桑田という男
俺の通っている学校ははっきり言って都内でも五本の指に入るぐらいの底辺校だ。
偏見も入るが当然馬鹿な学校だけあってあまり良くない噂を持つ不良も多い訳で……
「おーい、吉賀」とぼんやりしていた俺の背中を叩いてきた。こいつ、桑田もそんな不良グループに属している。金髪にオールバック、鼻ピアス。いかにもな感じだろう?
「昨日のヤニがまだ切れてないんじゃねーの?くくく」といじわるく笑う桑田。
「ああ、もう昼休みか。気づかんかった」時計の針を見るとちょうど1時に差し掛かろうとしていた。
教室にはみんな食堂に行ったのか、ほとんど人がいなかった。
「お前、まさかシャブやってんじゃねーだろうな」桑田は真顔で聞いてきた。
「アホか」
昼休みはいつも桑田と校内の見回りのようなものをしている。ある一件を境になぜか校内では番犬的な扱いになったのだが、これについては後で触れる事にしよう。
軽く伸びをしたあと、桑田と一緒に教室を出る。
「今日もしゃかしゃか行きますかー」
教室には誰もいなくなった。
2−2
道行く生徒に先を譲られながら俺たちは廊下を進んで行く。
「なんだかなー、きちいんだよなあ最近」と前髪を手で搔き上げながら桑田。
「どうしたのん?グループの問題?」とケータイをいじりながら俺。
「いや、違うとこ。ここだけの話、俺ちょっとした取引に関わってんだよな」
「え、クスリ?ヤバくねーかそれ」
声のボリュームを下げて話し出す俺と桑田。
「いや、クスリじゃねーけど。ある意味クスリよりヤベーよ」
ますます話がわからなくなる展開だが、興味がわいてくる。
「なんだよ教え……っ?」とそこで予鈴が鳴った。
気づけば廊下にいた生徒はみんな移動教室へ向かっているところだった。
と桑田が俺の肩をつかみ、
「とりあえずブツであることは間違いねえ。今はそれしか言えねえ」耳元でささやいた。
ここまで鋭い目つきをした桑田は久しぶりに見た気がした。