13、ヴィルは都市キュリランスを制圧する
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私は魔族メイド・ミラ、七魔将の一人だ。都市キュリランスの西門に私は配下の者たちを待機させていた。
「さて、子爵の逃げてくる頃合いね」
子爵は殺すな、と言われている。手加減しないといけない。魔王様の城に持ち帰り、拷問にかけるのだろう。私もマーモデウス様と同じで人間には興味がある。
「あれか」
馬車が猛スピードでかけてきた。御者の表情が青ざめている。私は人間態に身をやつし、鎧で体を覆っている。王国から派遣された魔王討伐の女騎士集団を装っているのだ。
私は配下の者たちと馬車に近寄った。
「騎士ジュリア様の一団である!一体どうしたのだっ」
大声で部下が呼び掛けた。馬車が止まり、中から人が出てくる。若い男だ。子爵ではない。
「勇者アスコットです。通していただきたい」
勇者!まさか真っ先に逃げ出すのが勇者だとは。こいつはお笑いだ。丁度いい。この男を手土産にヴィル様に喜んでいただこ。
「ぐえええっ、かはっ」
私の胸の辺りに剣が刺さっていた。背中にかけて貫通している。いくら魔族といってもノ―ダメージではない。私は血を吐く。
「な、何を」
「舐めるな。王国の女騎士にジュリアなどという女はいない。俺のハーレム候補生の女たちだからな。顔と名前、血統、体の部位に至るまで、頭に入っているさ。どうせ魔族だろ。まあいい、性奴隷として、人間様にかしずかせてやる」
ハハ。勇者が外道だとは計算外だった。失態だ。これはヴィル様の懲罰モノだ。私は薄れゆく意識の中、勇者の邪悪な表情を見ていた。
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都市キュリランスは制圧され、子爵夫妻は捕まった。捕まえたのは盗賊の称号を持つ若い女。盗賊のスキルを生かして、地下の隠し部屋を透視し、子爵夫妻を捕らえた。隠し部屋に気づかなかった他の冒険者たちは彼女に出遅れた。
俺は冒険者たちを大広場に集めた。すっかり夜も暮れている。しかし、マーモデウスの光魔法によって、広場は明るく照らされていた。子爵の妻・ニ―ニャ・イルバンシュは若く美しい美貌を持っていた。親子のような年の差の二人だ。
「十字架を掲げよ」
ゴブリンたちがいそいそと十字架に夫人をくくりつける。夫人はきゅっと唇を結ぶと群衆を睨んだ。気の強い女だ。
「これから夫人には勇者アスコットを支援した責任を取ってもらおうかと」
「そ、そうですか。あの娘は差し上げます。私の命を助けてください」
イルバンシュ子爵の小物ぶりは想像以上だった。妻の命を差し出すなど、聞いたことがない。
「王国を裏切ると?」
「はい。無能な王と王女のいる国です。遠からず、ヴィル様のお力によって、制圧されます。勇者アスコットは私を見捨ててすぐに逃げましたのでこの国に未練などございません」
貴族の男がはいつくばって、許しを請うている。それにしても、アスコットはとことんクズだ。せっかく料理してやろうと思ったのに逃げ足が早い。
「聞け!冒険者たちよ!イルバンシュ子爵は降伏したっ、勝利の宴だっ、ニ―ニャ・イルバンシュ夫人を好きにしていいっ、存分に楽しめ!」
俺は子爵夫人を見る。夫人は唇を結んだまま、耐えている。冒険者の男たちが夫人に群がる。ゴブリンたちが夫人を十字架から降ろした。