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第十話 着物少女

読者様方のお陰でついに十話です!

これからもよろしくお願いします!

 この家の子供は、三歳の幼女二人に俺を加えた年少組と、六歳以上の男女二人ずつの年長組に分けられている。

 それは身体能力から仕事分けをするためで、年長組は定期的に外に食材を採りに行っている。


「ただいま! ヴォルムは!? 助けて!」


息も絶え絶え、といった様子で家に入ってきたのは、この家の子供の中で最年長の少女――フィオだった。

 いつもみんなからフィオ姉と呼ばれ、頼られる彼女がどうしてこんなにも焦燥しているのか。

 それはその小さな背中に採集用のカゴの代わりに背負われた、着物姿(・・・)の少女が原因だろう。

 黄色を基調とした着物を真っ赤に染めるほどの血を脇腹から流し、苦悶の表情に冷や汗を浮かべる少女は、助からないのではないかと思うくらいに重傷であった。


「何があった!」


 俺はそんな光景を見ていることしかできなかったが、さすがはこの家の主といったところだろうか、ヴォルムはすぐに玄関までやってきて、事情を察したのか着物少女に回復魔術をかけた。

 するとみるみるうちに傷が塞がり、悪かった顔色も少しだけ良くなった。

 意識を失ってしまったので、ヴォルムが風呂で血を流してからベッドに寝かしておくそうだ。


 ヴォルムがいるからひとまずは安心だろうと、フィオも血を流しに行き、その後ろにいた年長組の面々もぞろぞろと入ってくる。

 その背には食べられそうな植物や果物が詰まっているカゴが背負われていて、最後に入ってきた、男の中では最年長のドムがフィオの分と合わせて二カゴ持っていた。

 着物少女が助かったというのにその面々の表情は暗く、とても楽し気に収穫について訊けるような雰囲気ではなかった。


 ドムの両手が塞がっていたので俺がドアを閉めると、年長組は短くお礼を言って調理場にある食料置き場にカゴを置きに行った。

 食料置き場とは、ヴォルムが描いた魔法陣によって上に置かれたものの鮮度を保つ、という細工がされた場所のことだ。

 指定した空間の時間の流れを遅くすることで腐らないようにしているらしい。便利なものだ。


 年長組が調理場に入って行くのを見送り、さてどうしようかと視線をめぐらすと、騒ぎを聞きつけたのか年少組が遅れてやってきた。


「何かあったー? 何かあったー!」

「怖く、ない?」


 どうやら何があったかまでは分かっていないようで、一人はキャッキャと騒ぎ、もう一人はそれに隠れるようにキョロキョロと視線を動かしている。

 分かりづらいがこの二人、俺に対して質問をしているのだが、血塗れの着物少女が担ぎ込まれたことを分かりやすく説明するほどの能力は俺にはなかった。

 どうしたものかと唸っていると、そこに仕事を終えたヴォルムと年長組が集まってきた。


「新しい仲間が増えるかもしれねぇんだ。これから飯作るから、詳しいことはそん時にな」

「晩飯ー! 晩飯―!」

「仲間……?」


 ヴォルムがそう説明すると、二人ともそれ以上は聞かずに――というかそれぞれが興味を持ったことで頭がいっぱいになってしまったようだ。



 ほどなくして、ヴォルムが言っていた通りに夕食の時間となった。

 今日のメニューはキノコシチューにサラダ、そして固めのパンだ。

 日本では米ばかり食べていたが、今ではすっかりパンが主食になっている。


「キノコ食べたくなーい」


 なんて子供っぽい声が聞こえるいつもの食卓。

 だが今日は、いつもと違って一人多い、九人での食事となった。

 年長組が放つ重苦しい空気のせいで何を食べても味がしないまま、気付いたら皿が空になっていた。


 食事の後、そんな空気の中口を開いたのはヴォルムだった。


「じゃあ飯も食い終わったことだし、自己紹介と事情の説明でもしてもらおうか」


 その言葉は明らかに着物少女に向けられたものであったが、空気が読めるはずもないチビッ子が元気よく声を上げた。


「チーはチーっていうの!」


 チーと名乗ったのは、赤髪をボーイッシュに短く切った年少組のお転婆娘だった。

 一瞬、場が固まった気がしたが、そのすぐ後に続いて緑髪を伸ばしているの気の弱そうな年少組リーダーが手を挙げた。


「わ、わたしは、グラ。よろしく……」


 この流れだと、年少組として俺もしておいた方が良いだろう。


「スマルだ。よろしく」


 ここから、年長組の自己紹介に入り、年齢の低い方から六歳の無口な紫髪幼女――コルン。同じく六歳の金髪生意気野郎――ソージー。七歳の緑髪おっとり男――ドム。八歳の頼れる青髪ポニテ姉貴――フィオと自己紹介をした。

 そして最後にヴォルムが自分と施設の紹介をして、やっと着物少女の番になった。


 着物少女はどこか焦ったように、しかしそれでもハキハキと説明をしてくれた。


「私はイチョウと申します。十歳です。出身は東方列島と皆さんが呼んでいる島の一つ、ジープンというところですが、訳あってここにいます」

「その訳ってのが怪我をしてた理由か?」

「はい。東方列島の技術が欲しいからと、最近西の大国から使者が来るようになって、小国である私たちは稼ぎ口を易々と渡すわけにもいかないので断っていたんです。そしたら使者の人たちは非戦闘員を人質にとって交渉を始めたんです。それに戦える私が紛れ込み、何とか逃げ出したのですが、一緒に逃げていた方の一人が双子の赤ちゃんを連れていて、思うように逃げられなかったんです。それでも何とかこんなに遠くまで、半年もかけてやって来たのに、執念深く追手が来て、今日遂に見つかってしまったというわけです」

「他の人はどうした」

「大人はみんな殺されました。赤ちゃん二人は私が見ていた限りでは殺されていませんでしたが、今はどうなっているか……」


 話を聞いていると、それはもう凄惨なことになっていたようだが、ではなぜイチョウは今こうして生きているのだろうか。

 敵からしたら戦闘ができるイチョウを真っ先に殺しておくべきであるはずなのに。

 俺のそんな疑問に答えたのはフィオだった。


「二人は死んでいないわ。私があなたを助けたとき、生きていた人には全員マーキングを付けておいたの。反応があるから、偽装でもされていない限りは生きているはずよ」

「本当ですか!?」


 思わず身を乗り出して訊くイチョウに、フィオはゆっくりと頷く。

 するとイチョウは「良かった」と言いながら泣き出してしまった。

 赤ちゃんたちが本当に大切だったのだろう。


 それにしても、年長組――特にフィオ姉は凄いな。

 脇腹に一太刀もらったイチョウを助けたということは、きっと敵との戦闘もあったのだろう。

 それで誰一人として欠けることなく帰ってきたこともそうだし、まだ少女の域を出ないとはいえ、自分より年上の人間を担いでここまで戻ってくるのには少なくない体力が必要になるはずだ。

 そんな状況でもマーキングをしたというのだから完璧だ。


 俺が感心していると、ヴォルムが立ち上がり、フィオの頭を撫でて玄関へと向かった。


「フィオ、イチョウ、今から双子を助けて来る。そう不安な顔すんな。食器でも片付けて待っててくれ」


 ひらひらと手を振りながら、ヴォルムは武器も持たずに家を出て行った。


私「novelbaノベルバ」というスマホアプリを使っていて、小説が投稿できるようになったのでこの作品上げたんですけど、Twitterの公式アカウント見てたらどうにも「本日のノベルバ1位」になっているようでした。

手違いじゃないのなら嬉しい限りです。ありがとうございます。

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