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6、復讐がはじまっているのにシドニックは気付かない

「ほら、あーん」


 夫婦や恋人ではない、僧侶のアルメナに食事をよそってあげたのはルナだった。ルナは回復術師だが、アルメナも回復専門だ。パーティー内での役割がかぶっていて普通なら、仲が悪くなるはずの二人だが、お嬢様らしくおっとりした性格のルナはアルメナと仲が良い。


 アルメナは兄ヴィルをかばったことにより、アスコットからルナの部屋にいるように言われている。事実上の軟禁だ。ルナの部屋はアルメナにアイリスと女子たちでにぎやかだった。そんな少女たちを私はぼんやりと見ている。


(平和だな。カルデたちと違って)


 魔法使いカルデと聖女エレノアはあまりにうるさいし、美少女だが、底知れぬ心の闇を感じる。


(何かこう、コンプレックスがあるんだよな、あの二人。それに比べてこの三人は良いな)


 魔王討伐の直前とは思えないほのぼのとした光景にささくれっだった私の心は(いや)されていた。


 ルナの食事を拒否していたアルメナも根負けしたのか、空腹に負けたのか、口を開いてルナの特製サラダを食べ始めた。アイリスは隅の方で黙々と魔道書を読んでいる。典型的な根暗だな、こりゃ。


「さて、アイリス。お前の装備を買い揃えないといけない。早速、武器屋にいこうじゃないか」


 私は落ち着き払って、言った。もちろん、アイリスへの罠だ。この後、私とモルドア、ルナの三人でアイリスを“かわいがる”予定だ。そして、アイリスを餌にして、ヴィルを誘いだして殺す。アイリスは高位魔法を使えるが、私とモルドアが本気を出せば、小娘一匹何ほどのこともない。すぐに組み伏せてみせよう。


「わかりました。シドニック様。すぐにっ」


 私はうなずくと、ルナに目で合図を送る。


「ごめんね、アルメナ。ちょっと出かけてくるから」


「・・・・・・うん」


 こうして私、ルナ、アイリス、モルドアの四人で買い出しに行くことにした。


*****


「あら、お兄さん、格好いい」


 モルドアは女に言い寄られていた。長身の美人で少し肌は浅黒い。南方の部族だろうか。移民の娘、という感じだ。


「おい、モルドア。目を覚ませ。武器屋に行くのが我々の責務だ」


 私はたしなめたが、モルドアはにやりと笑うだけだ。


「そんなこと言わないで一緒に遊びましょ。お兄さん~」


 女は甘い言葉でモルドアを誘惑し、弾力のある胸を押しつけている。私はモルドアを(にら)みつけた。


「へへっ、悪いな。シドニック。俺は抜けるぜ」


「はあ!?」


 私は思わず大声を出してしまった。街の中だったので通行人が不思議そうに私を見てくる。


「コトが済んだら戻るからよ。じゃあな」


 馬鹿が。何を考えてるのだッ、この男は。ヴィルを生かしておけば、パーティーの実態をヴィルが告発する可能性もあるんだぞ。そうなれば、いくらアスコットといえども苦しい立場に置かれる。ヴィルのようなゴミクズを早めに叩きつぶしておかねばならないというのにわからんのかこの脳内筋肉男がッ。


 私は心の中で毒ずくが、表情には出さない。こうなったら、私一人でアイリスを拷問しなければならない。まあ、いいさ。拷問は手慣れているしな。


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