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鳥も楽しみにしてただろうから

作者: 菱田哲

『 おいっ。帰りにそこの袋に柿を入れといたからもってけ。』

職人のお母さんは80歳を過ぎているが4年前におじいちゃんが亡くなってからも健康の為と言いながら畑を放ってはおけないとも言いながらおじいちゃんと作り上げた畑が気になって毎朝、毎朝、使い込んだ背負い籠を少し曲がった腰に起用に乗っけて手押し車におぼつかない足を補助してもらうような前傾姿勢で庭の裏から細い道を登っていく。途中で最近、相棒となったどこかの飼い猫と合流して。


『おはようございます。今日は暖かいですね』って声をかけるのはおばあちゃんが畑から帰り、日向ぼっこをしながら新聞を広げている午前10時過ぎだ。今朝は新聞を読んでいるようだったが昨日は新聞を腹巻のようにお腹に回した格好で相棒のどこかの飼い猫とコックリ、コックリ居眠りをしていた。


袋に入った柿は庭に植えてある古い甘柿の木に実った不揃いのもの。不思議だと思うのはその年にどんなに大雪だろうが長雨だろうが猛暑であろうがちゃんとこの時期には広がった枝に朱赤の実が撓るほどに成るのである。そして、毎年言うのだ。『今年は柿のあたり年だ』って。


『こんなに頂いていいんですか?ありがとうございます。家族みんな、柿が大好きで。うれしいなぁ』

田舎の年寄りは欲がないのかって思うほどのたくさんの柿が詰め込まれていた。

『おばあさんだから採れるところだけだぞ。少し、息子に手伝って採ってもらったけど。へえ、疲れちゃった』柿の脇には脚立が横になって残されていた。

『なんなら俺が採ってやろうか?勿体無いよ』って言うとおばあちゃんは

『あぁもう結構、結構。あとは鳥たちの食い扶ちだから残してやらぁ』っと言った。そうだよなぁ鳥たちも毎年、この時期に決まってこの庭に成る柿が美味い事は知っているはず。きっと楽しみに朱赤に実り、熟し、啄ばむ頃を楽しみにしているのだろう。そんな事を思いながら屋根を見たら大きな鳥、小さな鳥、白い羽根の鳥、尻尾がやけに長い鳥たちがお互いのそれぞれの距離感を取りながら集まっていた。





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