隠れた結果と自己紹介
いけたわ。そしてカイト視点に戻るんやで
あ、ようやくPVが10000突破しました! 皆さんありがとうございますです。はい。
さて、結果から言おうか――
「うし、これでいいか」
男はそう言って俺の足を縛る。
――はい、見事に捕まりました。テヘッ♪……じゃねぇよ畜生
急に扉が開いたと思ったら剣を構える男と目が合って、すぐに逃げようと飛び出したら後ろから手だけ伸びてきてシュパッっと捕まった。いやぁーすごい反射神経だったな、振り向いてないんだもん。
「ったく、なんでこんなところに子供が――っておいコラ逃げるな」
「ぐぇっ!」
さらに逃げようとすると男に首根っこ部分を雑に掴まれて首がしまる。苦しいから掴まないでほしい。
「で、おまえはどっから来た? どうしてここにいる? 何か怪しいことでも考えてるんじゃないだろうな?」
次々と質問してくる男を改めて見ると、義父さん義母さんと歳は変わらない感じだ。金属製の防具を所々に付けており、腰には剣、背中には槍と……あれは矢筒?があるけど弓はない。身長は高めでイケメン?……少し顔が怖い系のイケメンだな。あと少しだけ酒臭い。
「え、えっと、あの……」
質問にどう答えればいいのか迷ってしまう。はっきりと真実を言うべきか適当なことを言って誤魔化すべきか、相手からしたら子供でも得体の知れないやつだから言っても信じてもらえないか……。ていうか前にもこんなこと考えた気がする……デジャヴだ。
「その……」
「あぁぁー!!! めんどくせぇ! ハッキリ言いやがれ!」
俺が言いよどんでいるとイライラが頂点に達したのか怒鳴りつけてくる。ダメだな言っても信じるどころか笑ってくるやつだ、俺の感がそう告げている。
「――ちょっとどうしたのよ。一人で叫んじゃって頭でも打ったのかしら?」
「きっと一人だと寂しいから叫んで紛らわせてるんだよ」
「ああ!? 打ってねぇよ! それと寂しくねぇ!」
すると男の後ろから二人の女性が近づいてきた。そうだった、ここに来たのはこいつ一人じゃなかったっけ。すっかり忘れてた。
俺は女性二人に目で助けてくださいと訴えかける。だが男の体に隠れてしまっているのか俺の存在に気づいていない。
「で? どうして一人で叫んでたの?」
「ああ、それはこのガキがハッキリ言わねぇからだ」
そう男は言うとまたもや俺の首根っこ部分を雑に持ち上げるので男を睨みつける。俺は猫じゃないぞ! 首のとこ持っても猫みたいにうにょーんって伸びないんだからな!
俺に気づいた背の高い方の女性は「あら」といってじっくり俺を見てくる。すると何やらシンパシーを感じたのかニヤッと悪そうな笑みが一瞬見えた。
「どうしたのよ、その子……ハッ! まさかあなたにそんな趣味が……」
「そんな……まともだと思ってたのに!」
「こんな綺麗な人が近くに二人もいてまさかそっち系の方だったとは……」
「「「引くわー」」」
「ねぇよ! どう考えたらそうなるんだよ! ここに隠れてたんだよ! ていうかなんでガキもそっちに入ってんだよ!」
何この茶番、乗った俺もわけわかんない。
この人たちはこういう関係なのかこんな茶番に慣れてるようにも見える。ふむふむ悪くない。
「あらノリいいわねこの娘、うちのメンバーに欲しいわ」
ん? なにかニュアンスが違ったような……
「そうだねー、この娘がいたらなんか楽しくなりそうだよね」
あれ、何かこの二人勘違いしてないか?
「あの、僕男だよ?」
と俺が言うと二人してそのまま固まる。
ちなみに今自分のことを「僕」と言ったのはこんな少年が俺とか言ったら変だと自分で思った結果です。はい。
実は異世界に来てから髪なんて切ってないので今は肩ぐらいまで伸びている。切るのめんどくさいし何より伸ばしてみたかったからね。そしてボロコートを着てるし子供の体だから男女の差なんてほとんど無いから見間違えたんだろう。俺は若干女顔なのでそのせいもあるかな。
「「え、男の子なの?」」
びっくりしたような反応ということはやっぱりそう見えたのか。
「ほんとに男の子なの? あ、ちょっと服脱いでみてよ」
「え?」
いきなり何いってんのこの人。セクハラ? ショタ好き? 通報する?
