表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

第9話 執念の1発!


「やめなさい!」


鷹が振り返ると、カオル先生が震える手で銃を構えていた!

鷹は立ち上がってゆっくり近づく。


「撃てよ!撃ってみろよ!お前に人が殺せるか?」


「撃て!」


ボッサンが叫んだ!

しかし、震える両手で構えていた銃の引き金は引けなかった!

鷹は銃を奪い取ってカオル先生をひっぱたいた!

床に倒れるカオル先生!

ボッサンは前を見た!

コンクリートの壁はすぐそこだ!

ボッサンは運転席に駆け込んだ!そして手を伸ばした!

鷹は銃口をボッサンに向けて迫ってきた!


「ハハハハッ!俺の勝ちだ!死ねぇ!」


ボッサンは握っていたサイドブレーキを思いっきり引っ張った!

バスはスキール音と共に急停車!

バランスを崩した鷹は、前につんのめってフロントガラスを頭で突き破った!

首を抜こうともがいていたが、段々動きが遅くなり、頭がフロントガラスに突き刺さったまま動かなくなった。


ボッサンはゆっくりと立ち上がり、子供たちに向かって言った。


「もう大丈夫だ!悪い奴はやっつけた!みんなバスから降りて!」


ボッサンの言葉を聞いて、子供たちは一斉に声を上げた!


「やった~!」


子供たちがバスを降りていく中、ボッサンは運転手の湯尾じいさんの容態を見た。

気を失ってはいるが、呼吸はしていた。

命に別状は無いようだ。

ボッサンは湯尾じいさんを担いでバスを降りた。

バスはコンクリートの壁から3メートルの所で止まっていた。

湯尾じいさんを地面に寝かせていると、パトカーが続々と到着してきた。

園児の親が、子供たちを乗せたまま猛スピードで通過する幼稚園バスを見て、警察に通報していたのだ。

ボッサンは警官の1人に言った。


「救急車を呼んでくれ!」


オッパイが歩いてきた。


「いや~ほんま、もうダメやと思いましたわ」


「危なかったよ」


ボッサンは笑顔を見せた。

カオル先生がやって来た。


「本当にありがとうございました!」


カオル先生は深々と頭を下げた。


「いやいや、当然の事……!」


ボッサンは言葉を切った!


"なんだ!この胸騒ぎは!

何かが違う!今見ている光景に違和感を感じる!


目の前のカオル先生。


その後ろのバス。


フロントガラス……!


奴がいない!"


フロントガラスから突き出していた鷹の頭が見えない!

と、その時、カオル先生の後ろから、血だらけの顔をした鷹が現れた!


腕を上げて銃口を向ける鷹!

ボッサンはカオル先生を突き飛ばす!

鷹は引き金を引いた!

弾はボッサンの腹を貫いた!


ボッサンは膝まずき倒れた!


