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21、復讐の始まり

「助けてくれっ、ルナっ、仲間だろっ」


 私は哀願するモルドアを見ていた。上半身裸にされたモルドアの体は罪人である証明の焼印があった。


「そ、それはヴィル様のお決めになることなので」


 私はヴィル様に命じられるがまま、食事を運んできた。魔王城の地下にある人間用の牢にシドニック、アイリス、そしてモルドアを閉じ込められている。


「ルナさん、君から私が無実だと伝えてくれないか。そして、復讐にはぜひ協力させて欲しいと」


 シドニックが猫撫で声で話しかけてくる。だが、油断してはならない。この男はアスコット様の参謀だった。ヴィル追放に関与していたはずだ。


「それは、その」


 私は口籠(ごも)る。なぜかといえば、私の背後には七魔将の一人・シクラゼータがいるからだ。妖艶な美女で斧を担いでいる。残虐な魔人で勇者ファ―レの右手首を切断したのもこの魔人だ。


 そして。


「もー、もー」

「リヴァーテイルは牛さんが板についてきたよねっ」


 賢者リヴァーティルが下着姿のまま、四つん這いで腰にシクラゼータを載せていた。その豊満な胸をつんつんとつついているのは兎耳の獣人でトリュクという幼い少女だ。こう見えても七魔将の一人である。二人は仲が良いらしく、勇者パーティーの賢者リヴァ―ティルを辱めては遊んでいる光景をよく見かける。


 リヴァ―テイルは侯爵令嬢で気位が高い嫌な奴だったが、今の彼女は弱り果てて、見る者の同情を誘うくらいに落ちぶれていた。


「ああ、そうそう。あなたたち家畜のうち、一匹を連れてこい、とヴィル様のご命令だったわ」


 シドニックたちの顔色が変わった。


「王都への進撃の前に一人血祭りに上げたいんですって。さあて」


「お、俺は賢者だ!役に立ちます。殺さないでくださいィ」


 シドニックが発狂したように哀願すれば、


「アイリスを強姦させてくれ!きっと楽しい見世物になるぜっ、だ、だから殺さないでくれえ、頼む、頼むよぉ」


 モルドアが声を張り上げて、


「も、もう一度だけチャンスをっ、シクラゼータ様、お願いですぅぅぅぅぅっ、わ、私はアスコットの四肢を切断し、食事を与えずに徐々に衰弱させていきますぅ、凄惨な拷問を奴に加え、目の前でアスコットの妹を(なぶ)り殺しにして、奴を発狂させてやりますっ、で、ですからどうかどうか私の命だけはお助けをっ」


 アイリスが土下座をしながら、わめき散らす。


 恐怖で頭がおかしくなったのか、三人とも必死だ。しかも三人とも自分の事しか、心配していない。ああ、私はアルメナと友達で良かった。私とアルメナだけは復讐を免がれている。


 私は内心の安堵を押し殺し、三人の前では沈痛な表情を作った。


 シクラゼータが笑むと、私に牢の鍵を渡す。


「な、何でぇ、何で私なのっ、痛いの嫌っ、助けてパパ、ママっ」


 トリュクがにやにやしながら、アイリスの髪を引っ掴むと、嫌がる彼女を連れていく。


「ほら、おいで下さい。ルナ様、ヴィル様はルナ様にもアイリスへの復讐をご覧になっていただきたいと」


 シクラゼータが笑いかけてくる。私は無言でうなずいた。もう、逃げ道など、どこにもない。


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