初めての魔物との遭遇
少し遅れたかも……ごめんなさい。
今現在俺は森の中を進んでいます。
見渡す限り木、木、木、ここで目を閉じて回ったら…… ああ、方向わかんなくなりそう。
前に家にあった地図を見たことがあるけど、この森って村より規模がでかいんだよね。地図を見てた時に義母さんが俺の倒れていた場所を笑いながら教えてくれたっけ。……ははは、森のど真ん中だったよ。おかしいなあれだけ歩いたのに……
それと、開拓されていないところが多すぎて森がすごい広さになってるから迷ったらお終いだなって義父さんが行ってた気がする。
俺は実際森にいたわけだから分かるわーとか思ってたけど、奥に行かないから大丈夫だ!とか楽観的になってたんだ……んで、今どうなってるかというとーー
「……うん、やっぱり迷いそうだな」
前科としてこの世界に来た時に迷いに迷って餓死しかけたからね、念のため義父さんに太陽を見て方角を確かめる方法を教えてもらってたんだけどさ、葉っぱが多すぎて太陽が見えないんだわこれが。……役に立たないよ義父さん……。
そんな不安を抱えながら俺は進んだんだが……
「あー、これは絶対迷ったわー、あいつらが付けた跡もなんかバラバラだし何なんだよ!」
段々イラついてきて俺は気づいたら怒鳴っていた。いかんいかん、落ち着かないと……
みんなが付けた跡がバラバラ過ぎてわかんなくなるよ! 左にあったり右にあったりで……ちゃんとつける方向決めとけよ!
「はぁ……、あいつらどこまで行ったんだ? これ以上はまずいだろうし……」
大人がいれば少しくらいなら森に入ってもいい、という暗黙のルールがあったりする。強ければ奥に行ってもいいんだとか……ん? たしか俺って森のど真ん中に倒れてたんだよな? ……もしかして義母さんって強いの? ねぇ、強いの?
こんな時に義母さんって強い? という疑問を持ってしまったが、今考えても答えなんて出ないので頭の隅に追いやった。
「大声でもだして呼んでみるか? でも危険だしな……」
さて、どうしたものか……
「きゃあー!!!」
「っ!?」
考え込んでいると右の方から女の子の悲鳴が聞こえてきた。
「こっちか! おーい、おまえらー! 返事しろー!」
「だーーるーか!?」
少し離れているのか小さくローレンの声が聞こえてきた。
「大丈夫かー!!!」
「カイトか!? ……バカ! こっち来るな! 早く逃げろ!」
来るなと聞こえてくるがあいつらが心配な俺はそれを無視して声の方へ走り出した。 なんかバキバキッ! とか聞こえてくるんだけど……
「っ!?」
「くそっ! 来るなって言ったのに……!!!」
そこには俺たちの約5倍ほどの大きな体で4本の腕を持った真っ黒な熊……いや、魔物がいた。目は真っ赤、口元はよだれだらけ、興奮しているのか息を荒げていて俺がいることには気づいておらず、ローレン達の方を見ていた。
「グルゥア!!!」
「いやぁ!」
「やばいぞアクラ!」
「……ちくしょう!」
ローレン達は大きな木の上に逃げていた。服に枯れ葉などがついていたり、土で汚れているので急いで木に登ったのだろう。幸いなことにそこにいる熊の魔物は木に登れないらしく敵意をむき出しにしたままその場で止まっていて、たまに威嚇してくる。
そのせいか、威嚇の恐怖でラピア、ミラ、レイネの三人は気を失っているようでぐったりしている。
「……そうだ! おい! カイトは大人を呼んできてくれ!」
ローレンは俺の方を向かずに大人を呼んでくるように言ってきた。俺の方を向かなかったのは、視線などを向けて魔物が気づいてしまうのを防ぐためだろう。
「まだ少しくらいなら俺たちは大丈夫だ! だから大人を呼んできてくれ!」
確かに魔物が木に登れないならまだ安全だろう。しかし、あの大きな体で木に向かって突進などされたら木などひとたまりもない。俺が呼びに行っている間にそうならないという保証はどこにもない。
だとしたら、あいつらを助けるには……こうするしかないのかなぁ。
俺は足元にある手ごろな石を持ちーー
「おい、こっち見ろ!」
「グァ?」
「カイト!?」
ーー魔物に向かって全力で投げた。
「グギャァ!!!」
俺が投げた石は魔物の真っ赤な目に当たり赤い血が流れていた。あ、当たっちゃったよ
「いまだ! 早く逃げろ!」
「あ、ああ!」
魔物が目の痛みでのたうち回っているうちにローレン達に逃げるように促した。気を失っている三人を一ずつ背負っているのであまり速く走れないだろうが……
「道はわかるか?」
「ああ、覚えてるからだ、大丈夫だ! カイトも来いよ!」
「早く行け! 俺は残るから!」
「な、なんでだよ!」
俺が残るから大丈夫かなーーって思ってたのにローレンは俺が残る理由がわからないらしい。……マジかよ、本とか読んでないのかよ。
「誰かが引き付けないとみんな魔物に殺されるぞ!」
「っ!?」
どんな魔物でも子供の走る速度より早い。これは本にも載っていることだ。なので、このまま全員で逃げたら魔物は必ず追ってくる。そして全員殺されてお終い。という最悪なことになってしまうのだ。だから誰かが残ってみんなを追わせないようにしないといけない。
「そうならないために俺が残るから! 早く行って強い大人を呼んでくるんだ!」
「で、でもよ!」
ローレンは口ごもってその場から動かない。そんなに俺だと不安なのかよ、……なんかイラついてくるな!
「っ! いいから早く行けよ!! バカヤロウ!!」
「わ、わかった!」
かなり強めに言ったおかげでローレンは後ろを向き走っていった。
「さーて、どうしようかなー、ははは……」
「グルァーー!!!」
そして俺は興奮から激怒にチェンジしているだろう魔物と相対するようににらみ合っていた。ーーああ、俺死んじゃうんじゃないかな?
ただいま就職活動中なのでしばらく更新できないです。ごめんなさい。