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16、ヴィルは美少女勇者レミットのパーティーを壊す②

ひどい有り様だ。レミットの崩れ落ちる様を私は眺めていた。私は治癒師(ヒーラー)のユマ・アルマロッサ、女勇者ファ―レ・エルタ―ニャのパーティーの一人である。


 私たちのリーダであるファ―レと言えば、ティ―チ・トラントとの行為の真っ最中だった。何をシテいるのか、この二人は。市民の前で勇者が魔王の手先の人間に()びを売るために行為に励むなど、頭がどうかしているのだろう。


 だが、ヴィル、大賢者になったというアスコットの元パーティメンバーは笑みを浮かべている。レミットの髪をいやらしい手つきで触ると、匂いをかいでいた。吐き気を催す光景だ。ああ、誰かこの地獄から解放してほしい。


「ヒヒヒ。ウヒャヒャヒャヒャっ、ユマ―、お前も俺とやるかっ、なあ、こっちにおいでよ」


 奇声を発しながら、ティ―チが壮絶な笑みを浮かべていた。気持ち悪い。イケメンだが、セクハラをパーティーメンバーに繰り返してきたこの男を私は元から軽蔑していた。レミットやファ―レのように簡単に女の子をいいようにできるとは思わないことね。


「ティ―チよ。レミットとは恋人同士であったのであろう。良いのか、レミットを捨てても」


 ヴィルがティ―チの前に立つ。二人とも惚れ惚れ(ほれぼれ)する程の美男子だ。特にヴィルは一年前のなよなよとした印象がなく、冷徹(れいてつ)な策謀家を思わせる。驚異的な力を手にしたことで彼は変わってしまったのだろう。主に悪い方向に。


「んー、もうこいつには興味ねえッスから。貴族のお嬢様ってだけで相手してやってただけッスよ。ああ、あとこいつ勇者の称号を得てますから、王族の女とのコネができて、ヤリたい放題できますからねー、ヒヒヒ」


「そんな、ティ―チ。嘘だよね?脅されて言わされているんでしょう?」

「おいおい、泣くなよ。レミット。お前ってホントグズだよな。それでどうするんですか、ヴィル様、レミットは殺しますか」

「そうだな・・・・・・」


 ヴィルはレミットに目をやる。レミットがガタガタと震えはじめた。


「かねてよりの計画通りに殺す。生きてても価値がない。人間のクズだからな」

「マジで!ヒャッホウ!」


 ティ―チが小躍り(こおどり)した。レミットよりもこの男のほうが何十倍も醜悪と感じるのは私だけだろうか。


「ヴィル様、実は俺、レミットを殺したかったんですよね。そうですね。最も苦しむように食事を与えず、体を切り刻んで、徐々に衰弱させながら殺していくのがベストだと思うんですよ。ヴィル様、俺に殺させてください。お願いしますよ」


 ヴィルはにやりと笑った。レミットを無理やり立ちあがらせると、ティ―チのほうに突き飛ばす。


「ヒヒ。レミット。久しぶりだね」


 ティ―チはレミットを優しく抱いた。


「びっくりしたかい。でもね、ホントは君を助けるための演技だったんだ。さあ、俺たちパーティーの力でヴィルを倒そうッ」


「そんな。……早く言ってよ。もう、ティ―チのバカぁ」


 騙されないで、レミット。ティ―チの顔をよく見てよ。錯乱したあなたを見ていやな笑みを貼り付けているわ。また、あなたを(だま)して痛ぶるつもりよ。ああ、もう見てられないわ。レミット、あなた根が純情すぎるのよ。


「下がっていてくれ、レミット!さあ、ヴィル、決着を付けようッ」


「フフ。そうだな。ティ―チ。さて、先程殺すと言ったが、実はレミットは殺さない」


 ヴィルの言葉にティ―チが大きく目を見開く。予想外だったようだ。


「さて、雷雲よ、勇者のパーティーに裁きを」


 そのときだった。雷撃が天から直撃し、辺りは(まばゆ)い光に包まれる。


「言っただろ、人間のクズを生かしておいても無駄だと。ティ―チ・トラント、それはお前のことだ」


 ティ―チ、だったものは黒焦げになって、地面に倒れ伏した。


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