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第五十九話 勇者一行

「呼んだか?」


 そう言って俺がこぼした言葉に反応したのは、金髪のイケメンだった。

 その周りにはパーティメンバーと思われる人が四人いて、各々が色んな面持ちでこちらを見つめている。

 全員がそれなりに豪華な装備を着ているせいか目の前に並ぶだけで威圧感があり、俺は一瞬たじろいでしまう。

 だが、ここで押し負けてはいけないと踏ん張って、口を開いた。


「呼んだか……ってことはお前、勇者なのか?」


 呼んだか、なんて返事をしているからでこいつが勇者であることは確定事項のようなものだったが、どういう経緯で勇者になったのかとか、勇者というのは職業なのかそれとも称号なのかとか、そういう質問に繋げるために一応確認を挟んでおく。

 気圧されたままでは前には進めない。

 ワンクッション置いて体勢を立て直すのだ。


「いかにも、俺は勇者だ。と言っても勇者は俺だけじゃないんだけどな」

「……と、言うと?」


 芝居がかった仕草で勿体ぶった話し方をする勇者。

 何とも頭の悪そうな印象を受けるが、こういうのが好きなのだろうか。

 探す手間が省けた時点で時間は余っているので俺としてはゆっくり話してもらっても構わないのだが、時間をかけた結果特に何も話さないまま用事があるとか言って逃げられないかという懸念があった。

 まぁ、その場合でもこっそりマーキングをしてしまえば会いたい時に会えるのだが。


「俺だけじゃなく、後ろのこの二人も勇者なんだ。ちなみに俺は『武』の勇者コウスケって言ってな――」

「――ちょっと、一人でべらべら喋らないの」


 何やら気になる言葉が聞こえたような気がするが、コウスケと名乗った勇者が続けざまに話そうとしたのを遮って、後ろにいた女が止めに入った。

 ちなみにこの女、コウスケに勇者として指されていた二人の内の一人ではない。

 正義感が強いタイプの人間なのだろうか、申し訳なさそうな表情をこちらに向けて、


「ごめんなさいね、一方的に喋っちゃって。何か用があったのかしら?」


 そう言って謝った。


 勝手に情報を垂れ流しにしてくれる分には何も困ることなんてなかったのだが、ここはギルドのど真ん中、向こう側としてはあまり周りの人間に話を聞かれたくはなかっただろう。

 さすがに俺がその話を聞きに来ているとまでの考えには至っていないだろうが、一旦こっちの情報を開示しない限りは向こうの情報もこれ以上引き出せないだろう。


「用って程のことでもないんだが、ちょっと頼みたいことがあってな。端的に言うと、手合わせをしてほしいんだ」


 俺のこの言葉に一瞬、場に緊張が走る。

 俺は何か地雷を踏み抜いてしまったかと焦るが、その緊張感はすぐに消えて元に戻った。

 しかし、次に口を開いた女の口は重々しかった。


「……それは、どういう意味かしら」


 地雷、とまではいかなくても何やら事情がある様子。

 ここは下手に隠し事をせずに正直に真実を伝えよう。


「意味も何も、言葉通りそのままの意味だ。勇者って言うからには強いんだろう? 俺はそれと戦って自分がどれほどのものなのか確かめたいんだ」


 俺は猜疑心に染まった女の目をまっすぐに見つめ、嘘偽りはないというアピールをする。

 それから数秒の沈黙の後――


「――良いぜ、やろう」


 俺の目線の外側、金髪のイケメン勇者――コウスケがそう答えた。


「ちょっと――」


 再び女の方が止めに入ろうとするが、コウスケはそれを抑えると、さっきまでの陽気でお喋り好きな空気を捨てて一歩前に出た。


「だがその前に自己紹介だ。一旦場所を移そうぜ」


 そう言う間に、笑顔と共に陽気な雰囲気は戻ってきたが、それを掻き消さんばかりの真剣な心象もビシビシと伝わってきていた。



===============



 俺たちは近くの喫茶店に場所を移し、まずは自己紹介をした。


「改めて、俺は『武』の勇者、コウスケだ。コウスケ=マツダ。よろしくな」


 コウスケ、という名前を聞いた時になんとなくそんな気はしていたが、マツダという音の響きには聞き覚えがある。

 きっとこいつは元日本人、あるいはその親族と言ったところだろう。

 金髪碧眼に掘りの深い顔立ちを見るに俺と同じように転生したと考えるのが妥当だろうか。


「始めまして。私は『知』の勇者をしています。ユウカ=ササキと申します。よろしくお願いします」


 次いで自己紹介したのはこの世界では珍しい黒髪を長く伸ばし、ローブに三角帽子という典型的な魔女の格好をした少女だった。

 長い前髪の間からこちらを伺っている彼女からは壁を作られているように感じる。

 名前からして日本人が関係しているのは間違いないが、顔立ちが良く見えないせいで転生なのか転移なのか、その辺りは判別ができなかった。


「俺は『技』の勇者、レイジ=スズヤだ。よろしく」


 今度はクール系。

 ユウカと同じく髪色は黒がベースだが、青のメッシュが入っている。

 相当のイケメンだが、こいつは多分日本からの転移者だろう。

 顔立ちが完全に日本人のそれだ。

 それにかけている眼鏡もこっちの世界にあるような金属フレームのものではなく、某踏んでも捻じっても壊れることのない素材で作られたものである。


「私はこのパーティで回復や援護を担当しているエル=ソルガリアよ。よろしく」


 どことなく不満げな少女は気の強そうな印象とは結び付かないが、回復役(ヒーラー)をしているらしい。

 さっき止めに入ったのにこういう流れになってしまったのが気に食わないのかずっと俺と目を合わせようとしない。

 いきなり嫌われてしまったようだ。


「……ん? ソルガリアって……」


 だがそんなことはどうでも良くなるようなことを、実は彼女は言っていたのだ。


「そうよ。私ソルガリア王国の第六王女なの。勇者たちと歳が近いからって、こうやってパーティを組んで一緒に冒険をしているのよ」


 エルは王女がこんなところにいて凄いでしょとでも言いたいのか、得意げな顔をこちらに向けてくる。

 だが、俺はそれがどれほど重大なことなのか、はたまた異例の事態なのかということが分からないため、そんなドヤ顔をされても特段凄いとは思えなかった。

 それが伝わったのか、エルは再びむすっとした顔に戻ると、そっぽを向いてしまった。

 その時ふわりと揺れ動いた薄黄色の短髪と着ている鎧を見て、それは女騎士の格好だろう、と俺は心の中でツッコミを入れた。


 さて最後。


「俺は王国騎士第一支団団長、ブルーと言う。よろしく」


 これまた王国の関係者、しかもそれなりの役職持ちだ。

 名前に反して赤褐色の髪の大柄な男で、重そうな甲冑を着込んでいる。

 だが年齢は勇者たちと同じくらいなようで、恐らくこの男もそういう理由で抜擢されたのだろう。

 王女とは違って支団長というのは実力のない人間に務まるような役職ではない。

 強さに関しては期待できるだろう。

 だが、どうも寡黙な男なようで言葉数が少なく、情報を引き出すことに関しては期待できなさそうだ。


「俺は冒険者のスマル。スマル=シャーカーだ。一応魔術師をやっている。よろしくな」

「私はモミジと言います」

「……ユキ。よろしく」


 最後に俺たちが自己紹介をして、話は本題へと進んで行く。


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