願いだけ。

村の友達と話が出来たのはもうずっと前だ。


それが寂しいけど、しょうがないことなんだってこの頃ようやく思えてきた。



「……悔しいけれど、さすがね」


「僕も最初見たときちょっと悔しかったよ。精密過ぎて逆に引くくらいだ」


顔を歪めるレジャール様と呆れた顔をするオスカー殿下を一歩離れた場所から見ると、すっごくお似合いだなぁ、なんて思う。


ふわふわな金髪と翡翠の瞳が綺麗なオスカー殿下はとても爽やかで、親しみやすい王子様。


今日初めて会ったレジャール様は長い赤髪を巻いてポニーテールにしていて、顔立ちはキリッと凛々しいお嬢様!って感じの人。


ルーナリア様やリリア様とはまた違うお嬢様なレジャール様は少しだけ怖そうに感じたけど、あたしにも丁寧に挨拶をしてくださったし、馬鹿にした態度もされなかった。


前に偶々お城で会った貴族のお嬢様はあたしを見て馬鹿にしたように笑ってて物凄く感じが悪かった。

だからレジャール様は良い人だ。


何よりルーナリア様と仲が良いんだもん!


「レジャール様はいつからルーナリア様と仲が良いんですか?」


「仲が良い、ですって?」


単純に気になったことを聞いてみただけなんだけど、ものすっごい険しい顔をされてビックリする。


そんな顔されると思わないし、貴族のお嬢様でもそんな顔するんだってちょっと言葉に詰まった。


「あ、いや、ええっと、その、ルーナリア様があたしに誰かを紹介してくれたのってレジャール様が初めてだったので!だから、その……仲が良いからなのかなぁって、勝手に思っちゃっただけで……」


普通そう思わない!?思うよね!?

そんな不快!みたいな顔する!?


嫌なこと言っちゃったのかなって慌てて頭を下げて謝ろうとして、そうする前にどこか楽しそうな王子様が口を開いた。


「十歳にもならないくらいから顔見知りだったけど仲良くなったのは学園からだよ」


「へ?」


何で王子様が言うんだろう…?


ってレジャール様めちゃくちゃ嫌そうな顔してるけど!?大丈夫なの!?いいの!?


慌てているのはあたしだけで、王子様はレジャール様のことを気にする様子もなく話を続けている。


「僕もトレッサ嬢も第一印象最悪だろうし。その後も突っ掛かったりしてたから」


「……お二人が?」


あんまり想像出来なくて首を傾げると王子様は苦笑いして、レジャール様は「黒歴史です」なんて言いながら氷像を眺めている。


誰にでもやっちゃった過去はあるもんなんだなぁ…

…………今度ルーナリア様に聞いてみよっかな。


「あの人、絶対嬉々として話すから止めてくれますか。面白いものでもないですから」


「あぅっ、はい…」


「はははっ!黒歴史ほじ繰り返されるのは痛いな」


ピシャンと言うレジャール様にすごすご肩を竦めるあたしを見て王子様が笑って言う。


前から思ってたけど、王子様二人ってなんか正反対なんだよなぁ。

王太子殿下は鉄仮面だけど、第二王子殿下はよく笑ってる。

王太子殿下は誰にでも冷たいけど、第二王子殿下は誰にでも優しい。


同じとこって、髪色とルーナリア様が好きなとこだけじゃない?


そう思ったときチクンと痛んだ胸に気付かない振りをして、なるべく明るくなるように謝った。




レジャール様が氷像を隅から隅までじっくりと観察しているのを少し離れた場所で待つ。


あたしは綺麗って感心するくらいだけど、たまーに騎士服や魔導士服を着た人達がああやってしているからわかる人にはわかる何かがあるんだろうなぁ


ポニーテールに結んだ赤髪がふわふわと揺れているのを眺めていると、同じようにあたしの隣に居た第二王子様が声を掛けてくれた。


「トレッサ嬢はアクタルノ嬢に対抗心滾らせてるからもうちょっと掛かるし、先に中入ろうか?」


「いえ!大丈夫です!あたしもルーナリア様の氷像見てるの好きなので!」


「そうか」


柔らかく微笑んだ第二王子様にほんのりと体温が上がる。


その意味に気付いているけれど、あたしはそれを言葉にしちゃダメだ。

言葉にしたら、取り返しがつかなくなるから。



「最近勉強はどう?上手くいってる?」


「上手く、いけてるとは思うんですけど…。でもいつもリリア様が丁寧に教えて下さってます!」


「優秀な人だと聞いているよ。僕の友人の兄の奥さんだから話は耳にするけど、実際に話したことは片手の指で足りるくらいなんだ」


「そうなんですね!えっと、リリア様の義理の弟さんっていうと、えーっと、バルサヴィル侯爵家のガルド様、ですか?」


公爵と侯爵家の名字は全部覚えた。

名前はわかんないけど、リリア様とのお話で聞いた覚えがあったから言えた。


「そうそう。ガルドとも学園前から知り合いではあったけど、仲良くなったのは入学してからだなぁ」


「…………王子様、そんなに、その……あんまり好かれない人だったんですね」


聞いている限り昔の王子様は大分性格に問題があったように聞こえる。


思わず言ってしまってから、これ不敬にあたる…と冷や汗が吹き出た。ヤバい、やっちゃった!!


