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笹田幸は可愛いものが苦手だ。
理由はある程度検討がついている。
「ずっと好きでした、笹田先輩。わたしと付き合ってください」
そう告白してきたのは、一年の花園くるみだった。
どこか舌ったらずな話し方、線の柔らかい幼い顔、ふわふわな髪の毛、小柄な体躯。どれをとってもかわいい。
校内で五本の指に入るほど男子生徒に人気があると云われている女子生徒だ。
「あの、先輩への気持ち、恥ずかしくて言えないかもって思ったから、お手紙に書いてきたんです。受けとってください」
もじもじとした仕草で差し出されたのは、ピンクにレースやお花のプリントをあしらったかわいらしい便箋だった。
そこまでが限界だった。
ああ来たな、と幸は思った。途端に目の前が真っ暗になる。急に体に力が入らなくなった。
女の子の悲鳴が聞こえる。
幸は泡を吹いて失神した。