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22、命がけの鬼ごっこ

 俺は口に布を詰め込まれ、両手両足に手錠のつけられた少女を見おろしていた。周りには七魔将の面々と元勇者パーティーで生かしてやっているルナがいる。宰相の娘で役に立たない回復術士で雑魚だ。妹のアルメナから殺さないように言われているから、生かしておいている。アルメナは個室を与えて、好きにさせていた。俺に怯えて、一言も話そうとしない。逆らえば、殺されると思い込んでいるようだ。


 アルメナのことは心配だが、今はどうにもならない。まずはアイリスの処分が先だ。アスコットの婚約者にして、王国きっての魔物使い・アイリス・オーギュスト。オーギュスト伯爵家の長女で人体実験で何人も殺している悪人だ。


「これから商業都市リュウトルドに向かう。たっぷりとかわいがってやるぞ、アイリス。楽しみにするがいい」


 アイリスの目が大きく見開かれた。


「うー、うー」


 必死に何かを訴えてくるが、俺には伝わらない。


「ヴィル様、魔法陣の準備が整いました」


 シクラゼータが言った。シクラゼータの隣にはルナが真っ青な顔で立っていた。ルナは表面上は従順だが、まだ反抗する心を残している。今回は強制的に見学させることにしていた。


「ふむ。ではリュウトルドへ」


 俺の声に七魔将の面々がうなずく。


「うー、んーーーッんーーーッ」


 アイリスが涙目になりながら、訴えてくるが無視した。







 商業都市リュウトルド、王都の西方に位置し、王都の経済を潤わせる活気づいた街だ。都市住民には富裕層が多く、闘技場やカジノなどの娯楽施設も多い。


 その大通りをアイリスは歩かされていた。俺とシクラゼータはアイリスの左右を歩く。


「あれはオーギュスト伯爵家のアイリス嬢じゃないのっ、魔族に捕まってる」

「しっ、滅多なこと言うもんじゃねえぜ、お嬢さん。ヴィル様に聞かれたら危ない」


 俺は通りがかりの娘の言葉を聞き流した。このリュウトルドの指導部は俺に忠誠を誓っている。無闇に住民を罰する事は得策ではない。


 俺たちはアイリスを見世物にすると、闘技場に入った。すでに貴族や市民連中が席に着いている。七魔将たちの働きによって、準備は整えられていた。


 アイリスの体が強張(こわば)る。


「この者はアイリス・オーギュスト伯爵令嬢だ。知っている者もいるだろう。この者は奴隷を購入しては痛めつけ、死に至らしめてきた。よって、罰を与えることとする」


 俺の声は魔法によって、広い闘技場に響き渡る。俺はさっと手を振り上げた。入場口からわらわらと人が出てくる。その数、百を越える。


「姉さんをよくも殺してくれたな、アイリスっ」

「俺の妻をよくもっ、くそっ、小娘め。思い知らせてやる」


 殺気立った目でアイリスを睨む。ちなみに今のアイリスは魔法を使えないただの雑魚と化している。アイリスに殺された奴隷の遺族・約百人の殺気がアイリスを襲う。


「ひっ、ひいいっ、お助けを、ヴィル様ぁ」


 アイリスが哀願するようにこちらを見てくる。俺は微笑みを浮かべると、アイリスの肩に手を置いた。


「さーて、アイリス。鬼ごっこスタートだ。仇を取りたい遺族から逃げ回れ。日暮れまで逃げきったらお前の勝ちだ」


 アイリスがこくこくとうなずく。残虐だが、まだ子供だ。怯えきっているのがよくわかる。


「都市リュウトルド内部であれば、どこに逃げてもいい。連中は間を置いて、出発させる」


 俺の声に続いて鬼ごっこの解説をシクラゼータが観客に向かってしていた。


 シクラゼータの鬼ごっこ開始のアナウンスとともにアイリスは走り出す。


「シクラゼータ、あの男を確保しようか」


「はい、我が主」


 俺とシクラゼータはかねてよりの打ち合わせ通り、アイリスの兄を捕まえに行くことにした。百人のハンターはまだ待機している。アイリスにすぐに追いつかれてはせっかくの鬼ごっこがつまらないからだ。アイリスへの復讐はこうして始まった。


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