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閑話三 観光・前

今回から二話、閑話として観光パートとなります。

 朝、観光だと言って意気込んだは良いものの、どこに行けば何があるのか、特に観光名所というものが分からなかった俺たちは、朝食を兼ねてまずは屋台を回ることにした。


「さて、外に出たは良いが、二人とも何か食べたいものとかあるか?」


 しかし、完全に無計画で出てきてしまったので、とりあえずはみんなの意見を聞いてみることにした。


「そうね……パンみたいなものがあればそれが良いわ」

「……私も、柔らかいものが良い」


 その意見を聞いて、俺たちはパン、あるいはそれに準ずるものがないかを探す。

 二、三分歩くと、パンではないが、肉を包んで蒸した肉まんのようなものを売っている屋台を見つけた。


「お、これなんかどうだ? 味も色々あるみたいだぞ」


 よく見ればスタンダードな肉まんだけでなく、チーズを入れたものや、野菜がメインのものも売っていた。

 コンビニ的なピザまん、あんまん、カレーまんといったものはさすがになかったが、それでも懐かしく思える。


「じゃあ私は野菜のにしようかな」

「……チーズ、野菜、迷う……」


 結局モミジが野菜、ユキがチーズ、俺がスパイスを多く使ったレッドというものを食べた。


 野菜まんはその名の通り数種類の野菜がメインで入っていて、肉も入っているが割合的には二割ほどで、それぞれの野菜から出た旨味、甘味とシャキシャキコリコリした触感が特徴的だという。

 外側はもちもちとしていて噛み応えがあり、噛めば噛むほど美味しくなる中身と相性抜群。屋台と言って侮れないよく考えられた出来栄えだったらしい。


 チーズまんの中身は塩コショウでシンプルな味付けがされたハンバーグみたいで、肉々しさと玉ねぎ独特の香りが強い中、臭みが少なくマイルドなチーズが入っており、ガツンと来る肉をチーズが包み込むように中和してくれているらしく、フワフワで厚めの外側のお陰で濃い中身でも飽きずに食べられるように配慮されているそうだ。


 俺が食べたレッドは赤唐辛子を筆頭に香辛料が多く使われており、想像以上の辛さに若干後悔もしたが、ちゃんとその後ろに旨味が隠れていてくれて、病みつきになりそうな一品だった。

 その旨味の正体が味噌のような気がしてこっちの世界にも味噌があるのかと店主に訊いてみたが、企業秘密だとあしらわれてしまった。

 これも外側に工夫がしてあって、蒸した後に焼くことでカリカリとした触感を加えてくれていた。


 どれも本当に美味しく、俺たち三人は朝から満足感と幸福感に包まれながら一日をスタートすることができた。


 ちなみに、フォールは肉――おそらく牛肉――を串に刺して焼いただけの『肉串』の方を見つめていたので、そこで焼き加減をレアにしてもらい、二本買ってあげた。

 やはり狼は肉が好きなのだろうか、とても嬉しそうにしっぽを振りながらぺろりと平らげてしまった。



==========



 フルーツジュースやデザート系の食べ物もちょこちょこ食べながら屋台を巡ると同時に、俺たちはそれぞれの店主からこの街の観光地についても聞いていた。

 それから冒険者ギルドにも立ち寄り、見知らぬ冒険者や職員さんとも少し話をして情報を集めた。

 その結果、街の北側にある高台から見る夕陽が綺麗だということと、各門の近くにある党の上から見る街並みが面白いということ、それから中央の広場にはいつも大道芸人などの見世物をしている人がいるということが分かった。

 陽が落ちるまでにはまだ時間があるため、今日は広場の見世物を見てから夕陽を見に行こうということになった。


 中央広場に着いてみると、噴水の縁に腰を掛けながら弾き語りをしている吟遊詩人や、皿回しをしている人がいた。

 吟遊詩人の方にはそれなりに人が集まっているように見えるが、皿回しを見ているのはせいぜい四、五人。こんなことろにも格差があるんだなと芸よりも先に厳しい現実を見ることができた。


 そうこうしている内に吟遊詩人の演奏が終わったみたいで、いつの間にかおひねりを帽子に集めていた。

 頃合いを見計らってその吟遊詩人はどこかへと行ってしまったが、すぐに別の芸人がやって来て芸を披露し始めた。


 今度は皿ではなくコマを回す芸人のようだ。

 俺たちは暇だったのでその芸を遠くから眺めていたのだが、皿回し同様あまり人が集まっていない様子。

 考えてみると、その原因は単純なことであるということに気付いた。


 この世界には冒険者という職業があるように、身体能力に関しては高めの人間が数多くいる。

 戦闘職ではない人でもある程度戦いの心得があったり魔術が使えたりするのが当たり前なのだ。

 そうすると身体能力やバランス感覚ありきの皿回しやコマ回しなどの凄さ、レアリティというものは自然と下がってくる。

 他人がやっているのを見なくても道具さえあれば自分もできると思われてしまうのだ。

 実際にいきなりできる人は少ないだろうが、練習すればすぐできるようになる人が多いのも事実。

 ましてや回す系に関しては風の魔術なんかでサポートしてしまえば落とすことはまずないし、俺だったら棒やひもを使わずに空中を飛び回らせるといったこともできるはずだ。


 それに加えてこの論の裏付けになる出来事が一つ。

 その後に来た芸人には人だかりができたのだ。

 その芸人がやったのは、ねぎをはじめ麺棒や杖などの棒状の長いもの、最後には剣なんかを口から入れるという芸だ。

 最初のねぎはまっすぐで引っ掛かる部分もないし、安心して見れたのだが、杖なんかは持ち手も部分がどこかに引っ掛かりそうだし、剣に至ってはミスは死と同等である。

 辛そうな表情でやるからそれがまたこちらの恐怖を煽る。


 これは身体能力は関係なく、どういう仕組みになっているのかは分からないが一般人にはハードルが高い芸だ。

 こういうのには見る価値があるとおひねりも多く出るのだろう。


 モミジとユキはあまり楽しそうにはしていなかったが、俺はそこそこ楽しめた。

 また今度来る機会があったら吟遊詩人の弾き語りを聴きに行こう。



===============



 広場で芸を見てからまた甘いものを食べ、陽が落ちてくるタイミングに合わせてきたの高台に向かった。


 高台は広場ほどの大きさはないが、白を基調とした石造りのスペースそして舗装されていて、ベンチや落下防止の策などが設置されていた。

 近くには店を構えている人も多く、屋台も数店あり静かな雰囲気ではあったものの人の数は多かった。


 俺たちはベンチでゆっくりとしながら陽が傾いて行くのを待ち、遂に綺麗だと有名な夕陽を見ることができた。


 空は勿論、白い石たちが光を反射してオレンジ色に染まり、ほんの数分間ではあったが、暖かく儚げな空間が出来上がった。


「綺麗……」


 モミジはそう言葉を漏らし、俺やユキは言葉もなくただ感動していた。


 陽が落ち切ってからもその場にいる全ての人間が余韻に浸るように動きを見せず、祭りの後のような喪失感にも似た胸の中に残る消えかけの熱を感じていた。


今週っはあまり執筆時間が取れそうにないため、次回更新は再来週とさせていただきます。

また、次回更新時に『閑話四 観光・後』の後にこれまでの登場人物をまとめたものを上げようと思います。

どちらも読まなくても大丈夫な部分ではありますが、混乱なさらぬようご注意ください。

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