表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/211

第四十二話 後処理

 力なくうつぶせに倒れたゴブリンロードの周りに、黒く濁った血溜まりができる。

 感知してみると、横たわる巨体は既に生体反応を示さなくなっていた。


 案外あっさりと倒せてしまったことに驚き半分、残念さ半分といった気持ちで俺はエネルギーソードを消し、その亡骸に近付いて行く。

 距離が縮まるにつれて、流れ出たゴブリンロードの血の匂いが強くなるのを感じた。


「……これが、ゴブリンの長」


 一般的に最大級の脅威とされているゴブリンロード。

 勝てそうな気がして、というか勝利を確信して挑んだ戦いではあったのだが、その実力は予想を遥かに下回り、感想としては速くて力が強いだけの巨漢であった。

 力試しも兼ねていたはずなのに、実力に差があり過ぎてその目的は果たせず仕舞いだ。

 もし結界を張っていなかったら周りのゴブリンに襲われていただろうから、それを考えると一概に弱いとは言えないのかもしれないが、最大の武器が統率力、なんて他力本願では締まりがない。

 所詮はゴブリンと言ってしまえばそれまでだが、何とも空回りしたようで気分が悪かった。


 腹いせに周りのゴブリンを殲滅してやろうかと考えたが、(ロード)が倒されたせいかそこに好戦的なゴブリンはおらず、上位種や亜種までもが逃げようと動き出していた。

 さすがに群れを率いていたような個体が動くと俺たちもすべてを追いきれない。

 もう森の中は暗くて視界が悪いし、これ以上狩るのは諦めて一旦ギルドに戻るとしよう。


 俺はパーティメンバーにそれを伝えるべく、まずは結界の中に入れておいたアイルたちの所に向かった。

 ちなみに、方向音痴の俺だが、今回は結界が発する魔力を感知しながらその方向に進んだため、見当違いな方向に歩いて行ってしまうようなことにはならなかった。

 場所が分かってから、方角を間違えても森が開けた場所の縁を歩いていればいずれ見つけられたのであろうことに気付いたが、俺はそれを考えなかったことにした。


「おーい、アイルー! シーナー! 生きてるかー?」


 そして、こっちの結界も解き、目に見えて怯えている二人に声を掛ける。

 体育座りで震えていた二人は俺の声を聞いて、壊れた人形のようにギギギ……とぎこちなく首を回すと、こちらに向かって恐怖と怨念のこもった顔を向けて同時に叫んだ。


 だが、二人同時に叫んだからか、そもそも言葉になっていなかったのかは微妙なところだが、二人が何を言いたいのかを聞き取ることはできなかった。



===============



 それから数分間、二人が落ち着くまで待っていると、退いて行くゴブリンを追っていたのかモミジとユキが森の中から出てきた。


「急に逃げ出したから何かしらあったのだろうとは思ったけど、その様子だと、ゴブリンロードは倒せたみたいね」

「……お疲れ、スマル。私も疲れた……」


 返り血や土で酷く汚れ、見るからに俺より激しい戦闘をしていたであろう二人は、合流してまずそう言って俺を労ってくれた。

 俺としては余裕を持って戦うことができたし、特段疲れるようなことはしていないので労うべきは二人の方だと思うのだが、それを言うのは野暮である。

 だから、俺の方からも二人に労いの言葉を送り、大きなけがはなさそうだが、念のため回復魔術と浄化魔術をかけておいた。


「お、おい、結局、何がどうなったんだ……?」


 そこで俺たちのやり取りを未だに体育座りの姿勢のまま聞いていたアイルが、右手を挙げながら質問してきた。


 何が、どうなったか。

 この問いにはきっと色んな意味が込められているのだろう。

 それは、ゴブリンロードがどうなったのかとか、取り巻きのゴブリンたちはどうなったのかとか、なぜ自分たちがこの状況で生きていられているのかとか、大体そんな所だと予想できる。

 あるいは、ゴブリンロードという駆けだし冒険者にとっては絶望でしかない強敵を簡単に退けた俺たちに対して疑問を持っているのかもしれない。


 質問の幅が大きすぎて何から答えたら良いか分からないが、俺はとりあえず事実確認として今この瞬間までに何が起こっていたのかを話すことにした。

 だが、その前に、


「その質問に答える前に、もう暗いからな、さっさとゴブリンの死骸を回収して、焼いて、街に戻ろう」


 俺の提案には全員が賛成し、さすがに時間が経って落ち着いたアイルとシーナも速やかに動いてくれた。


 通常種のゴブリンは今までと同じように耳を切り、上位種や亜種は耳だけでは判別が難しいため、他の特徴的な部分を持って帰るのだが、上位種や亜種からは武器や防具、家具などの素材が採れることがあるため、報告用とは別に素材部分も持ち帰る必要がある。

 これに関しては義務ではないので無視しても良いのだが、少しでも資金が欲しい俺たちはできる限り素材も持って帰りたかった。

 だが、大雑把に数えただけでも軽く百は超える数のゴブリンがいて、持ってきた袋だけでは容量が足りないことが発覚する。

 そこで俺は、地面に収納空間(アイテムボックス)の魔法陣を描き、発動させ、その中に入り切らなくなった耳やゴブリンの死骸を入れてもらうことにした。

 普通、収納空間(アイテムボックス)は同じ魔法陣からしか取り出すことができない仕様になっているらしいのだが、魔方陣を少しいじることで同じ柄の魔法陣ならどこで発動させても共通の空間から取り出せるようにできる。

 今回はそれを利用して、ギルドに戻った時に同じ柄の魔法陣から取り出そうというわけだ。


 収納空間(アイテムボックス)を利用してからは作業が円滑に進み、ギリギリ真っ暗になる少し前に俺たちは街に向けて出発することができた。

 その道中、


「さて、そろそろ質問に答えるとしますか」


 俺は質問の答えとして、何があったのかを順に説明した。


 まずは、大量の軍勢を率いたゴブリンロードに遭遇したこと。

 次に、アイル、シーナ、フォールの二人と一匹は危険だから俺の張った結界の中にいてもらったこと。

 それから、ゴブリンロードを隔離して俺が戦い、取り巻きはモミジとユキが対処したこと。

 そして、俺がゴブリンロードを倒したことで取り巻きは逃げて行ったこと。


 説明し終えると、二人は訊いておいて信じられないとでも言いたげな顔でこちらを見ていた。

 だが、今話したことが事実なので、俺はそれ以上何も言えない。

 何も言わないでいると、


「スマルより私たちの方が戦ってたみたいね」

「……アイルたち、ズルい。私も休みたかった」


 なんて見当違いな非難の目をモミジとユキから向けられたりもしたが、


「俺たちだって怖かったんだぞ! いつ破られるか分からない結界の中から、飛んで来る攻撃を見てみろ!」

「わ、私は結界の強度は信用してましたけどね! ……怖いものは怖いですけど」


 早口でまくし立てるように叫んだアイルとシーナにかき消された。


 それから魔物に襲われることもなく、俺たちのパーティは無事に街へと帰ることができた。


どの話数の時だったのかは分かりませんが、いつの間にかユニークPVが一万を超えていました!

読者の皆さん、ありがとうございます!

また、今後もこの物語をよろしくお願いします(_ _)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面白いと思った方、よろしければ投票お願いします。 下記をクリックすることで一日一回まで投票ができます。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