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新人神様〜初めは転生係から〜  作者: ナンジュ
第0章 事の発端
1/2

【悲報】俺氏、神様に選ばれる。


…ひとまず状況を整理しよう。

今、俺の目の前には真っ白なワンピースを着た赤髪ツリ目のものっっっそい美少女がいる。

そしてたった今彼女は言った。


「今日からアンタは神様よ!」


以上。

………。

整理してみたけれど、何が何だか全く分からん。









それから少しだけ前。

人の住む場所とは少し違う、いわゆる『天国』と呼ばれる場所の出来事。

天国はとても美しいところだ。空に浮かんだ島のような場所で、中央には真っ白な宮殿がそびえ立っている。その周りをいくつかの市街地と雄大な自然とが取り囲み、いかにも楽園、といったような雰囲気だった。


「いそげ!いそげ!」


「ねがいはやまほど!たくさん!たくさん!」


天国ではたくさんの天使たちが今日も一心不乱に働いている。悩める人間たちに希望を届け、願いを叶えるのが彼らの仕事。

人々の願いは日々山のように天国に届けられる。彼が幾ら働いても、人間たちは神に縋ることをやめない


「ほらほら!お喋りもいいけど、しっかり仕事しなさいよー!」


「はーい!」


どーん!


「うわぁっ!ごめん!慌てて前見てなかった!」


「もう!気をつけてよね!…あー、願い事の書類がバラバラになっちゃった…。」


「てつだう!てつだう!」


「ひろう!ひろう!」


「あ!ありがと!」



天使は皆仕事熱心。人の願いを叶えることで、彼らもまた幸せになれるのだ。

しかし、そんな天使たちも全員が仕事大好きというわけではない。丁度たった今、天国の長、いわゆる神様が城の中全体に響くぐらい大声で叫んだ。


「もう神なんてやってられるかぁぁぁぁ!」


「え⁉︎ちょっ…何言ってるんですか神様⁉︎」


「神なんて…神なんてやめてやる!!!」


仕事に飽きたのだろうか、神が仕事を放棄すると言い出した。必死で止めるお付きの天使たち。神様がいなくなってしまえば天国の仕事の能率が大幅に下がってしまう。人間の願いを叶えられる量が少なくなってしまう。それだけは避けなければ。


「ダメですよ神様!神様やめるなんて!」


「あーあーあー!うるさいうるさいうるさーい!やめるといったらやめる!」


「ですが神様がいないと!」


「あーはいはいはい!だったら後任の神様を決めてやるから!んじゃあ、はい!後任はあいつ!あいつでいいよもう!決定!」


神様が地上にいる1人の人間を指差した。学生服を着て、ちょっと田舎な道を歩いているパッとしない高校生くらいの少年だ。そして今度は神様が1人の天使を指差す。


「んじゃ、お前があいつの秘書ね!はい、神様お終い!あとよろしく〜」


「え⁉︎アタシ⁉︎」


「神様⁉︎待ってください!」


「そんなの聞いてないわよ!ええ……。」


そう言って神はどこかへ瞬間移動してしまった。

…のこされた天使はさぁ大変。神がいなくなった分をなんとか取り返さないといけない。とにかく後任の神を用立てるべく、秘書に選ばれた天使はいそぐのであった…









夕焼けが綺麗な田舎道を歩く俺。

とりあえず一旦名前を名乗ろう。

俺、皇 龍弥。高校生だ。

こんな厨二チックな名前以外には、自分では割と特徴も個性のない普通の人間だと思ってる。

…とまぁ、ラノベにありそうなテンプレ自己紹介をしてはみたが、ホントの所、俺は決して普通の人間なんかじゃない。


すこぶる変な奴だ。


どの辺りが変なのか、いくつか例を挙げてみよう。

①周りの目を気にしない無鉄砲野郎。

②独り言の多い妄想バカ。

③名前負けした当たり障りのない容姿。

変人過ぎて、ついた仇名は数知れず。気がつきゃ友と呼べる輩は数えるほどしかいない。

そんでもって、幼い頃から何かと自分の世界に入りがち。かく言う今も、学校を終え塾へ向かう途中の夕暮れの道でこうして妄想に耽り、自分という生き物が一体何であるかについている。


結論。


「やっぱ俺、変人だ。」




はぁ…現実を見たらなんか疲れた。そろそろ真面目に塾へ行くこととしよう。


「あーあ…。早く普通になりてーなー…」


「〜っ!」



….ん?

今、声が聞こえた気が…


「…ぶない!」


ふな?鮒?


「危ない!早くどきなさい!ぶつかるから!」


え?どk「早く!」

いやだr「上よ!上!」

上?上って俺n「きゃぁぁぁっ!」


どっしーーん!!


いったい何処のラノベだろうか。いや寧ろあの名作アニメのようだと言うべきか。

dear親方。空から女の子が降ってきました。


「っ〜!もう!どうして退いてくれないのよ!」


とはいえ、少女を上手くキャッチできたあの少年とは違い、俺は頭から思いっきり少女に激突している。ムードなんてあったもんじゃない。あまりの痛みに頭が割れたんじゃないだろうか、と頭を摩る。

舞い上がる土煙の中、怒り声を上げる少女に向けて俺も文句をぶつけてやった。


「いやいやいや!この場合どう考えても俺が被害者だろ!」


「知らないわよ!〜ったくもー!あのヘンタイ上司もいい加減にしなさいよ!セクハラで訴えてあげるんだから!おかげで準備の途中で落っこちちゃったじゃない!」


準備?

というか、そもそもなんでこの女の子は空から落ちてきたんだ?


やがて土煙は収まり、視界が開けてくる。その女の姿をようやく見ることができた。


「あーあ。このワンピース割とお気に入りだったのにこんなによごれちゃって…」


真っ白な服を手で叩いて、砂埃を落とす少女。その度に赤いツインテールが揺れ、砂埃で涙が出たのか、ルビー色の瞳がキラキラと輝く。


「………///」


「…何よ。間の抜けた顔しちゃって。」


無意識のままに、俺はその少女に見惚れていた。…多分こういうのを一目惚れっていうんだろう。今までにないドキドキが俺の心を満たしていた。勿論、俺に恋愛経験がないわけではない。高校にだって多少は気になる異性もいるし、可愛いな、ってお世辞抜きで思える奴もいる。

でも俺の目の前にいる彼女はそう言うのは連中とは何かが違った。空からぶつかってきた時点で第一印象は最悪な筈なのに。…いや、その特異な出会いこそが俺の心を揺さぶっていたんだ。


「ん…?あ!あ!丁度よかったわ!」


俺の顔を見て、少女が俺の元に近づいてくる。心臓の音が早くなるのが自分でも分かった。


「あなた、神様やってみない?」


嗚呼、この女の子の可愛らしさをどう表現すればいいのか。俺は生憎この気持ちを形容できるだけの語彙力を持ち合わせちゃいない。見ているとそれだけで幸せになれるような、そう、まるでアイドル…いやもっと上の天使のような…………



ん…………?


「今、何て言った?」


「だーかーら!アンタに"神様"やってほしいの!」



は?



「はぁぁぁぁぁぁ⁉︎」






以上。

うん。どんなに細かく思い返しても同じだ。


訳がわからん。


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