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10、ヴィルは宰相の娘・ルナを使って、冒険者ギルドを制圧しようとする

俺は冒険者ギルドに足を踏み入れた。ギルド内は騒然とする。


「あ、あれは七魔将の一人・ビゼルッテっ、勇者レミットの両親を殺した魔王軍の中でもナンバー3だ。あんな奴に(かな)うかよ」


 剣士の男の説明が聞こえた。大声だな。冒険者たちの動きが止まる。


 俺は無名だから、ビゼルッテに捕まった冒険者にしか見えないかもしれない。だが、()めるなら今の内だ。こちらには勇者パーティーのシドニック、モルドア、ルナ、アイリスの四人を捕らえてある。特にシドニック、モルドアがいない勇者パーティーなど、恐るるに足らない。


「私の名前は剣士・ソーニャ、覚悟せよ。魔王の手先めっ」


 おっと骨のある冒険者がいたか。ソーニャといえば、美少女剣士として、有名だ。アスコット程ではないが、な。


「ウフフ」


 ビゼルッテが小さく口の中でつぶやくと、ソーニャが剣を振りかぶった姿のまま、静止した。


「くっ、体が動かな」


「覚悟っ」


 また冒険者がかかってくる。えーと有名人だけど男の名前は覚えてないからな。


「砕け散れ」


 俺が呪文を唱えると、男の体は四散した。肉片や血液が冒険者たちの顔にかかる。


「ひいいいっ、一撃でっ、何なんだよ、あの男はあぁ」

「魔術師のザックでしょ。あれ。王都の魔術学園を首席で卒業したプリンスがいともあっさり。か、怪物よっ、人間じゃないわっ」


 へえ、冒険者のお姉さん、教えてくれてありがとう。こいつ、そんなにすごい奴だったのか。


「我が名はヴィル・テ・ウィンテッド。アスコットの勇者パーティーの一人だった。だが、奴の非道ぶりによって、追放され拷問を受けそうになった。殺されるところだったのだ。その復讐のため、魔王様にお仕えすることにした」


「ヴィル様は人の身でありながら、私よりも強いわ。さて、ザックの二の舞になりたいのはどなたかしら」


 ビゼルッテの声に座は静まりかえる。


「勇者アスコットが来れば、あいつを倒せるんじゃ」

「そ、そうだっ、アスコット様なら」


 冒険者たちは口々に噂する。全く声の大きい奴らだ。こちらにまで聞こえてくる。


「ルナティック、来なさい」


 ゴブリンがルナを連れてきた。実はずっと俺たちの背後で背の低いゴブリンたちに囲まれていたのだが、冒険者たちは気づかなかったようだ。それほど、ビゼルッテの存在感は大きい。


ルナは有名人だ。大した実力のない雑魚冒険者だが、宰相の娘と白い肌、整った顔立ち、冷静な青い髪に青い瞳、そしてたわわに実った弾力のある胸。良い子ちゃんの優等生ということもあって、父親の宰相の人気のなさを埋め合わせる人気の高さだった。


 勇者パーティーの広告塔だ。だが、それ(ゆえ)に使える駒だった。


「ルナティック、魔族に忠誠を誓うか」


 みんなに見えるように俺はルナティックの顎を引いてやる。ルナティックはぎこちない笑みを浮かべると、俺の前に(ひざまず)く。


「ほら、この通りだ。勇者パーティーの一人は俺の支配下にある。お前らもよく知っているアイドルのルナだよ。さて、ルナ、証明を見せよ。みんな、お前に期待しているぞ」


「はい。ルナは皆さんにヴィル様に従っていただくように進言致します。勇者アスコットなど、ヴィル様にかかれば、一撃で殺せる(はえ)と同じでございます」


 ルナは事前に教え込んだ通りのことを話す。さすがに広告塔だ。澄んだ声で声量も大きい。ルナは一流の回復術師ということになっているが、実力は素人に毛が生えた程度の能力だ。そんなことを知らない冒険者たちはルナの言葉を疑いもなく、信用する。


 ルナにはあとでご褒美をやらないとな。俺はルナの横顔を見ながら、そう思った。


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