意識が遠退いていくボッサン……








フロントガラスを頭で突き破り、息絶えたと思われた鷹。ゾンビの様に現れ放った弾丸は、カオル先生をかばったボッサンを貫いた。

尚も警官に発砲した鷹は警官隊に射殺された。

バスの運転手の湯尾じいさんと共に、病院に搬送されたボッサン。

処置が早く一命を取りとめて、順調に回復に向かっている。

湯尾じいさんも意識を取り戻した。

白龍会の殺し屋アイスマンは、鮫島殺しの容疑で逮捕、姫川エリカ誘拐監禁に関わったメンバーも逮捕され、白龍会は事実上解散となった。

姫川エリカの父親、姫川権蔵も買収、嘱託殺人の容疑で逮捕された。





ー東京医科大学病院ー



「おいユオ」


「なにボッサン」


「何でお前と相部屋なんだ?」


「さあね、経費節減なんじゃないの?」


「何か腹立つ」


「生きてるだけでもいいじゃん」


「しょ~がねぇな。我慢してやるよ」


そこへ面会人がやって来た。


トントンッ


「どうぞ」


部屋に入ってきたのは、花束を持ったカオル先生だった。


「こんにちは。怪我の具合はどうですか?」


カオル先生は、神妙な面持ちでボッサンの様子を伺った。


「あ~、こんなの怪我の内に入んないですよ。唾でも付けときゃすぐ治りますよ。ハハハッ」


ボッサンが笑ってる隣でユオが言った。


「じゃあ僕が唾付けてあげるよ。ペッぺッ」


「バカ!きったね~な!」


カオル先生は2人のやり取りを聞いて微笑んだ。

カオル先生の後ろから女の子が顔を出した。


「あれ?君はたしか、俺を助けてくれた子だよね?あの時はありがとね」


女の子はカオル先生の前に出てきて言った。


「あそこで助けてあげないと、カオル先生にあえなくなっちゃうんだもん」


ボッサンは首をかしげた。


「会えなくなっちゃう?」


女の子はカオル先生に寄り掛かって、上目遣いで言った。


「あえないと、けっこん出来なくなっちゃうから」


「なおちゃん、何言ってるの?この人と私が結婚するっていうの?」


カオル先生はしゃがんで女の子に言った。


「けっこんするよ。そしてね、カオル先生とこのおじさんがね、なおのあたまいい子いい子してくれるの」


カオル先生は赤面しながらボッサンに言った。


「すみません、突然失礼な事言っちゃって。この子時々変な事言うんですよ。気にしないで下さいね」


「だってほんとだもん」


女の子はカオル先生に抱き付きながら言った。


「いや、いいんですよ。ハハハ」


柄にもなく照れているボッサンを横目で見ながらユオは言った。


「おじゃま、かな?」


「バ~カ!なに気を使ってんだよ!ぼさっとしてね~で、先生が持ってきてくれた花を花瓶に差して来いよ!」


「僕も怪我人なんだけど」


「その程度で怪我?笑わせるぜ!そんなのバンドエイドで十分なんだよ!」


「唾で治るボッサンより、僕の方が重症って事ね」


「バカじゃねぇの?何言ってんだろね~、まったく~!」


そこへオッパイとアオイがやって来た。


「ボッサン、もうちょっとボリューム下げてもらっていいすか?廊下の窓ガラスがビリビリいっとったわ」


「ユオ、お前の体に俺の血が入ってんだから、許可なく血を流すんじゃねーぞ」


「オッパイ、いきなりご挨拶だな」


「なんだろな~、許可なく献血も出来ないわけだ」


オッパイとアオイが加わり、更に盛り上がった病室は、怪我人とは思えないボッサンの声が廊下に響き渡り、この後看護婦から注意されるのであった。





ー神倉邸ー



神倉親分は、腹を縫ったばかりだというのに、パジャマ姿でみんゴルに熱中していた。

その後ろで須寿、乃愛、漏守は、パッティングラインであーだこーだと言っていた。


「もうちょい右ですかね」


「いや、そんなに切れないっすね。ちょい左」


「いやいや、も~っと右ッスよ~!」


「あ~もうごちゃごちゃウルサイ!俺はこれでいく。8.5位で。せ~の、どうだ!そのままいけ!……あ~!カップに蹴られた~!モリモリ~!」


「え~?俺ッスか~?」


そこへ一馬が入ってきた。


「失礼します。組長に会って謝りたいって奴が来てますが、どうしますか?」


神倉親分はコントローラーを置いて言った。


「よし、連れてこい」


しばらくして、一馬は青年を連れてきた。


「すいませんでした!」


青年は神倉親分を見るなり、土下座をして畳に頭を擦りつけて謝った。

神倉親分は、青年が自分を刺した犯人だという事はすぐに分かった。


「おい!こっちへ来い!」


神倉親分は低い声で言った。

青年は神倉親分の目の前に来て土下座をして言った。


「どうぞ気の済むまま、煮るなり焼くなりして下さい!」


神倉親分は手を上げると、青年の頭をなぜた。


「間違いは人間誰にでもある。だから間違える事はしょうがない。

大事なのは2度と同じ過ちを繰り返さない事だ!

ここに来るのにも相当の勇気がいったろう。

その勇気に免じて、今回の事は無かった事にしてやる。だが1つだけ条件がある」


「条件?」


青年は顔を上げて言った。


「俺の組に入れ!そしてお前の根性を叩き直してやる!どうだ!」


青年の目から涙が溢れてきた。そして頭を下げて言った。


「ありがとうございます!このご恩は一生忘れません!そして神倉親分に一生ついていきます!」


「お前、名前は?」


「はい!いけっちと言います!」


「じゃあ、いけっち。とりあえずだ、お茶が飲みてぇから入れてきてくれ。一馬、お茶のいれ方教えてやれ」


「分かりました!」


一馬はいけっちを連れて部屋を出ていった。

2人を見送った神倉親分は、コントローラーを持つと気合いを入れて言った。


「よ~し!次はアルバ狙っていくぜ!」













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