そう焦るあたしに気付いているのかいないのか、王子様は翡翠の瞳を伏せながら苦笑いを浮かべた。


「さっきも言ったように黒歴史だよ、黒歴史。思い出したら全身痒くなるくらいに」


「…やっぱり想像出来ないです。あたしが知ってる王子様はいつも爽やかに笑ってて、気さくに話し掛けてくれる優しい王子様だから…」


「それはまた、はははっ、良い王子だなぁ」


笑っている王子様に「ほんとにそう思ってるんです!」とちょっと大きな声が出た。


そんなあたしに驚いた顔をした王子様がへにゃ、と力の抜けた笑顔を浮かべた。


初めて見るその笑顔に心臓が激しく動く。



「昔の僕は王族であることをひけらかして、周りをバカにするような奴だったんだ」


「…………え、王子様が?」


信じられなくて目を真ん丸にして王子様を見つめると、恥ずかしそうに目を逸らされた。


「誕生日に送られたプレゼントにお礼も言わないで「あっそ」で終わらしたり、体調の悪い子に変に絡んだり。異性に対して『病弱女』『薄色』とか、まぁ信じられない悪口言ったりね。酷かったんだよ」


「ほんとに信じられない……変わり過ぎじゃないですか?」


「はははっ」


爽やかな王子様にそんな過去があったなんて。


「それ全部アクタルノ嬢にしてきたんだけどね」


「ええっ!!!??」


ビックリしすぎて大きい声出しちゃった!

いやいやビックリするよだってあのルーナリア様にそんなこと言うってどんな子供!?

いやその時はルーナリア様も子供だったと思うけど子供のルーナリア様なんて今以上に可愛くてきっとお人形さんみたいだっただろうによく言えるね!?


「えぇー…」


「まあ、何と言うか……男特有のやつだったんだろうけど、今考えると凄い恥ずかしいし、申し訳なくなるしで黒歴史なんだよ」


目を逸らし頬をポリポリと掻きながら言う王子様に微笑ましさと、成長されたんだなって感心と。


何でこんな話をあたしに?って疑問。


だってわざわざ話す必要ないでしょ?

確かにあたし知りたがってたけど、レジャール様の線引きで潔く線から離れたし、話す必要なんて。


そう考えて、ふと気付く。



「………王子様のタイプはやっぱり、ルーナリア様みたいに賢い人ですか?」



見上げた先の翡翠色はあたしを写したけど、その瞳はわかりやすく言ってる。



爽やかな王子様ってほんとは存在しないのかな?



「どっちの王子様もあたしに対してひどくないですかね」


「はははっ。そう言える君は面白いよ」


そう言って笑う王子様は嫌味なくらいに爽やかだ。

今のあたしには性格に問題あるイケメンにしか思えないけど!



「別にいーです。本気じゃないですもん」


「うん、本気にされてたら距離取ってるよ」


「ハーッ!!性格わっる!!」


不敬だって頭で理解してても叫ばないの堪えられなかったんだよ。


だってほんとに、最低じゃない?

芽生える前の……一歩手前、……一歩踏み込みかけた感情に対してそんなこと言う?


不満いっぱいに王子様を睨み上げると、ポカンと間抜けた顔があたしを見下ろしていた。


間抜け顔なのにイケメンとかなに!?

女のあたしの間抜け顔なんて見れたもんじゃないのに男のアンタは大丈夫ってか!?この世界不公平!


「……プハッ」


「…………はいっ?」


「アッハハハハハハ!!!」


何故か急にお腹を抱えて笑いだした王子様に目を丸くする。


何急に、怖。


引いた目で見ていると腰を曲げて腹を抱えて大笑いしていた王子様がまた更に笑い出して、膝までつき始めた。


このままいけば倒れ込みそうだなぁ、なんて見下ろしていると、


「何を笑っているのよ、殿下」


顔を訝しげに顰めたレジャール様が氷像の観察を終えてこっちに向かって歩いてくる。


「だっ、だってッ、ははッ、めっちゃ、おもしろッ、くふっ、ふはははッ」


「……聖女様、本日はありがとうございました」


壊れた人形みたいになった王子様に引いているとレジャール様は呆れたように一瞥したあと、興味を失くしたように視界から除外してあたしに話し掛けてくれた。


それに慌てて頭を下げる。


「こちらこそっ!学園の話とか聞けて嬉しかったです!ありがとうございました!」


「……学園に通われる際は出来る限りの援助を致しますわ。そこの王子よりはお役に立てますから」


王子様って貴族の令嬢からしたら物凄い存在なんじゃなかったっけ…?

めちゃくちゃ物扱いしてらっしゃる…。


ピン、と背筋を伸ばして優雅に手を組むレジャール様はかっこよくって、憧れる。


ルーナリア様とはまた違うお嬢様。

あたしとは全然違う世界の人。



だけど、



「あのっ!よ、よよ、良かったら、また、お話ししませんか!?」



友達になりたいって、思ったから。




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