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第百四十八話 再戦の申し込み

「久しぶり、だな」


 予告も予兆もなく突然現れたヴォルムにひとしきり驚いた後、何を聞かれていたのか分からなくなってしまった俺は誤魔化すようにそう言った。その真意に気付いているのかいないのか、ヴォルムが返すように「久しぶり」と言ったことでモミジとユキとも挨拶を交わす流れになり、最後にベネッサとも自己紹介代わりに一言二言交わしていた。


「で、俺はお前らにいつ話をすれば良いんだ?」


 そうだった。ヴォルムが俺たちに昔話――神とヴォルムの間に一体何があったのかを話してくれるから、暇な時を聞かれているのだった。それを聞かれると俺たちには当面予定という予定がない。しかし、話を聞くのは俺たちだけではないはずだ。


「俺たちは当面暇だけど、勇者たちにも一緒に話すんだろ? 一括でやるならあいつらと合流してからじゃないと」


 魔王が丁度昨日言っていたことを信じるなら、近い内にこの街にやってくる勇者たちと一緒に話を聞くことになっていた。ヴォルムと魔王がどのくらいスケジュールについて打ち合わせをしているのかは知らないし、正直二度話すのが手間じゃなければ勇者たちを待って都合を合わせる必要もないと思っているのだが、それをこちらから言い出すのは難しかった。


「いつ合流できるかはもう分かってんのか?」

「詳しい日程は聞いてない。ただ近い内だとは言ってた。その辺りはヴォルムのが詳しいんじゃないのか?」


 純粋な疑問。魔王はヴォルムの指示に従って動いているものだと思っていたが、さっきからの話を聞く限り、魔王が大分勝手にことを進めているように聞こえる。


「いや、まぁ大分長いことあいつに任せちゃってるからなぁ……。そもそも協力者が増える度に俺が昔話してるわけでもないし。そろそろ一回会って話しといたほうが良いのかもなぁ」


 そう言ってヴォルムは宿の外へ出て行こうとする。


「え、おい! 結局どうすんだよ。暇な時聞いてかなくて良いのか?」

「ん? あー、二回同じ話すんの面倒だから勇者たちが来てからにするわ。ちゃんと情報収集はしとくからこっちから出向くよ。それじゃ」


 それとは別件で会ったら色々聞きたいことがあったのに、ヴォルムは足を止めることなくスルスルと外に出て行ってしまった。一応俺も追いかけるように外に出て行方を探ったが、案の定見付からない。こうなったらまず会えないと思っても良いだろう。俺は小さく舌打ちをして食堂へと戻り、残りを口に押し込んだ。



===============



 それから一週間後、暇だし冒険者らしく依頼でもこなすかと近場の魔物を狩っていた俺たちがギルドに報告しに戻ると、勇者たちが奥の部屋で待っていると受付の職員に告げられた。この街にやって来たということは諸々のやらなければならないイベントが終わったのだろう。急いでこれだけ時間がかかったということは相当忙しかったに違いない。そんな大変な役割を丸投げしてしまったことに罪悪感が生まれる。きっとしばらくはこの街に滞在するだろうから、その間に労いの何かをしてやろう。

 職員の案内に従って奥の部屋――会議室に入ると、そこには言われていた通りに勇者パーティが勢ぞろいで迎えてくれた。


「お、スマル! やっと来たな」

「あれ、もしかして結構待ってた感じ? それは悪いな」


 コウスケのやっと来たという言葉から待たせてしまったのかと思い謝る。しかし、ユウカが大袈裟なくらいに手と首を振って否定した。


「違うのか?」

「あの、えと、待ってないわけではない、んですけど、待ち合わせていたわけでもないのに謝らせるのは、違うかなって……」


 ユウカの言い方から、やはり真面目なんだろうなと感じる。わざわざ口を挟まなくても誰も悪い気はしていないのに、俺が勘違いをしているのを看過できなかったのだろう。悪いことではない。少なくとも俺はそう思うが、歯切れの悪いというか、言い淀むような話し方も相まって良く思わない人もいるだろう。生きづらい場面もあるだろうなと勝手ながらに心配した。


「別に謝ってほしくて言ったわけじゃないからな!」


 ユウカの言うことを聞いて自分の言葉が受け取り方によっては待ったことを強調しているようにも聞こえることに考えが至ったのか、コウスケが誤解しないでくれと慌てる。待っていたこと自体は嘘ではないのだから悪く思わなくても良いのに、こいつも律儀な奴だな。フォローを入れても良かったが、そろそろ話を進めた方が良いと判断して笑みを返すだけにとどめて勧められるがままに椅子に座らせてもらった。


「そういえば、ベネッサは勇者たちとは初めましてか?」

「ええ、そうね。存在は一方的に知っていたけれど、こうして会うのは初めてよ」


 ここに来る際に何も聞かされていないということは勇者たちから何か話があるのか、あるいは聞きたいことでもあるのだろうか。そんなこと考えているとふと「その娘は誰?」的な視線を感じたのでベネッサには自己紹介をしてもらった。


「神との戦争にはこのベネッサと、それからモミジとユキも協力することになったから、その辺りもよろしくな」


 一通りの紹介が終わった後、俺はそう補足して本題に移ろうと促した。話したいことがあるのか、聞きたいことがあるのか、どちらにしても向こう側から話してもらわないと俺は反応することができない。勇者たちが何かを言い出すのを待った。


「魔王に聞いてた話だと、件のヴォルムさんが話をしてくれるってことになってたけど、この場にいないってことは今すぐにそれが始まるってわけでもないんだろう。そこで提案なんだが――」


 ゆっくりと溜めてから、コウスケはそう切り出し、


「――俺たちと、手合わせをしないか」


 不敵に笑った。

 手合わせ、どこか聞き覚えのある単語に懐かしさを感じながら、俺は 以前よりも強くなったであろう五人に視線を向ける。俺が教えていた間は確実に俺の方が強かったが、戦場に駆り出された彼らがどう成長したのかはいまいち分からない。対する俺の方は対して強くなっていないから、もしかしたら負けてしまうかもな。そんなことを考えながら、俺も笑った。自然とこぼれた笑いだった。


「良いよ。やろう」


 その返事を合図に俺たちは一斉に立ち上がり、ある場所に向けて歩き出す。目的地は勿論訓練場――の前に使えるかの確認をしなければならないのだが、まぁ使えるだろう。


「ちょっと、私も混ぜなさいよ。ねぇ、聞いてるの? ねぇったら」


 戦いと聞いて興味津々なベネッサを半ば無視して、俺たちはただ歩みを進めた。

来週の更新はお休みさせていただきます。

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