「変な人なんて思わないでね。なにか隠し持ってないかの確認よ、一応しておかないとね」
確かに一理ある、ここは従っておこう。俺はボロコートを器用に片手だけで脱いで床に落とす。
「なっ!」
「ええ!?」
「ど、どうしたのよその腕!?」
「あっ……」
三人がボロコートを脱いだ俺の右腕がないのを見て目を見開いて驚愕した。
しまった。どうしよう、右腕ないのがバレた。いや、隠そうとしてたわけじゃない。ただ、ややこしくなりそうだと俺の感が(以下略)
「……ん、氷?」
すると男が腕についている氷を注視する。
「……ほんとだ」
「うーん、ちょっと集合。あ、君はそこにいてね」
腕を少し覆っている氷を見た三人は俺から少し離れてなにやら内緒話を始めた。なんだなんだ?
「確かに氷だよね。なんで腕についてるんだろ?」
「氷か……まさか噂で聞いたことのあるあいつがやったのか……?」
「そんなこと――いえ、でも可能性は捨てきれないわね……あの人ならやりかねないわ」
距離があるため会話は全部聞こえなかったが誰かのことを言っているのは聞き取れた。あいつとかあの人とかそこんとこだけ。「あいつ」と聞こえたとき俺のことを指してると思いドキッとしたが三人が俺のことを「あの人」とは言わないから違うとわかってホッとした。
◇◇◇
しばらくすると内緒話が終わったのか三人とも俺のところに戻ってくる。
「さあ、今更だけど自己紹介をしましょ。まずはこちらからするわね。私はAランク冒険者で魔法使いのメリッサ、見たとおりエルフよ、よろしくね」
とニコニコ笑いながら杖を見せたりして簡単な自己紹介をするメリッサ。たしかに耳が長いのでエルフなのだろう。雰囲気から見るとクールビューティーって感じだな、それに発育いいんだなこの人、ボン!キュッ!ボン!だぞ、エルフはみんなこうなのかな。それと冒険者……Aランクって強いのかな? そこんとこ分かんないからあとで聞こう。
「それでこの小さいのが同じくAランク冒険者のリリー、あ、リリーって言うのは愛称で本名はリリベリットって言うのよ」
「ハイハーイ、少年君もリリーって呼んでね! よっろしくね! ……って小さいって言わないでよ!」
リリーはぷりぷりと怒りながら俺の手を握ってぶんぶんと握手する。
その時「うぅ……どうしたらメリッサみたいになれるかな……!」と言う嘆きが聞こえてきたが俺が口出しすることではないので……聞かなかったことにしようと心の中で決めた。個人差だから諦めろとは言えない、もしかしたら種族の差かもしれない。
あと手についてる篭手が怖いからね。しょうがないよね。
「そして君を捕まえたチンピラ脳筋バカのアレスよ」
「おい! なんで俺の説明だけそんなふざけてんだよ! ってかチンピラ脳筋バカだと!? そりゃお前の方だろうが!」
「わ、私はチンピラ脳筋バカじゃないわよ! 変なこと言わないでくれる!?」
「ほぉー、どの口が言うんだ? いきなり前に出たと思ったら敵の真ん中に「もう、焦れったいわね!」とか言ってデカイ魔法打ちやがるくせに」
「うぅ! それは時間が――」
いきなり口喧嘩しだしたメリッサとアレスを離れて見る俺とリリー
これじゃ話が進まないんだけど……
「ほらほら二人とも、まだこの子の自己紹介終わってないからそのへんにしとこうよ!」
とリリーが二人を止めてくれたので再開する。
「ふう、じゃあ最後は君よ」
「あ、はい。俺――じゃなくて僕はカイトです。気づいたらここにいました」
「そう、カイト君ね。じゃあご両親はどこにいるの?」
ふむ……ここら辺の質問は素直に答えておこう。
「両親はいないです」
「……ごめんね、つらいこと聞いちゃって」
「いえ、いいんです。今は義父さん義母さんと呼べる人がいるんで、そこまで悲しくないです」
「そう、ならよかったわ。それでねカイト君、こんなこと聞いて悪いと思うけどその腕はあの人にやられたの?」
俺の右腕があった場所についてる氷を指して聞いてくる。
だからあの人って誰のことだよ。俺知らないよ。
「えっと……あの人って誰のことですか?」
「……え!? あの噂聞いたことない?」
「し、知らないです」
ずいずいっと迫ってくるので俺は少し後ずさりする。
「あの人っていうのはね……『狂氷の魔女』って呼ばれてる『アスクレッタ・シークレイト』という女性のことよ、少し昔のことだからカイト君が知らないのも無理はないのかな?」
「狂氷の魔女?」
狂った氷の魔女……いったい何をしたんだ?
「ええ、噂話だけどね。ある事件があってからそう呼ばれているわ」
「事件……ですか?」
「ええ……それはね――」
神妙な表情をしながらメリッサは狂氷の魔女について話を始めた。