第5話 ボッサンの企み
ー郊外廃工場ー
白龍会の組長、鷹の乗った白いフェラーリは、廃工場へと入っていった。
鷹を追ってきたホヘトとオヴェは、廃工場の塀沿いに覆面パトカーを止めた。
オヴェはホルスターからH&K P2000を抜くと、マガジンを抜いて弾丸を確認した。
「ホヘトさん、いきますよ」
ホヘトは時計を見ながら言った。
「もうすぐ昼だな。飯食ってから行かねぇか?」
「何言ってるんですか!一刻も早く人質を救出しないと!」
「わかったよ。行くよ、行けばいいんでしょ」
ホヘトとオヴェは車を降りると、正門に回った。
正門の陰から中の様子を伺うオヴェ。
「人影は無いようです。行きましょう!」
P2000を構えて中に入っていくオヴェに続いて、ホヘトもSlG Sauer P230を抜いて、ブツブツ言いながら中に入っていった。
「あ~あ、セブンイレブンのシュウマイ食いてぇ~な~!」
敷地内はとても広く、倉庫が立ち並んでいる。
物陰に隠れながら進んでいくオヴェとホヘト。
奥にメインの建物が見えた。
建物の前に、白のフェラーリと白のベンツ600SL2台と白のダッジバンが止まっている。
「ホヘトさん、手配中の白のダッジバンもいますよ。応援呼びましょうよ!」
目を輝かせているオヴェに、ホヘトは汗を拭きながら言った。
「ふぃ~。オベ、車に戻って無線で応援呼んでこい!俺はここで見張ってるから」
オヴェは横目でホヘトを見ながら言った。
「ホヘトさん、最近酒ばっか飲んで運動不足でしょ!」
図星のホヘトはムキになって反論する。
「オベ、ゴゥラ!酒と運動不足は関係ないんじゃ!早く行ってこい!」
「はいはい。行ってきますよ~だ」
オヴェは、ホヘトの背中にアッカンベーをしながら走っていった。
しばらくして黒のベンツ560SELが2台敷地内に入ってきた。
ホヘトは慌てて物陰に隠れる。
「なんだよ~!また白龍会か~?」
「違いますよ。神倉組です」
いつの間にかホヘトの後ろにオヴェがいた。
「わっ!ビックリした~!オベ、ゴゥラ! 脅かすんじゃねぇよ!それより応援は呼んだのか?」
双眼鏡を持ってきたオヴェは、ベンツの行方を覗きながら言った。
「呼びましたよ~。なんだか面白くなってきましたね!」
ホヘトはオヴェの双眼鏡を奪って覗きながら言った。
「よし!応援が来るまで待機!オベ~、セブンイレブンいってシュウマイ買ってきて!もちろん温めてもらうんだぞ!」
「え~!やですよ~!自分で行ってきてくださいよ~!」
オヴェはしゃがみこんでホヘトに背を向けると、ホヘトはオヴェの背中に張りついて耳元で呟いた。
「オベちゃ~ん?警視庁の極秘情報にアクセスしてる事バラシちゃおっかな~、ん~?」
「わかりましたよ。行けばいいんでしょ、行けば!」
オヴェは渋々立ち上がると、ホヘトの背中に、指で鼻を押し上げて走っていった。
その頃ボッサンたちは、建物の中の通路を出口に向かって進んでいた。
通路の途中に大きな窓があった。
中を覗き込むと、白龍会の奴らが8人。
その中に、AK47を持ったローサンがいた。
「あの野郎、俺のGTRを廃車にしやがって!覚えてろよ!」
ボッサンは、中指を立てながらローサンを睨みつけた。
そこへ、白いスーツ、白いアフロヘアーのサングラス男が入ってきた。
「何だアイツは?頭おかしいんじゃねぇか?あのイカれ具合からして、奴がボスっぽいな」
白龍会の奴らに気づかれない様に、窓の下を這っていく。
通路を進んでいくと、突き当たりに観音開きのドアがあった。
ガラス窓から中を覗くと、奥の出口のドアの前に2人見張りがいる。
そこに1人走ってきた。
何かを話しているが聞こえない。
そして3人はこっちに走ってきた!
「ヤバいぞ!隠れろ!」
ボッサンは辺りを見渡す!通路横にドアがあった!
ドアノブを回すと?…開いた!
「よし!ここに隠れろ!」
ユオを抱えて中に入る。
息をひそめていると、通路を走っていく足音。
(神倉組の奴ら、よくここがわかったな!)
(あいつらを盾にすりゃあ手出し出来んだろう)
足音は遠ざかっていった。
「ふ~。あぶなかった!だけどアイツらすぐに戻ってくるな」
「神倉組って言っとったな。何だかややこしくなってきたぞ」
ボッサンは辺りを見渡した。
どうやらここは備品倉庫らしい。
ヘルメットやスコップ、ロープ、ガスマスク……
奥には段ボール箱が山積みされていた。
手前の段ボール箱が開けてある。
中を覗くボッサン。
ボッサンは段ボール箱から小さい箱を取り出した。
「何だこれ?コンドーム?」
その箱を見てエリカが言った。
「それドラックよ。みんな『スピード』って言ってる」
「これがドラックか!って事は……これ全部ドラックか……なるほどな」
ボッサンはニヤリとした。