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第百七十二話 楽勝

 村に着くまでは生物の痕跡を見つけては避けてきたから魔物はもちろんのこと、危険のない野生動物にも出会わずにここまで来た。とはいえ痕跡を見つける頻度はそこそこのもので、つまりは何かしらの生き物がたくさんいることは分かっていた。その中でも食料にするとしたら、ある程度サイズのある哺乳類が良いだろうか。そんなことを考えながら森の中を歩いていると、すぐに鹿や猪を見つけることができた。

 ヴォルムはどちらかというと身体的なパワーではなく頭脳を評価されて部隊の長をしている。と言っても、さすがに野生動物と戦って後れを取るほど弱くはない。様々な技能を習得しているオールラウンダー。どんな武器でも扱えて、今も狩りに適した武器――弓を担いでいた。村の人間の手作りらしくその精度や強度には若干の不安があるものの、離れた位置から一方的に攻撃できるというのは大きなアドバンテージだ。獲物に気付かれる前、油断しているところへ一撃。急所を貫いて仕留めるか、脚を狙って機動力を奪うか。真正面から戦おうとすると逃げてしまう野生動物を狩るときの一種のセオリーだ。


「よし、一旦帰るか」


 鹿と猪を一頭ずつ狩ったところで、そういえば村に何人残っているのかを聞いていないことに気付いた。食料は足りないよりは余った方が良いし、干し肉などに加工して保存しておくこともできる。とはいえ、加工する場所や保管する場所に限りがある以上、無計画に狩っていくことは憚られるのだ。村に残っているのが老人ばかりということもあり、鹿と猪が一頭ずつの時点で多いと言われる可能性もある。命を無駄にしないために、ヴォルムは獣二頭を担いで村に戻った。

 村長に報告がてら残された人たちの人数や年齢についても聞いてみると、全部で十二人の老人が残されていることが分かった。元々村が裕福ではなかったのもあって皆小食で、狩ってきた二頭だけで十分、どころか確実に余るだろうとのことだった。保存に関しては今までも行っていたそうだが、残された老人だけで加工しきるのは難しいとのことで、追加にはなるが、これもヴォルムたちが手伝うことになった。

 元々解体くらいはやらされるだろうと考えていたヴォルムにとっては意外でもなんでもなかったので承諾して、さっそくいつも解体に使っているというスペースに案内してもらった。とりあえずは今日食べる分をどうにかするか。そう思って鹿の解体に取り掛かろうとした時、各家に薪を運んでいる最中のリフィルが通りかかった。


「おーい、そっちは大丈夫そうか?」

「ヴォルムさん! 戻ってたんですね。私の方は問題なく薪割ができてますよ。それは……鹿ですか?」


 抱えていた薪を地面に置いたリフィルが駆け寄ってくる。外に設置された解体用の机の上に乗せられた鹿に興味があるようだ。


「猪もいるぞ。この村に来るまでにも思ったが、森の中には結構な数の動物がいるみたいだ」

「凄いですね! どうやって仕留めたんですか?」


 シスターという役職柄から勝手に殺生に関することは避けているのかと思っていたが、イメージとは裏腹に案外興味津々というか、むしろ好きなのではと思えるほどに前のめりな姿勢のリフィル。今もそう問いながら前足の付け根付近から心臓に向けて貫いた痕を見ていた。


「気付かれる前に弓でな。お世辞にも使いやすいとは言えない村民の手作り弓だったが、威力は十分にあったから良かったよ」

「猪も弓で?」

「ああ」

「わぁ、良いなぁ、これだけあれば今日は豪華な食事ができそうですね!」


 量が多いだけでその中身が豪華であるかは分からない。こんな村に上等な料理環境や調味料があるわけがないため、どちらかというと出来上がりは質素なものになるだろう。大鍋いっぱいに入った肉は確かに迫力はあるかもしれないが、味の保証はできなかった。ヴォルムがしている解体、下処理も経験が浅くて完璧なものではないのだから。

 しかし、せっかく上機嫌なリフィルをがっかりさせるようなことを言う必要もない。ヴォルムは思ったことを喉の奥に押し込んで首を縦に振った。実際、他の具材と合わせて全部煮るという簡単な調理を失敗することはないだろうから、完成品が不味いということもないだろう。最低ラインは保証されている。こういうところで食べるものに限った話ではあるが、最低ラインが保障されているだけで環境としてはだいぶ良い方なのだ。ウキウキで薪運びに戻って行ったリフィルを見送りながら、ヴォルムは一足早く食材に感謝した。

 その後も何度かリフィルが通りかかっては解体作業を見学していく流れを繰り返し、大体同じくらいのタイミングで解体と薪の運搬が終わった。その後、二人で畑の野菜を使う分だけ収穫し、鍋の中に全部入れた。道具の片付けなど、諸々の手伝いが終わったのは丁度太陽が真上にきた頃だった。柵の増設がまだ残っているが、二人で話し合って一旦、昼の休憩とすることにした。

 そういえば、自分たちがこうして手伝いと称して村の仕事を肩代わりしている間、村に残っていた人たちは何をしていたのだろうか。もしかしたら日頃から老人は特に何もしないのが通例で、若者が働いていたのかもしれないが、それにしたって全く何もできないわけではないはずだ。でなければ、ここに老人だけを残していくことなんてないだろうから。そこで、気になっていつの間にかどこにいるのか分からなくなってしまった村長を探してみると、村に残っている十二人全員が一か所に集まって話をしているようだった。

 これは根拠のない、言ってしまえば直感みたいなものだったが、この村の人たちは何かを隠している。それがヴォルムたち二人にとってどんな意味を持つのかは分からないが、不安要素はできるだけ排除しておきたいものだ。見つかった時の言い訳に作業進捗の報告を用意して、気付かれないように隠れながら聞き耳を立てた。


「……そろそろ着いた頃かのぉ」

「今年も無事終わってくれれば良いが……」

「無事? 無事だった年があったものかね」


 何やら物騒な話をしているようだ。遠いからか、発音が曖昧だからか聞き取りづらいが鬼だとかなんだとか、そういう単語が聞こえる。村の人が鬼退治に行っているのだろうか。

 もし、その鬼とやらが退治されずにここまで来るとしたら非常に危険だ。村に留まっているのは得策ではない。しかし、まだ何も確証が持てないうちに行動に移すのも危険だ。とにかく情報収集。そのために、しばらく老人たちの会話を聞き続けた。

年内の更新は今回で最後です。一年間ありがとうございました。

今年はスケジュールやタスクの管理が甘かった一年だったように思います。

来年は計画的に投稿できよう頑張りますので、またよろしくお願いします。

と、言いながらいきなり来週の更新はお休みです。

それではよいお年を!

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